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大人だけでなく、いかに子どもたちにも家族の選択肢を作っていくか〜NPOあなたのいばしょ対談〜【PMI ThinkTank】

PublicMeetsInnovation(以下PMI)が4月7日に公開した、ミレニアル世代の官民100人とつくりあげた「ミレニアル政策ペーパー第一弾 〜家族イノベーション〜昭和・平成の家族のモデルを超えた、多様な幸せを支える社会のかたち〜」。

今日、テクノロジー、経済・文化の急速な進化・グローバル化が進む中、個人の働き方やライフスタイルを含む生き方の選択肢は過去になく多様化しています。こうした中、私たちは、特にイノベーションが進んでいない分野として、家族のあり方に注目するようになりました。

家族は、それを取り巻く社会変化に大きさに比べて、テクノロジーやルール、規範のアップデートが十分に進んできたとは言えません。この結果、「戦後の日本が象徴として描いてきた ”家族のかたち”と、個人が求める幸福の形とのズレが生じている」という点に、私たちは問題意識を感じています。

ミレニアル政策ペーパーでは、戦後から続いてきた昭和平成の家族のモデルを再定義し、一人一人が自分らしい生き方を選択できるためにどういった視点が必要か、政策、テクノロジー、文化・社会規範の3つの切り口から検討しています。

そうして作り上げたミレニアル政策ペーパーを、より多くの人に届けていくために、様々な人からアイディア・提言をもらいブラッシュアップしていくために、PMIでは「家族」について取り組んでいる方々との意見交換会を実施しています。

「個別の政策の先にある未来像を自分たちでも思い描いてみたいという問題意識から、このペーパーを制作。個別の問題ではなく、”家族像”という大きな問題関心からビジョンを示して、9月までに個別の政策提言に落とし込んでいきたい」との想いで、このような意見交換会を行っています。

今回は「あなたのいばしょ」の大空さん、菊池さんとの意見交換会の様子をお届けします!

あなたのいばしょは24時間365日、年齢や性別を問わず誰でも無料・匿名でのチャット相談窓口の運営などを行い、全ての望まない孤独を抱えている方が確実に信頼できる人にアクセスできる仕組み創りに取り組んでいます

「理想の家族」の呪縛

最初にPMI THINKTANKセンター長の田中からミレニアル政策ペーパーの紹介をさせていただきました。

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ミレニアル政策ペーパーで提示している違和感、課題、そして「TECH・POLICY・CULTURE」でできること、提言について紹介。

その後、大空さんからあなたのいばしょについても紹介いただきました。

あなたのいばしょはチャット相談を主に行なっており、日本で唯一の24時間対応、14カ国に相談員がおり対応を行なっているのが特徴とのことです。
相談対応だけでなく、相談内容を全て分析し、よく使用される単語、相談時間、相談者の性別、相談時間等をオープンデータとして社会に広く提供しています。

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相談対応を行なっていて、共通しているのが「望まない孤独」とのことです。

孤独がなぜ問題なのか。
それは、社会的に拒絶されると身体的痛みを感じた時と同じ領域が活性化し、類似のメカニズムで心身に悪影響を及ばすからだそうです。そしてその影響は様々な場面で現れていきます。

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いかに問題の源流にアプローチする施策を実行していくか、あなたのいばしょは孤独対策の政策的枠組みづくりにも関わっていきながら、制度設計、基盤作りも行なっています。

大人と子どもの家族の選択肢のジレンマ

まずは「家族イノベーション」についてお二人から感想を。

大空さん
私自身も複雑な環境で育ってきた。中学から一人暮らしをしたりしていました。

社会が描いていた理想の家族像はもうすでに崩壊していると思います。子どもがいなくても家族ですし。社会が理想を抱いているが、理想の家族の実態はもうないと思うので、その認識をどう変えていくかだと思っています。

家族ペーパーには同意だし、共感している。

一点言うとすれば、子どもについて。私は子ども第一主義なので。家は子どもたちにとって安全な場所でなければいけない。子どもにとって家族(家)が最初の居場所になる。

生まれた家が安全な場所である社会を作っていかなければいけないと思っている。相談者を見ていてもそう思う。家庭内不和やひとり親など、葛藤を抱えていることが自死、自傷などに繋がっていく。
子どもにとって家庭(家)がいかに安全で、快適な場所にできるかだと思うので、そのためにできることをしていきたい。

菊池さん
家族の機能要件で代替が効かないものが親子関係。子どもからしたら親は親。それを代替できないので、いかにケアしていけるか。バックアップしていく仕組み、子どもに対するケアが一番大事だと思う。

高齢者、リタイアした人は社会的資源。そのような人たちとどう市民、社会をつなげていくか。そのあたりは政府、企業ではケアできない部分がある。そうなった時に市民と市民、市民とコミュニティのつながりをいかに作っていくか。

そのような人たちを資源と認識して関係性を作っていく。高齢者にとっても生きがいになっていくと思う。その領域で政策提言できたらいいと思っている。

田中
そこが私たちもモヤモヤしているところ。
自由な家族像があっていいと思いながら、親の責任を放棄していいものではない。子どもを育てられない親の下で生き続ける子どもの辛さをどう支えていくかがジレンマ。

現代は子どもにとって、親しかいない状態になっている。親の役割の分散化、縁づくりを行なっていきたいと思っている。

石山
私も理想の家族像と現実のギャップがあったが、血縁に頼らない家族に支えられてきた。

血縁には基づかない社会資源をつながりで捉えて、セーフティネットを作っていく。
高齢者の社会保障コスト:繋がらないことが前提になっている。過度なコストがかかっている。つながることができれば行政コストをもっと抑えることもできる。

大人になってから、家族の形は自由に選ぶことはできる、代替できることがコアメッセージになっているが、が、子どもの視点から、子どもが自由に選ぶのは難しいというジレンマがあるなぁと思っています。

大空さん
そのジレンマは選択的夫婦別姓で感じている。
子どもの頃は家族の名字が全員違うのが嫌だった。名字がバラバラだった家族を繋げる唯一のものと思っていた。
今は選択的夫婦別姓は賛成できるが、子どもの目線に立ったら、全面的に賛成はできない。

夫婦別姓に賛成の人たちの周りの子どもたちは賛成かもしれないが、自分の周りの子どもたちで疑問を持っている人はいる。もっとフラットに考えるのを飛ばしてはいけない。そこにジレンマを感じている。

相談の中で虐待を受けていても、親は好きと言う子どもも多い。通報しないで欲しい、でも助けて欲しいと言われる。子どもたちの感情は難しい。それでもフラットにできると思っている。

フラットに意見を聞いて、色々な立場の人たちの議論が生まれることが大事。このペーパーは議論のきっかけになると思う。正解はないと思うので。今は議論のきっかけのタネすら撒かれていない。

自分がジレンマに陥る時は子どもを第一に考える。自分の軸は子どもファーストである。

家族ペーパーでもチャット相談窓口の活用して欲しい。悩んでいる人たちの声を聞く。毎日子どもたちの声がリアルタイムで届くので、参考になると思う。

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いかに何層ものセーフティネットを作っていくことができるか

【PMIより質問】

●600名の相談員をどうやって選定、トレーニングしているのか。相談員の育成の課題などはあるか

大空さん
相談員はジェネラリスト。アドバイスはしないで、基本的に傾聴する。個人の意見は言わないと言うことをルールとして明確にしている。

育った環境、価値観はそれぞれ違うので、書類選考で半分以上は脱落する。あなたのいばしょはすべての相談を受け付ける。それはたとえ犯罪者でも、どんな相談でも傾聴する。どんな相談に対してもフラットな状態を持てるか。そこから客観的に判断できるかが大事だから。

欧米だとバックグラウンドチェックを行っている。日本だとそれはできないので、書類選考と面談でそれを見ていくようにしています。

研修では話を聞く方法を学んでいく。相槌、チャットの分量などを学んでいく。かなり分厚いトレーニングを通過した人は比較的フラットに話を聞くことができるようになります。

●今年の2月に政策提言などを行なっていると思う。下流でセーフティネットを作っていくことが大事だと言うことですが、今は孤独を感じる人は増えていると思う。行政へのアプローチでどんな提言を入れていたのか

大空さん
問題が悪化した最下流でなく、孤独を感じた瞬間、ちょっとモヤモヤしたとき、親、周りに相談できない人たちが気軽に相談できるようにしていきたいと思っている。

現状は悪化している、最下流の人たちからの相談が多い。これをもっと上流に押し上げていく必要がある

行政がやるべきことは受け皿(対症療法)の拡充。決して今の日本の制度などが悪いとは思わないが、制度が知られていない、活用されていないなどの問題がある。

同時に重症化をいかに防ぐか。行政は予防的なことをやるべき。そこにはスティグマの軽減も含まれている。

たとえばスクールカウンセラーがこの30年弱で配置箇所が全国で約200倍に増えている。しかしその間に小中高生の自殺者数は3.5倍に増えている。生徒数が減っているにも関わらず。

スクールカウンセラーに相談するのを友達に見られたくないと言う理由を軽減できずにいる理由もある。

セーフティネットは最後の網なので、上に何層もの網を作らなければいけないのに、すっぽりと抜けている。
上にもっとセーフティネットを、何層ものセーフティネットを作っていく必要がある。

誰もが孤独を感じることであるし、起こり得るので、重症化するトリガーを見つけて、防いでいくのが孤独防止対策の本質である。

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描きたい社会像を明確に示していく

●源流の政策が変わっていくべき。そこが変わりづらいのは国会議員の家族像の価値観が大きく根底にある。そこが変わっていけば、色々なことが変わっていくはず。対峙していく中で、PMIが考える社会像、未来像をどう伝えていくのが大事だと思いますか

大空さん
孤独孤立対策もそうだし、子ども庁も自民党の中で若い国会議員が動いている。
国会議員より、役人の上の人の理解がまだまだ進んでいないと感じる。
それは自分たちが制度を作ってきたので、それが機能してないと言うことを認めるのが難しいと思う。

家族を前提とした支援制度が機能していない。今はこぼれ落ちている人がいるといういま起こっている要因から丁寧に説明していくと理解してくれる人もいる。

PMIの取り組みが評価を得ているのは描きたい社会像が明確だからこそ、共感を得ているし、広がっていると思う。

解決した時にどういう社会を築きたいのか、どういう社会になっているのかと言う社会像が不明確なNPOが多い。そこまで明確に示していくことで、物事が進んでいくと思う。

PMIはそれができているし、できると思う。

●あなたのいばしょは薄れてしまった血縁、地縁を復活させようとしているのか、それとも困った時に助けてくれる人が近くにいればいいのか

大空さん
今の社会は不可思議だなぁと思っている。
これだけSNSが発達して、コミュニケーション量が増えている。コミュニケーション量はつながりの代理現象なのにつながりが希薄化している。つながりはコミュニケーション量ではない。

対面で、誰かと繋がれる場所を作らなきゃいけないと思っている。それは家族でなくてもいい。

最初のステップとしてSNSやチャットで誰かとつながる。それは家や部屋の中でできる。その後、家のドアを開ける、門を開ける。そしてリアルで会う、感情を共有する、繋がっていくステップに持っていくのが大事。いかに対面に持っていくか。

チャットだけでは完結せず、地域のリソースにつなげていく。今は公的機関の児相などだが、次のステップはDVシェルターなど。その後は社会の様々なグループに繋いでいきたと思っている。チャット相談にきた人を繋いでいく、リソースにつなぐ中核機関だと思ってやっている。

石山
これだけインターネットで繋がっているのに、なぜ孤独がなくならないのか。西洋的哲学に基づく、個人は他者と切り離された存在であることが前提の社会になっているから。

もともと日本は繋がるでなく、すでに繋がっていることが前提の共同体意識である。すでに繋がっていると言うことに目を向けれていない。東洋的思想をアップデートしていく。社会全体との共同体意識をどう持っていくかが大事。

大空さん
イギリスでは、このコロナ禍でも孤独も、自殺者数も増えていない。思想の違いがあるのではと思う。​

大空さん、菊池さんとの意見交換は現状を知る上で、そしてPMIの取り組みを後押ししてもらう本当に大きな場となりました。
あなたのいばしょの大空さん、菊池さんありがとうございました!

これからも様々な個人、団体の方々との意見交換を行なっていき、ミレニアル政策ペーパーもアップデートさせていきます。

ミレニアル政策ペーパー「家族イノベーション」 アイディア・提言募集!

PMIでは、現在ミレニアル政策ペーパーを活用して、昭和平成の家族のモデルを再定義して、アクションにつなげていく機会に変えるアイデアやイノベーションをみんなで起こしたいと考えています。

そのためのアイディア・提言を皆さんから募集しています。ご協力よろしくお願いします!


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