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【活動レポート】PMI Legal Community 11月LAB:ODRが正義へのアクセスを開く

2022年11月21日、PMI Legal Communityで、11月LABを開催いたしました。

PMI Legal Communityでは、ルールメイキングに関連するテーマで、講師の方をお招きして勉強会(LAB)を毎月開催しております。

11月LABでは、立教大学法学部特任准教授の渡邊真由先生から、「紛争解決におけるイノベーションとしての『ODR(Online Dispute Resolution)』の可能性」というテーマで講演をしていただきました。

今回は、11月LABの内容について、その一部を紹介していきたいと思います。LABのタイムスケジュールは、前半は渡邊先生による講義、後半は会員の方からの質疑応答という形で進めていきました。

◆スピーカー:
渡邊真由
立教大学法学部特任准教授

Profile
博士(経営法)、一橋大学大学院博士課程在学中の2014年にスタンフォードロースクールにて在外研究。その際にODR(Online Dispute Resolution)を学び、司法にイノベーションをもたらすものだと確信する。それ以降、紛争解決制度のデザインや法とテクノロジーの融合領域に関する研究に従事。法務省ODR推進検討会・ODR推進会議委員、日本ODR協会設立人及び理事、ICODR(The International Council for Online Dispute Resolution)理事、マサチューセッツ大学NCTDRフェロー、Representative of Lead Academic Institution, APEC ODR Collaborative Framework他。

1 渡邊先生による講義

ODRに注目する背景

ODRとは、裁判によらない、オンラインでの紛争解決手続のことを指します。

まず初めに、渡邊先生がODRという分野に注目し、研究を行っている背景について紹介していただきました。

紛争解決というのは、紛争に巻き込まれるまでの間は他人事の分野であり、日常的に紛争解決に携わるという人はほとんどいないと思います。

しかし、一旦紛争に巻き込まれてしまうと、これを解決するための方法がよくわからず、大きな困難に直面することになってしまいます。

では、そういった困難に直面した際に、使いやすい紛争解決の仕組みとはどのようなものでしょうか?
使いやすい仕組みの条件として、次の3つの要素を挙げることができます。

・アクセスしやすいこと
・使い勝手がよいこと
・公正であること

こういった条件を備えた仕組みを実現するにあたって、技術が一つの解決策となるのではないか。そういった問題意識からODRに着目しています。

そして、ODRを含めた紛争解決の手続をデザインしていくことは、まさにルールメイキングの1つであると言えます。

ODRの社会での受容

これまで、紛争解決は対面でするものだと言われることもありました。

もっとも、最近は意思決定をするにあたって技術を活用することに対する抵抗が下がっているようにも思われます。

例えば、最近では男女の出会いのオンライン化が進み、オンラインマッチングが積極的に活用されるようになっています。これは、意思決定をするにあたって、コンピュータのレコメンドを使うことに人々が慣れていっていることを示す一例であると言えます。

また、コロナによりオンラインコミュニケーションへのハードルが下がりました。コロナによりオンラインコミュニケーションを使用せざるをえず、それに伴いビデオ会議の機能も大きく向上することによって、ODRへのハードルも下がったと言えます。

このように、徐々にODRを導入するための下地が整ってきていると言えます。

ODRが正義へのアクセスを開く

具体的に、ODRを活用することによってどういった効果がもたらされるのでしょうか。

ODR導入の大きな意義として、技術を活用することにより、これまで法的サービスを受けられなかった層に対し、正義へのアクセスを開くことが挙げられます。

紛争の額が小さいことから弁護士を使うことができない、ODRは、そういった場合に泣き寝入りすることなく救済の道を与える可能性を持っています。

正義へのアクセスというときに、これまでは裁判所を使えるようにするという意味での「手続へのアクセス」が議論の中心となっていました。しかし、現在は「情報へのアクセス」の重要性が主張されるようになっています。

実際、カナダの紛争解決サービスにおいては、紛争解決の申立てをする前段階として、トラブルにあった当事者の状況を診断するものがあります。診断を受けた者のうち、実際に紛争解決の申立てへと進む者は一部であり、このことからも情報提供を行うことにニーズがあることが示されていると言えます。

カナダの事例では、情報提供の段階から、交渉や調停といった紛争解決手続の段階まで、1つのサービスで解決までつながっており、こういったサービスの統合も1つのポイントであると言えます。

2 会員との質疑応答

講義のあとには、会員の方から複数の質問がなされ、終了時間ぎりぎりまで活発な議論が行われました。

例えば次のような質問がなされました。

・ODRは事実認定に深く入り込むことはできないと考えられるが、どういった類型がODRで解決するのに適しているのか。

・ODRの間に入る仲介者はどういった者がよいのか。

・ODRは消費者紛争で活用されるものとのイメージがあるが、企業間紛争ではどういったサービスが有益なものとして議論されているのか。

質疑応答を行うことで、各人の問題意識に応じてより踏み込んだ話をすることができ、有意義な時間となりました!


3 PMI Legal Communityのご案内

PMI Legal Communityは、「ルールメイキング」という新領域に挑む弁護士による実践コミュニティです。

官庁出向経験者、 スタートアップ・IT企業のインハウスロイヤー経験者、 キャピタリストなど、様々なバックグラウンドをもつ弁護士・専門家が参加しており、毎月勉強会を開催するなど、学ぶ、考える、つながる場を提供しています。

現在会員募集中ですので、興味をお持ちの方は是非参加していただければと思います!

毎月の勉強会(=LAB)には、トライアル参加という形で、会員でない方も初回無料で参加することができます。こちらも是非ご活用ください。


【団体概要】
名称:一般社団法人Public Meets Innovation
設立日:2018年10月1日
HP:https://pmi.or.jp/


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