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二つ折り財布よりは大きくて、長財布よりは小さいお財布

長野県で妻と二人で家具やお財布などを作っています。
PLYLIST(プライリスト)の小尾口(こおぐち)です。

変わった構造のお財布をオーダーしていただいたので、そのご紹介です。

オーダーしてくれたのは、僕と妻のお友達。
上松技術専門校時代の同期です。

打ち合わせ

オーダーメイドのお財布をご相談に来てくださる方も様々です。
もうすでにご自身の中で「こういうお財布が欲しい!」というイメージが固まっていらっしゃるお客様。
「今使っているお財布とサイズ、構造は同じで革や糸の色を選びたい」というお客様。
まだ「こういうお財布が欲しい」という明確なイメージはなくて、
モヤモヤしているけど市販品のお財布にはイマイチしっくりくるものがないというお客様。
これまでいろんなお客様とご相談させていただきました。

今回オーダーしてくれたお友達はどちらかというと最後のタイプだったような気がします。
「小銭入れはボックスタイプがいい」
とか
「二つ折り財布がいい」
とか
「なるべくスリムなお財布がいい」
という希望はありましたが、
相談する段階ではそれ以上の具体的なイメージはモヤモヤとしていたような気がします。

こういう時のご相談のやり方に正解があるのか、僕にはまだわかっていませんが
僕がよく聞く質問は
「今お使いのお財布にどんなものが入っていますか?」
「カードは何枚入れていますか?最低限まで減らせるとしたら何枚ですか?」
「現金は普段どの程度の頻度で使いますか?」
「お財布持つのは右手ですか?左手ですか?」
という感じで、具体的な使い方や収納するものの枚数や大きさを想像しながら
形を絞り込んでいくようにしています。

打ち合わせをしながらかなり雑なスケッチを描いて
「じゃあこんな形とかどうですか?」
とその場で提案しながら進めています。

形や構造が決まったら革の種類や色、糸の色や金具なんかを決めていきます。

在庫の革を見ていただきながら、
思うようなものが見つからない場合は、
「在庫にはないけどこの中だったら買える」ということを伝えて、
僕が取引している革問屋さんのオンラインショップのページを見ていただき、
お気に入りの革を選んでいただきました。

今回お客様が選んだ革は
「アラスカ」という名前のイタリアンレザー。
色はアイボリーです。

アラスカのアイボリー色

この革は結構特徴的な革で、
ロウ引きされているシュリンクレザーです。
雪で覆われたアラスカを想像させるような白い革です。
使い込むとロウが馴染んでいき、革の色が出てくるタイプの革です。
アイボリー色は、使い込んでどこまで濃い色になるかは
僕も使ったことのない革だったので想像できませんが、
コバを処理した感じとか床面を処理した感じだと、
そこまで暗い色にはならないかなーという印象です。

設計、模型作り

今回のお財布は全体的に四角めと言いますか、
角を意識して設計しました。
曲線とかカーブが少ないですし、
面も小さめにしました。

これは打ち合わせの時にわかったことなのですが、
お友達は割とフワッとした曲線のものが好きなのかな
と僕が勝手に想像していたのですが、
話を聞いてみるとどちらかというとその逆で、
シュッとした直線とか、曲線的なものよりは四角い方が好み
ということでした。

振り返ってみると思い当たる節はいくつかありました。
自分で勝手に人のことを想像してその人物像を作りがちですが、
ちゃんと話を聞くと全然違った
なんてことよくありますよね。
気をつけないといけないなあと反省しました。

お友達は一級建築士の資格も持っている大工さんで
設計もできるし、手刻みの家を建てる仕事もしているすごい人です。

木造建築好きなので、
メートル法じゃなくて尺貫法で設計しよう!
とか絶対に誰にも理解してもらえなさそうなところまでこだわって設計しました

他にも、
カードを9枚収納した状態のカードポケットと小銭入れの高さを揃える
とか、
ポケットの位置を小銭入れと合わせる
とか
全部収納した状態でパンパンに膨らまないように
きれいな四角を保てるように
とか
建築出身の設計する人なら「この辺気にしそーだなー」というところを想像しながら
お財布の設計に落とし込みました。

あとはお客様から
木の突板をどこかに使いたい
というオーダーをいただきました。
PLYLISTのお財布といえば木を使う
というのがだんだんと浸透してきた?のかもしれません。
木を使いたいというオーダーはとても嬉しいですね。

設計はなかなか難儀しましたがどうにかまとまって、
模型を作って
確認してもらって
OKもらったところで制作に入りました。

PLYLISTではフルオーダーのお財布を作らせていただくときは
必ず模型を作るようにしています
出来上がったものをお客様が手に取ったときに
「思ってたのと違う!」
となってしまうのが一番残念なことです。
「せっかく大きな決断をして大きなお金を払っって作ったのに!」
となってしまうのが本当に残念です。
ですが、フルオーダーというのは一発勝負なので
思ったようなものが出来上がらなかったということもありえます。
なので、お客様の描いているイメージのすり合わせをするのが
一番大切だと考えています。
ということで、できるだけお客さまをガッカリさせないように
模型を作ってイメージのすり合わせをするようにしています。

模型
小銭入れ
カード9枚入れた時に
フラットになるように厚みを設計


制作

型紙を作って
革のどの部分からパーツを取るか型紙を置きながら決めます
革の裏面にクリームを塗ります。毛羽立ちとかが抑えられます。
クリームを塗ったら磨くとピカピカに。
型紙に沿ってパーツを切り出したところ。
縫い穴を開けていきます。
革の断面のエッジを丸くする作業。
革の断面を熱した金属で焼き締めます。
フチだけロウが溶けてグレーの色になりました。キリッと表情が引き締まりました。
ギボシの穴は強度を出すためにボタンホールステッチを施しました。
刻印も入れました。革の裏面に刻印入れるのは初めてでしたがうまくいきました。
今回はナラの木を使いました。アイボリーの革との相性もいいですね。
ボックスタイプの小銭入れを立体的に縫います。

完成

完成したお財布

このお財布は二つ折り財布よりは横長だけど、
長財布よりはコンパクトなサイズ感。
作ってみて思いましたが、
手に持ったときのしっくり感がかなり良いです。

開くとこんな感じ。サイズ感がかなり特殊。
カードは蛇腹収納で3箇所に分けて入れられます。
結構開くので見やすいし取り出しやすいです。
小銭入れにもマチがあるので、
小銭を入れてもほぼ膨らみません。
小銭入れのフタは
ナラの木なのでしっかりとしています。
お札を入れるポケット
ギボシはボタンホールステッチによって
上品でかつ、可愛らしい感じ

表面のロウが馴染んでエイジングした姿がどうなるのか、
とても楽しみなお財布になりました。

ここまで読んでくださりありがとうございました。
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