【バックギャモン】第1回マカオオープンのあれこれ(9)

前回 【バックギャモン】第1回マカオオープンのあれこれ(8)

11.メイン3日目(3)

ファイナル vs Tobias Hellwag(ドイツ) 後半

ここまで11ポイントマッチ0-8と大きくリードを許しています。この時には「振り方」を変えています。この大会ではずっと「バックハンド」で振っていましたが、この試合の途中から「持ち替え」も織り交ぜて振っています。状況が悪いときは振り方を変える、というのは私はよくやっています。ここで「王位戦の時に良かった」持ち替えも使うことにしました。

ポジション1 白 斎藤 0-8/11 黒 Tobias 白の64は?

64では7メイクか2メイクが考慮に入ると思います。13/3の3メイクもあり得るのですが、それなら7メイクしたほうがいいので除外します。どちらにするかのポイントですが、「1でヒットされることに問題があるか」「ミッドポイントの価値はどうか」です。この図では黒のインナーに傷があることからヒットされてもまだ問題は小さいと考えられます。カバーとヒットで1のデュプリケーションが利いているのもプラスです。また、白のアンカーはバーポイントであり、ミッドポイントの価値が少し下がっています。このことからブロットを残してもバーメイクする価値があり、2ポイントメイクを65点上回る好手でした。解説でも褒められていましたね。よかったー。

ポジション2 白 斎藤 0-8/11 黒 Tobias 白の64は?

第一感は18/14 18/12のアンカー外し。本当にそれでよいのかを確認するためにランを数えたところ6ピップリード。うん、これなら十分外せる。ということでここで外したのですが、これが好手!ほかの手を20点以上上回るベストでした。今の6通りを与えても、相手の陣地は傷があるので逆に攻めるチャンスも出るわけです。傷がなければセーフティもベスト同等になります。
その後じりじりした展開でダブルを打つこともできなかったのですが…

ここでも実は棋譜入力側のトラブルで一度プレイが止まってから振ったら55だったという感じです。先に「5」が見えてもう片目も大きい目だったので「54と55はまずい」と思っていたのですが、55でいきなり逆転されてしまいました。

ポジション3 白 斎藤 0-8/11 黒 Tobias 黒のキューブアクションは?

前提条件として「ピップカウントを正しく計算している」「88-101はアンリミテッドであればパスである」というのは知識に入っているものとします。当然これはわかっていることなのでそこから考え始めます。パスと言ってもわずかなパスであろうから勝率は80%台前半と想像できます。ダブルを受けた側はパスしたときとの差を考えればOKです。11aのマッチエクイティは覚えていないのですが、パスした場合の2a11aは大体95%くらいか。続いてテイクして負けると11aクロフォードで、おそらく98%くらい。テイクして勝つと3a9aで84%くらいか。大雑把計算では3:11くらいのオッズなので大体21%。リダブルする権利を考えると2、3%くらい小さくできそうなので18%少しくらい。微妙だけどちょっとたらんかな、と思いパスしたのですが、XG先生は60点のテイクという。間違っていたのは11aの部分で、2a11aが94%、11acrが96.5%。したがってオッズは2.5:10でテイクラインは大体20%。この1%くらいの差でテイク側に振れるということのようです。なるほど、難しすぎる。
もう1つ、ここでパスした要因があるとすれば「出目の差」ですね。相当な差を感じていたので「運だけ勝負にしてはいけない」という具合に考えていました。ここから出目で勝てる気がほとんどしなかった、ということです。そういう意味ではパスしたのは「実戦的な考え方」だったかもしれません(尤も、明らかにテイクパスが判断できるようなものはそちらにしますが)。

ポジション4 白 斎藤 0-9/11 黒 Tobias 白の32は?

ノータイムで13/8としたのがダメ。5ポイントメイクの可能性を考えなければ。実際5ポイントメイクが8ポイントメイクを50点上回っていました。自陣インナー強化を優先すべきということですね。「5ポイントを作れる手は常に検討せよ」。覚えましたし。

しかし、せっかくいい陣地を作ってもここで5ゾロを振ってしまうあたりがこの日の自分。これはついてないね。厳しい。
しかし、このあとビッグチャンスが訪れます。

ポジション5 白 斎藤 0-9/11 黒 Tobias 白のキューブアクションは?

白55で形が悪くなってから黒52(13/8 13/11)、そして白63で23/14*のヒット。黒が55でダンスし、「クロックを押した直後」にダブルを打っています。私はここが一番の見せ場だったと思っています。動画を見たらわかりますが、本当にノータイムです。Tobiasさんがクロックを押して動画から手が引っ込んだところでダブルを打っているくらいです。決めていないとこれはできないと思います。案外触れられないのですが、ここは一番触れてほしいと思っていて、レディオさんをして「あれはすごい」と言わしめたダブルです。「ダブルせずに延命させることはできるのに、ノータイム、しかも決勝という場ではなかなかやれない」とのこと。実際このダブルは期待値を120点上げるナイスダブル。決勝の大舞台で超強気なノータイムダブルを見せられたこともそうですが、この大会通じて「強気を取り戻した」戦いをしておりその象徴のようなダブルだったと思っています。
テイクパスは200点のテイクでTobiasさんも間違うことなくテイク。こちらから見れば「オールイン」となったわけです。
ところが…

これが6ゾロでダンスするあたりがこの試合での私。これが止まっているようではお里が知れる。ずっと運に見放されつつも見た目には冷静にクロックを押しているように見えたようですが心の中では「なんでやねん」と思いながら押しています。

ポジション6 白 斎藤 0-9/11 黒 Tobias 黒の33は?

軟弱な私は残り3回で7/4(2)*のポイントオンを決めると残り1回は自動的に7/4になるので3枚でポイントオンが見えてしまいます。ところがここでTobiasさんが長考して選んだのは8/5(2) 7/4*と「5ポイントを埋めてルースヒット」で、これが3枚ポイントオンを70点も上回る好手!ヒットは嫌だけど通ったら最強のフルプライムができることと、4のデュプリケーションということもあるのかもしれません。51でヒットできない界ではいい目を振ったもののその後きっちり埋められてからクローズアウトされてしまいます。自分の手番が回ってくるまでの間、自分は残り時間の「934」をスコアシートに書き込んでいます。この先考える展開にはならないと感じてしまったからです。実際何も起きることなく、0-11で敗れました。

PRは速報値で4.2、対するTobiasさんは1点台。いやぁ、強すぎた。それもそうですが、平均PR6くらいの私が世界に恥をさらさなくてよかったとほっと一息w4.2ならそれなりのパフォーマンスは見せられたと思っています(悪く言えば、何もできなかったともなりますが)。
主催のApolloさんも到着します。軽く話して外に出るとすでに真っ暗でした。試合時間としては1時間少々と短かったのですが非常に濃密な1時間だったと思います。

すべてが終わりました。終わってみて「悔しいが悔いはない」「やれることは全部やった」と言ってもいいのではないかという気持ちです。手が縮こまることなく前に向かって進んだ「唯一メインで9試合戦った男」の3日間でした。

終了後は日本人選手のお疲れ様会として、初日にも行ったイタリアンへ。

1人頼みすぎた人がいて大変なことになりましたが楽しかったのでヨシw

次回は「戦い終わって・マカオ滞在最終日」です。

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