【バックギャモン】第1回マカオオープンのあれこれ(8)

前回 【バックギャモン】第1回マカオオープン(7)

10.メイン3日目(2)

メイン決勝進出が決まり、しばらく空き時間になります。RIOで日本人選手とお話ししたりSJPの解説を見たり食事したりと思い思いに過ごします。そういえばマカオといえばエッグタルトらしいんですがRIOで食べた1個だけでしたね、それ以外には食べていないのでちょっともったいなかったかも。食べたのはピザとサンドウィッチでしたからね。

17:30ころ、決勝地に向けて出発します。

決勝地、盧家屋敷に到着するとダブルスが最終盤を迎えていました。まずはこの景色をしっかりと見ておきます。大会決勝という場でこの景色を見ることができたのは、あの場にいたうちSJP、ダブルス、メイン決勝進出者の8名だけです。ダブルスは小倉さん藤岡さんペアが勝ちきって優勝しました。おめでとうございます。あとは自分が続く番です。
なお、「トリプル決勝」の模様は配信されました。URLを置いておきます。

ファイナル vs Tobias Hellwag(ドイツ)

決勝の相手はTobiasさん、R7で一度勝っている相手です。小倉さんは「一度勝ってるし勝手はわかってるやろ?」と笑いながら言っていましたがそんなわけはありません。強いことは知っているのでこの試合も勝つには出目の力が必要と考えていました。
18:25、試合開始。ところが開始わずか1分で正念場を迎えます。

ポジション1 白 斎藤 0-0/11 黒 Tobias 黒のキューブアクションは?

黒が先手ですがいわゆる「3ゾロブリッツ」という形に戻った感じになっています。基本的なゾロ目ブリッツの形として「5ゾロブリッツ」「3ゾロブリッツ」がありますが、どちらもベースは「1枚オンザバーはダブルテイク、2枚オンザバーはダブルパス、バーに1枚もなければノーダブル」(もちろん例外はある)、したがってこの局面もダブルされたらテイクです。ちなみに5ゾロブリッツの場合2ポイントに1枚残っている形はダブルするかしないかがきわどいのですが、3ゾロブリッツの場合はブリッツ側の陣地がいいので余計にダブルに振れます。したがって普通のスコアでこの形は考えることなく「ダブルテイク」です。2人ともそれはわかっているのでダブルもテイクも早かった。ところが白はここから「356しか振らない」まま1つ埋められ、結局10回連続でダンスしクローズアウトされてしまいます。翌日小倉さんとこのポジションの話をしたとき「パスする」と言っていました。解析どうのではなくここで4点を取られることが痛すぎる。結論を見るのはもっと先でもいい、とのこと。実戦的な考え方ではあり、否定するつもりはありません。実は別の人に別のポジションで同じようなことを言われたポジションがあったのですが、それは後ほど。
さて、このゲームですが、実はここからもう一山あります。

ポジション2 白 斎藤 0-0/11 黒 Tobias 黒の63は?

Tobiasさんはあっさりと9/offでしたが、これが30点のエラー。安全にしておけばほぼ何もないので9/3 5/2と「偶数理論」を使っておいて何も問題なかったわけです。確かにこれは少しおかしいとは思っていたものの、次の目を見て「この動きのほうがよくなってしまった」と思いました。

ポジション3 白 斎藤 0-0/11 黒 Tobias 黒の51は?

これもほぼノータイムで5/off 3/2。ところがこのポジションはすでに「勝てばギャモン勝ち」であるため勝率最大でよかったのです。したがって6ポイントクリアが実戦の手より30点優れていました。このおかげでまぎれが起きます。

なかったはずのチャンスが訪れたのです。1枚ヒットしこれを捕まえ切れば逆転というところまできました。道は相当長いですがここからは陣地強化をしつつ捕まえていくことに注力します。ここが実は一番難しい…

ポジション4 白 斎藤 0-0/11 黒 Tobias 白の51は?

1で5ポイントメイクは絶対。5の考え方ですが、黒が飛び出してきた場合どのあたりに出てくるかを想像することが重要です。現状66や55はどのみち終わっているので考える必要がありません。したがってそれ以外の目で飛び出してきたときに狙えるようにしておかなければなりません。そうすると12~9あたりに残るケースが一番多いでしょう。したがって21/16として自陣アウターに狙いを定める一手で、実戦の11/6は期待値を90点下げる悪手でした。
その後5プライムを作った上にアウタースロットをしたもののそれをヒットする2通りを振られて逆にまずい展開になります。

ポジション5 白 斎藤 0-0/11 黒 Tobias 白の51は?

ここはまずアウターをヒットされる可能性を考えます。まずは片目でヒットできる20通りが確定として、
・このまま6と4だと、11、31、22、51が増えて26通り。
・1で13/12として6と3だと11、21、42、51が増えて27通り。
・1で15/14として5と4だと11、22、31、32が増えて27通り。
あれ?動いたほうが増えていませんか?ということで動かないで自陣側で1を動かしておけばよかったというわけです。しかもどうせやるならクロスオーバーしている分だけ13/12としたほうがはるかにいい。実戦の15/14は80点のブランダーでした。結果として次にヒットできていたわけでもないのでほぼ未来は変わっていなかったものの、時間を使うべき時に使わなかったのは良くなかったところでした。

続く2ゲーム目も正念場を迎えます。

ポジション6 白 斎藤 0-0/11 黒 Tobias 黒のキューブアクションは?

実戦はダブルをノータイムでテイクしたのですが170点のブランダー。パスすべきというのですが、実はこの時いろいろなことが起きていました。
・棋譜入れのトラブルで試合を数秒止めた。
・再開後Tobiasさんがシェイクし始めた。
・Tobiasさんが動きをとめて1分以上長考した。
この流れだけ見ると「テイクでなければおかしい」んです。ダブルが難しいと思っていないとこの流れにはならないからです。実は棋譜入れのトラブルで数回試合が止まったのですが、そのこと自体は問題ではありません。が、ここでは多少その影響はあったように思います(止まらなければシェイクしていなかったかもしれない)。Tobiasさんがそこまで考えていたかは不明ですが、これがパスだと知った時は「やられた」と思いました。
次の63で20/17* 8/2*のダブルタイガーを敢行。すると…

1と2の組み合わせ以外いらないと思っていたら望外の11で一気に形を作れるかもしれない状態になりました。解説の景山さんが「(11を振るなら)もちろんテイクするよ」(意訳)と言っていたときの表情が浮かぶようです。ここから反撃…とはならず一時的に盛り返したものの結局攻めが通らずに57ダブルアンカーゲームという絶望的な状況を強いられます。が、最後にチャンスが訪れます。

ポジション7 白 斎藤 0-0/11 黒 Tobias 白の4倍キューブアクションは?

勢い、ダブルしたくなるこの局面ですが、ほとんど時間を使わずにロールしたと思います。ダブルできないと考えた理由は主に2つ。
・ヒットしても即勝利に結びつかない。
・ヒットできないとこちらが即死する可能性がある。
とくに前者が問題で、例えば以下の形。

これなら勝負する価値があるので行ったと思います。事実この形ならば230点のダブルで勝負すべきところです(勝負する価値があると思えば時間使ってダブルを考える)。しかし原図ではやはり当たっても即勝ちではない(ヒットしてダンスしてやっと考えられるレベル)のでダブルしませんでしたが、この判断がよく原図でダブルすると160点のブランダー。これはいいスルーだったのではないかと思います。
なお「外した時の次の8倍がテイクできない」というのがあるのですが、このスコアでは単に外すだけなら次の8倍は打てないので理由からは除外しています。
決勝が終わってRIOに戻った後「よくダブルしなかったと思った」と言われたのがこのポジションです。立ち止まって冷静にロールしていったのは良かったと思います。
結果、出目は56。「56振るならダンスくらいせぇ!」と心の中で思ったものです。実際ダンスのほうが期待値は高く、56は51、52に続く悪い出目でした。結果このゲームもギャモンで落とし0-8と大量リードを許します。
次回、決勝戦後半と、試合終了後のお話しです。

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