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発見は無限大

 いわゆる暖かい家庭で、頼りになるお父さんがいて、いつも笑顔のお母さんがいて、そんな理想のような環境で育つことが大事なんじゃなくて、
 何を見て、何を感じて、何を掴んで、何を大事だと思って、どうやって生きていくのかを、
 自分の頭で考えて、自分の心で感じて、自分で決めて、自分の力で道を切り開いていくことが大事。

 全部、はじめから、自分の中にある。
 
 「自分の力で生きていく」ことは、「たった一人で生きていく」こととは全然違う。
 
 人は一人じゃ生きてはいけない。

 嬉しいことがあった時、そこに誰かがいたら「嬉しいね!」って感じる心が二つになる。「嬉しい気持ち」が倍になる。
 自分は「これが嬉しい」、その人は「それが嬉しい」。今度は「嬉しいの種類」が倍になった。

 「それもいいね、嬉しいね!」新しい発見もある。新しい発見は、次の自分の嬉しいを増やしてくれる。
 一人だったら「嬉しい気持ち」も「嬉しいの種類」も、ひとつだけ。

 嬉しいことも、楽しいことも、優しいことも、ワクワクすることも、誰かと一緒だと、その分、倍になっていく。

 発見はたくさんあった方がいい。一日っていう時間は、全ての人間にも、動物にも、植物にも、海にも川にも山にも、あらゆるものに、等しくおんなじ24時間。
 同じ時間を誰かと一緒に過ごせば、発見はその分、倍になっていく。
 そうやって新しい発見をしていくことに、「はい、ここまで」っていう上限はない。

 そうして発見したワクワクで胸がいっぱいになると、かかとが軽くなってきて、なんだか空だって飛べそうな気持になってくる。

 じゃあ、悲しいことがあった時は、どうだろう。

 おじいちゃんが死んじゃった時、心が張り裂けるかと思うほど悲しかった。苦しかった。
 胸の奥から、腹の底から、なにかがせりあがってきて、それが涙になってぼろぼろぼろぼろ、止まらなかった。言葉にならない叫びになって、止まらなかった。
 泣いたって泣いたって、そのなにかは吐き出し切らなくて、周りの時間は一切止まってしまったかのようだった。

 その時あなたたちは隣にいてくれた。

 「おかあさん、どうしたの!」って駆け寄ってきて、でも泣いてるだけの私をみて、もう理由は聞かずに「悲しいよね、悲しいよね」って頭をなでて、背中をさすって、ティッシュで涙を拭いてくれた。
 「悲しいよね、悲しいよね」って。

 体のなかを駆け巡って私を支配しようとした「なにか」は「悲しみ」というはっきりした気持ちとなって、「ああ、私は悲しいんだ」って、私を取り戻す力になった。

 あなたたちが隣にいて、「悲しい」を共有してくれたことで、私の「悲しみ」はまるで半分になったみたいだった。
 まだ年齢は一桁だというのに、泣いている私を見つけて真っ先に駆け寄ってくれた、ふたりの小さな手は、一生忘れないよ。

 不思議だね。
 誰かがそばにいると、「嬉しい」は倍になるのに、「悲しい」は半分になった。

 悲しみを感じていた私の「悲しい」は半分になったけど、あなたたちはどうだっただろうか。
 人の悲しみを共有することで、もともとなかった「悲しい」が増えてしまっただろうか。

 増えなかったはずなんだ。

 その代わり、「悲しい時は泣いていいんだ」「悲しい時は一人で泣いちゃいけないんだ」ってことを、発見したはずなんだ。
 
 全ては、はじめから自分の中にある。それを「発見」していくだけ。
 だけど、全ては自分の中にあるからって、人は一人じゃ生きていけない。

 自分の力で生きている人と人とが関わりあうことで、ポジティブは倍に、ネガティブは半分にしながら、新しい発見を重ねて、
 そうやってそれぞれの「自分の力」がまた大きくなっていく。
 その力強い広がりに、限界はない。
 一人一人は小さな存在だけど、その力を掛け合わせると、可能性は無限大になる。
 
 みんなそれぞれの人生を生きていく。

 ひとりひとつ、与えられた命を使って。

 誰かの人生と自分の人生を交換することはできない。誰かの人生に乗っかることはできない。

 誰かの人生と一緒に、隣で歩いていく。

 時には一緒に走ったり、飛び跳ねたり。疲れたら休憩して。

 大きな船に一緒に乗り込んで、たくさんの人生と、まだ見たことのない、大海原を航海するのもいい。
 
 命あるものは、いつか必ずその命が終わるときがくる。
 それが長いのか短いのかは、誰にもわからない。

 命が尽きるその時まで、たくさんの人と一緒に人生を乗りこなしながら、たくさんの発見をしたらいいと思うんだ。

 何度も言うよ、そうやってそれぞれの「自分の力」が関わりあうことで広がる、「自分たちの力」の発見に、限界はない。
 あなたが自分の力で考えて、そして、自分の力で考えて生きているみんなを大切にして生きていくなら、いつも、みんなの可能性はどこまでも広がってるから。

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