見出し画像

蘇州夜曲 ASKAの歌唱

私に蘇州夜曲を教えてくれたのは、ASKAさん。
写真は残念ながら蘇州ではなく、高雄です(台湾)。

ASKAさんの1枚目のソロアルバム『SCENE』は、ちあきなおみさんに提供した「伝わりますか」のセルフカバーで始まり、この「蘇州夜曲」は2曲目に入っています。

君がみ胸に 抱かれて聞くは
夢の舟唄   鳥の歌
水の蘇州の花散る春を
惜しむか 柳がすすり泣く

花を浮かべて流れる水の
明日の行方は知らねども
今宵映した  ふたりの姿
消えてくれるな いつまでも

髪に飾ろか くちづけしよか
君が手折りし桃の花
涙ぐむよな朧の月に
鐘が鳴ります  寒山寺

※歌詞の漢字とひらがなは諸説あり、
               私のイメージで勝手に振り分けています。

私の記憶が正しければ、インタビュアーに「何で蘇州夜曲なの?」と聞かれて、ASKAさんが「…………いや、好きなんですよね、この曲」とだけシンプルに答えていらっしゃった記事を目にした事があったような。「好きだから」というのがやたら印象に残っています。ASKAさんが小さい頃にご両親が口ずさんでいた曲のようですが、やっぱりさすがだね、小さな頃から耳が良いんだね・・・とか余計な所で納得しておりました。

初めてこの曲を聴いた時、[ 作り物でしかこの世に存在し得ないような圧倒的な安らぎと幸せ ]を感じたんですが、YouTubeで色んな方が歌っているバージョンを聴いてみると、ASKAさんの歌のおかげで、そう感じただけなのかもしれません。

■「SCENE」Remix Ver. ダイジェスト  

この曲は、曲も歌詞も、それ自体がもう無茶苦茶美しいのですが、良い悪いではなくて歌い手によっては非常に悲しい歌にも聞こえます。もちろん、この曲のように曲自体が美しい曲は、果てしなく悲しく歌ったり、果てしなく切なく歌ったりするのも全然問題ないと思います。

しかし、ASKAさんの歌はあくまでも優しく、伸びやかに幻想的に、ただただ流れていきます。甘過ぎない風雅な歌が、後ろの楽器の音の上をふわふわと浮遊しているかのよう。勝手な意見ですが、本当に好きな歌を歌っている喜びと敬意に溢れていて、この曲に恋をしているみたいで、なんか可愛らしい歌声なんですよね。手中に入れたぜ(歌ったぜ)という安心感みたいなものも感じられるし、もう後は全部俺に任せとけ的な自信すら感じます。
※個人の感想です。


このASKAさんの歌を聴いていると、私はふと、春のよく晴れた穏やかな日に、両岸に桜が咲いている大きな川を、お殿様が小舟で下っていく景色を思い浮かべます。何も心に引っ掛かっている事が無い日に、着心地の良さそうなあっさりした着物を着て、少しの仲間や恋人と、景色を遠くまで幸せそうに見渡しながら悠々と下っていく彼の顔は、ちょっとやそっとじゃお目にかかれないぐらい心の奥底まで満ち足りた表情をしているのでした。

ギリギリまで情感を抑えつつ、かつ官能的という大変耳福な歌唱です。
素敵な曲を教えてくれて、歌ってくれたASKAさん、本当にありがとうございます。

Youtubeで観れる限りは、石川さゆりさん、美空ひばりさん、アン・サリーさんが素晴らしかったんですが、私にとってこの曲のベスト歌唱はやっぱりASKAさんです!

蘇州は上海のすぐ隣。大小様々な湖を有しており、水運が生活に入り込んでいる水郷都市で、「東洋のヴェニス」とも呼ばれているようです。
ネットで検索してみると、私のような水好きにはたまらない景色が展開されています。行ってみたいものです。

■Google Map

画像1

【MEMO】

■「蘇州夜曲」は、1940年(昭和15年)に製作された映画『支那の夜』の劇中歌。YouTubeで観る事が出来ます。作曲家の服部良一さんはこの映画の音楽監督も務めており、ご自身の曲の中で一番好きな曲、と仰っています。

■日中戦争時に中国の日本支配下の土地で流行した「日本の歌」だったために、長い間、日本においても中国においても、演奏が許される状況が限られていたようでした。

■『SCENE』の発売は1988年8月ですが、録音後に著作権の問題で「蘇州夜曲」がNGとなってしまいます。作詞家の西條八十さん(唄を忘れたカナリヤは……も、この方です)の御家族に、実際に仕上がったASKAさんの曲を聴いてもらい、リリースOKとなった裏話がASKAさんのブログにあります。


ご覧いただき、ありがとうございます。気に入っていただけたらサポートお願いします!直接お礼させていただきます (*^_^*)