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9mm卓郎の歌声を振り返る〜9mm20周年記念

皆さんは、あなたの推しバンドのボーカリストの歌声は、どんなふうに変わってきましたか。初期とは別人のような歌声になったり、またはあまり変わりはない歌声だったり、十人十色の変化があります。

ブリの推しバンドである、9mm Parabellum Bullet(以下9mm)は、2024年にはバンド結成20年となり、さまざまな楽曲を作り出してきました。9mm最大の特徴である、ボーカリストの菅原卓郎(すがわらたくろう、以下卓郎)による、独特な歌声はバンドの個性です。卓郎は、バンドではボーカリスト、ギタリストを兼ねています。芯のある中音域で、歌詞を語るように、終始ほぼ同じ声区(発声の音域)で歌います。時々こぶしを入れたり、歌声を抜く時に裏声を出すことがあります。人によって、歌声のメリハリが足りないと思われますが、独特の歌声で、9mmの暗い速いロックの世界観を表現しています。ギター演奏は、サブのメロディーを奏でています。弾き語りもします。

卓郎は少年時代に邦楽ロックに興味を持ち、大学時代に現在の9mmメンバーに出会いました。卓郎が9mmのメンバーとして、音楽活動してから20年が経ちました。9mmが活動を重ねていくうちに、楽器隊のメンバーととも、彼の歌声は磨かれていきました。
この記事では、9mm卓郎の歌声の変遷を振り返りました。9mm歴代アルバムを通して、彼の歌声の特徴をまとめました。



★Gjallarhorn (2005)〜Phantomime (2006)

インディーズ時代の若き9mmです。地声の延長線上でまっすぐ歌います。芯がある中音域で声区を変えずに歌う特徴がここから始まりました。言葉を投げつけて歌う感じです。この頃は歌詞が聞き取りにくいです。歌声のフレーズ後にノイズ(ざらつき)が出ています。やんちゃで歌う姿勢ありありの卓郎でした。


★Termination (2007)

メジャーデビュー初めての9mmのアルバムです。中音域でしっかり、まっすぐ歌います。歌詞が聞き取りやすくなってきました。たまにフレーズ後に裏声で抜く癖が出ました。ここから、こぶしをつけるような歌い方をしてきました。響きがこもった、乾いた歌声の卓郎です。


★VAMPIRE (2008)

9mmの知名度が高まったアルバムです。中音域と低音域の流れがなめらかになり、歌声のかっこよさが増しました。「い」段と、「は」行の音でアクセントをつける歌い方が現れました。歌声の粗さとノイズが減ってきました。あどけない柔らかな歌い方の卓郎です。

★Revolutionary (2010)

9mmが大きく飛躍したアルバムです。とにかく中音域が太く高く鳴り、低音域を軸にした歌声になりました。フレーズの流れが良く、歌声の表情がついてきました。こもった響きがなくなり、勢いと歌声のバランスが良くなりました。フレーズ後に低音域で抜く流れがあります。あどけなさが減り、ならめかで硬派な鋭いかっこよさがある卓郎です。

★Movement (2011)

9mmデビュー5年目に近づきました。中音域を思い切って張って、歌声を鳴らすようになりました。低音域の響きが減り、ねっとり中音域と低音域の間を流れる歌い方になっています。粗さとフレーズ後のノイズがすっきりなくなりました。ここから感情をこめながら、高めで鳴らす歌声になります。歌詞がはっきり聞こえるようになってます。まるで別人のように、鋭さから力強く、磨かれてきた卓郎です。

★Dawning (2013)〜Waltz on Life Line (2016)

個人事務所を立ち上げ、結成9年目を迎えた9mmです。思い切って張った中音域から、高音域に近く、軽々とノリノリで歌うようなフレーズが増しました。高音域の方向が安定して、低音域と中音域の間を歌う流れがきれいになりました。低音域から妖しい雰囲気があふれてきました。鋭くて力強い、情緒的でロックなかっこよさが増した、卓郎です。

★BABEL (2017)〜DEEP BLUE (2019)

逆境から立ち上がり、結成15年目を迎えた9mmです。高音域の鋭さから、力を抜いたような歌い方です。高すぎず、低音域を軸に、高音域と中音域の間でねっとり歌うように、まっすぐ歌います。フレーズ後に裏声で抜く癖が時々出て、歌詞にこめた感情を表現しています。弾き語りのように、情緒的で優しい雰囲気です。安定感が出てきて、貫禄あふれた色気とかっこよさが現れた卓郎です。

★TIGHTROPE (2022)

9枚目のアルバムで、結成19年目が近づき、社会の困難に負けずに、活動を続けている9mmです。卓郎は、個人事務所の社長になりました。全体的にリラックスした発声で、力まずにこぶしを入れながら、中音域を爽やかに出す、歌い方になっています。今までの歌声で、安定感と聞きやすさがあります。大人の落ち着き、成熟した歌声になった、卓郎です。



★まとめ

9mm歴代アルバムを聞いて、卓郎の変化を振り返ると、以下のように変化を感じました。全体的にリラックスした歌声になったと思います。

・次第に歌声が安定してきた
・低音域を軸にして、中音域と高音域の間でねっとり歌う
・こもった響きやノイズが減り、クリアな響きになった
・裏声でフレーズを抜く癖を時々出して、歌詞にこめた感情を表現する
・力みが減り、リラックスした発声になった

9mm卓郎の歌声の変遷


彼の歌声は、どの作品でも、以下の共通した特徴があります。ロックバンドゆえに、声区をほぼ同じで、歌声を勢いよく出す傾向があります。
彼の地声は話し声から、芯のある、ジリジリとなるような低い声です。

・芯のある中音域
・邦楽ロックでよくある、歌詞を語るようなフレーズ
・終始、声区をほぼ同じで歌う
・こぶしを入れながら、声を張り上げる
・「い」段と、「は」行の音でアクセントをつける歌い方

9mm卓郎の歌声の特徴


以上、9mmの卓郎の歌声を歴代アルバムを通して、変化を振り返りました。彼の歌声を何年も聞いて、彼の変化から向上心が見えてきました。ボーカリストは、楽器と違って、歌声の調子や歌い方が繊細で、変わりやすいものです。彼の歌声から、安定感のある発声と歌い方を作り出す様子が分かります。9mmにしかない個性は、卓郎にとって、大切な魅力になりました。
最後に、卓郎が自分の歌声について、こう語りました。

好き嫌いがありそうな声だと思います。「他にない、何とも言えない不思議な声」と最近対バンした人から言ってもらいました。たしかに格別甲高いわけでもないし、意外と良い声なんじゃないかな、と思ってます(笑)。
あと、自分の声は自分のギターの音に似ていると思います。好きな音というか、自分にとって自然な音なんでしょうね。

菅原卓郎、2014年のインタビューより


ライブ後におじきする卓郎

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