【台本】先輩とボクとあかね。

登場人物

あかね:とおるの想い人。
先輩が好き。先輩と付き合うことになる。

とおる:オーディションに挑む。
あかねがすき。

俊一(先輩):演劇部の先輩。
あかねのことが好き。

あかねと付き合うことになる。

〜ここから〜

俊一(先輩):もっと肩の力抜いていこうや。

な?

とおる:はっ、はい。

俊一(先輩):ほらほら。
まだ肩に力入ってる。

とおる:す、すみません。

俊一(先輩):いいいい。謝らなくて。

ふむ……。
どうしたらいいかな?

あかね:先輩……。
一度、姿をどこかに隠してはいかがでしょうか?

俊一(先輩):うん?なぜ?

あかね:・・・

……あこがれの人にじっと見られていたら緊張して演じられません。

俊一(先輩):あこがれ…の人?
俺が?やつの?

あかね:はい!

俊一(先輩):そうだったのか…。
俺の前だとやけにガチゴチになるとは思っていたが……。

なるほどなぁ。

あい。わかった。

では、俺は席を外す。
その代わり、映像に残しといておいてくれ。

俺も見たいから。

あかね:わかりました。

とおる:(困ったなという顔)
はい……。

俊一(先輩):じゃあ。がんばれ。

(俊一、練習の場から去る)

あかね:さてと。じゃあやるわよ。

とおる:は、はい……。

あかね:だいじょうぶ。
私と秘密の特訓やってるんだから。

あのままやればいいのよ。

とおる:う、うん……。

あかね:さぁ。やるわよ!

3、2、1 Act(アクト)

とおる:(低く男らしい声でありながら、
艶(つや)と色気がある声で演じる)

とおる:お、おれ……。

あかね:うん?

とおる:お、おれ……。

あかね:だからなに?

とおる:……。き、きみがすき…みたいだ……。

あかね:えっ?うそ!

とおる:あ、あぁ。ホントだとも。
ずっと好きだった。

でも…。中々言えなくて。

あかね:なんで?

とおる:きみはモテるから。
振られるのが怖かった。

あかね:そう……。
なのに…言ってくれたのは?

とおる:や、やつに……。やつにだけは取られたくなくて……。

あかね:やつ?

とおる:ほら。いつも一緒にいる男だよ。

あかね:ああ。あれ。
やだなぁ。単なる幼馴染だよ。

とおる:・・・。

きみは、そう思ってても、やつがどう思っているかは、わからない。

あかね:そりゃあそうだけど……。
でも…あたしが好きなのは……。

とおる:好きなのは?

あかね:せ、せんぱいなのよ……。
だから…。あいつ(幼馴染)とどうのこうのってことは、
北極が南に移動するぐらいありえないから!!!

とおる:せ、せんぱいが好きなのか……。

あかね:うん。

とおる:そっかぁ。じゃあ俺も諦めないとダメかな?

あかね:んー。そうだなぁ。
今度のオーディションの最終選考に
残ったら、付き合ってあげる。

そのとき、先輩と付き合ってなければ。

とおる:・・・

とおる:わかった。それでいい。
そのかわり、嘘でしたとかいうなよ?

あかね:もちろん。女に二言はないわ!

とおる:わかった。

はーい。カーット。
そこまで。

(あかねがとおるに近づく)

あかね:よくできてたわ。

とおる:ほんとですか?

あかね:ええ。

とおる:何点ぐらいですかね?

あかね:んー。そうねー。厳しくつけたら、80点。
フラットに見れば85点。
甘めにつけたら、90点というところかしらね?

とおる:ありがとうございます。

あかね:いつもは、上手く見えるけど、
内側から湧き出るものを感じられなかったのよね……。

だけど、今回のは、まるで、ホントの告白のようでとても良かったわ。

とおる:・・・

あかね:ん?どうしたの?

とおる:……。あ、ああ。
ありがとうございます……。

そうですか……。
なるほど……。

あかね:ん?

とおる:……。演技だと思われたんですね……。

あかね:え?

とおる:ボク、今回の台本見て、びっくりしました。

ボクの気持ちがそのまんま書かれていたので。

あかね:!!!

あかね:それって……。

とおる:ええ。そうです。

演じてないんです。

こころの中に仕舞い込んでたものを
開放しただけです。

あかね:・・・
ありがとう。

とおる:それで答えは?

あかね:答えは…。いまの劇で言った通りよ。
最終選考に残ったら、付き合ってあげる。

ただし、その時、先輩と付き合ってなければだけど。

とおる:ほ、ほんとですか?

あれって、単なるセリフじゃなくて、
ホントだったんだ!!やったぁ!!

あかね:ふふふ。かわいい。
まだ、付き合えると決まったわけじゃないのに。

まぁ。がんばって。

とおる:ありがとう!

あかね:(にこっと笑って去り、先輩のいる教室へ)

あかね:せんぱーい。

俊一(先輩):お?終わったか?

あかね:はい!

俊一(先輩):おっし!じゃあ早速みせろ!

あかね:(映像を見せる。)

俊一(先輩):おお!いいじゃないか!
これなら、次の選考も残れるだろ。

あかね:はい!

俊一(先輩):この調子でいければ、
上手くしたら、最終選考まで残れるかもしれない……。

あかね:ほんとですか!!

あかね:それ、ぜひ言ってあげてください。まだいると思うので。

俊一(先輩):ああ。わかった。

ところで……。

あかね:はい?

俊一(先輩):いや……。なんでもない。

あかね:えー。教えてください。
気になるじゃないですか。

俊一(先輩):(少し照れながら)
ああ……。すまん。

いや、今回の台本があまりにも
やつの気持ちと一致してるんじゃないかなぁ思って。

あかね:え?

俊一(先輩):だから、きみがどう感じたかなぁと。

あかね:・・・

あかね:(とおるとの約束は隠しつつ)
どうもこうもないですが……。

俊一(先輩):そうか……。
ならいいんだ。

あかね:はぁ…。

俊一(先輩):もしも、きみがあいつの気持ちに応じるとなったら、
少しつらいなぁとは思ったんだが……。

あかね:それって……。

俊一(先輩):(照れながら)ああ。そうだよ。好きなんだよ。きみが!

あかね:ほんとに?

俊一(先輩):ああ。

あかね:(これ以上ない笑顔で)
きゃー。ほんと?ほんとにほんと?

めちゃくちゃうれしいー。

俊一(先輩):(照れつつもホッとした顔)ということは……。

OKってことだね?

あかね:はい!

俊一(先輩):よかった!

あかね:あっ!!!

俊一(先輩):どうした?

あかね:あの…。

俊一(先輩):ん?

あかね:最終選考に残ったら付き合ってあげる。言っちゃったんです。

俊一(先輩):なんだって!

あかね:すみません…。

俊一(先輩):じゃあ…どうするんだ?

あかね:そうですねー。一応、最終選考に残って、

その時に先輩と付き合ってなければ、
付き合ってあげると言っているので、

その時まで恋人でいられれば、なにも問題ないかと。

俊一(先輩):そ、そっか。
ならよかった。

まったく、びっくりさせるなよ。

あかね:ごめんなさい。

そういいながら、あかねは、ボクの頬(ほほ)にキスをした。

【完】

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