漁港とミートソース①〜美しく健気に死んだ銀色の魚〜

ピンポンパーン
漁港よりお知らせします。

本日午前8時より、アジの販売を致します。
お誘い合わせの上お越しください。

ピンポンパーン

・・・・
あや聞こえた?
うん。

じゃあね、このボールに
なるべくたくさん買ってきて。

漁港にいる、係のおじさんに
このボール見せて、ここに入るだけください!言えばいいから。

うん!わかった!!
行ってくるね!!

(玄関で真っ赤な靴を履き、元気に出かける)

さて。第一関門の長い階段。

あやは、体力がないから、
なるべく疲れないように、

張り切り過ぎてこれから魚を入れてもらうボールと
渡されたお金を落とさないように

慎重にでもなるべくはやく目的地に着くよう
トタトタとかわいらしく力強く、階段を降りていく。

そして、途中で足を止める。
見慣れた海なのに、なんだかいつもより悲しげで美しい。

ずっと見ていたら、吸い込まれてしまう。

そう思って、慌ててまた歩き出した。
そして、小さなボクには大変な任務である

「ボールいっぱいにアジを買い、
落とさず無事に持って帰る」というのを
まっとうし、得意げに母へ渡す。

美しい銀色の魚が、私達のために犠牲になっていく姿を
とても優しい目で見ながらも、
早く食べたいという残酷な自分がいた。

数分後。

美しく健気に死んだアジが、
食卓へのぼる。

静かに静かに皿の上に美しく並ぶ。
声にならない声で悲しみを伝えながらも、

せめて、美味しく食べて笑顔になってと言っている。

その声を受け取ったボクは、黙って美味しく食べた。

それがアジとの約束だから。
だけど、そんなことを大人は知らない。

話したところで、奇妙なことをいう子だ。と言われるだけだ。

だから、この話はボクとアジときみだけの秘密なんだ。

だから、おねがいだ。
笑わずに聞いてくれ。

恵まれた環境にいながら、なぜ愛に飢えているのかを。

どれだけ辛かったかを。

何も言わず聞いてほしい。
同情はいらない。哀れみも。

だけど、この話が同じような
苦しみ、経験を持つ人と共有できたら嬉しい。

つづく(かもしれない)

はじめましてたかはしあやと申します。 記事作成・キャッチコピー・タイトル付けを 生業としておりますが このままだと止めないと いけなくなるかもという位 金銭的に困っていますので、 サポートをしてもらえると 泣いて喜びます。 どうぞよろしくお願い致します。