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眩暈と家族

いつものようにスマホのアラームで目を覚ました朝。
時計を見、そろそろ起きようかと身体を動かすとぐるんと地球が回転した。
天井が、自分が、回っている。
言いようのない不快感、吐き気にそのまま布団に倒れ込む。
薄っすら目を開け、天井に目をやる。
回転する天井。
これは駄目だ、起きられそうにない。
そう判断し、体を横たえたまま夫に声をかけた。
眩暈がするから起きられない。子どもたちに朝ごはんお願い。
次女にも声をかける。ママしんどいから、もう少し寝とくね。
わかったよと返事をし、夫と次女はリビングへ降りて行った。
隣室で寝ている長女も起き出し、階下へ降りる音が聞こえる。
しばらく寝ておけばおさまるだろうか。

今日は長女と出かける約束をしていたのに、せっかくの休日なのにと思いながら、おさまらない眩暈と吐き気に悶える。
これまでにも何度か眩暈に襲われることはあったが、ここまで酷いのは初めてだった。
結局眠りきれず、這うようにして階下へ行き、リビングで倒れ込む。

夫と長女が休日当番医を調べ始めた。
新聞に載っているであろう休日当番の欄を確認しようとする夫。
スマホで休日当番医を検索する長女。
どっちが早く見つけられるかで小競り合いを始める2人の横で、私にブランケットをかける次女。
病院なんか行きたくないと拒否する私をよそに、どちらが先に見つけたのかも分からないまま、いつの間にか病院行きが決定されていた。
休日当番医とか、絶対混むじゃん。
待たされた挙句どうせたいした処置もされずに帰るのがオチじゃんと内心悪態をつきつつ、言葉に出して悪態をつく元気はないのでひたすら耐える。いや待って、病院行くなら着替えなあかんやん。このままパジャマで?いやそれはない。でも着替えを取りにまた2階へ上がるのも無理。

何度目を開けても世界は相変わらずグルグル回り、生あくびが止まらず、次第に迫り上げて来る吐き気。トイレに移動して吐きたいが、体が動かない。
長女が、いいこと思いついた、とキャスター付きの椅子を持ってきて力ずくで私を座らせ、トイレまで車椅子の如く運んでくれた。おお、なかなかやるな長女。

指を突っ込み、胃液を吐き出す。
昨日の食事はきれいに消化されていたらしく、出てくるのは胃液のみ。昨日何食べたっけ、こんなに見事に何も出てこないとかすごいな、と自分の胃袋に感心する。

病院行くよと夫が言い、長女が「ママの服私が選んでくるわ。センスあるんは私やから!」と謎の自慢とともに服を選択してきた。
本当は自分で着替えたいがマジで体を動かせない。
長女と次女が、ママを着替えさせるからパパは部屋から出て行けと命令し、私の着替えに取り掛かり始めた。
下着にジーンズ、長袖Tシャツ、靴下。
どっちが何を着せるかで長女と次女がプチ喧嘩をし、拗ねた次女に靴下を上手に履かせてくれてありがとうねとご機嫌取りをする私。
体調不良の状況下で、なんで私があんたたちの仲裁をせなあかんのやと思うが、いざとなるとこうして私のためにせっせと動いてくれる家族がいる現実を思い、涙が出た。

この服で寒くない?と聞く長女。
ママ泣いてる、と次女。
ママはしんどいんだよ、と夫。
しんどいし、苦しいし、そして嬉しいんだよと私は思った。


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