彼女に別れ話を切り出された君へ

これは、とある男性へ向けた、部外者の女のお気持ちを綴ったものである。

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今、友人の1人が、恋人と別れる決断をしている。

2つ年下の彼は、グイグイリードしてくれるタイプではないけれど、おっとりした性格が仕事で疲れた時にはすごく癒やされるのだと笑顔で話していた彼女だったのに。


「今、彼とのことで悩んでいるの」

そう思い詰めたように口にした彼女を見て、私は思わず抱きしめたくなった。真剣に悩んでいるのがわかった。

「私でよければ聞くよ」力強くそう言って、彼女をランチに誘った。

話を聞いてみると、小さなすれ違いや不満がぽろぽろと溢れた。恋人同士なら、すれ違うことなんてよくある。他人同士だから当然だ。彼女自身、聡明な女性なのでその全てをダイレクトに彼にぶつけるなんてことはしないし、もちろん不満を溜め込むだけの察してちゃんになるわけでもない。

彼女は彼と話し合いをしようとした。自分の思いや希望を伝え、その全ては叶えられないとしても、少しでも状況が改善することを望んでいた。同時に、彼側に不満があればそれも改善したいと考えて、彼の希望も聞こうとした。(なんていい子なんだ)

でもその話し合いは無駄に終わった。全然話しあいは出来なかった、と彼女は言った。

彼女の悩みはそれだった。小さなすれ違いや不満そのものではなくて、「彼と話し合いができない」ことが苦しい、と言った。

話し合いの時、彼女に小さな不満を告げられた彼はまず、酷く狼狽したのだと言う。そして、少し間を置いて「自分の愛が伝わっていなかったことが悲しい」と言ったのだった。

断っておくけれど、彼女が話し合いたかったのは、会う頻度や今後の2人の関係性についてなどの、今後も一緒にいるためのもので決して彼からの愛情が足りないとかそんな抽象的な話ではない。

結局その日に結論は出ずに、話し合いは有耶無耶なまま終わったらしい。話が噛み合っていないのだから当然か、と私は食後のデザート食べながら思ったのを覚えている。


これは、件の彼に限らず聞く話ではあるけれど、一定数恋人の言葉が届かない人がいるなと思う。例えばだけど、2人の将来について話し合いたいと片方が言ったとき、言われた方は自分は2人の将来についてどう思っているかを答えるのが普通だと思う。でも言葉が届かない人たちは、「愛しているのに」とか「自分の仕事は今こんな状況で」というような話をする。そんなことは聞いていないのに。愛しているのは知っているし、仕事が忙しいのも知っている。そんなことを疑っているわけじゃないし、仕事が落ち着くまで待って欲しいというなら理解できる。話したいのはその後の、私たちの関係はどういう方向に進めていこうか、ということについてなのである。仕事が忙しくて今すぐは考えられないとか、将来のこと考えられる関係だと思っていないということなら、はっきりそう言うべきなのだ。それをゴニョゴニョと濁して、責められている気になってひどく悲しむのは違う。そしてそういう人は往々にして、恋人の気持ちを軽んじる。そういう傾向にあると思う。話し合いを持ちかけた方はそんなチグハグなことを言われても戸惑うし、愛情を疑われて悲しいなんて言われてしまったら、もうそれ以上何も言えなくなってしまう。そうして結局、結論は出ないまま話し合いにすらならず時間だけが過ぎていくのだろう。


話を戻そう。

最初の話し合いのあと数ヶ月は今まで通りの頻度で顔を合わせているようだったが、彼女の表情は明るくなかったし、状況はひどくなっているような気がした。

「大丈夫?最近どう?」

お節介かなと思いつつも、彼女に声をかけると、彼女は「うーん……」と曖昧な返事をした。今までと状況は何も変わってはいないけれど明らかに彼女の気持ちに変化があるのを感じた。最初の頃は純粋に彼と対話がしたいと思っていた彼女だったのに、今は多分、お別れも視野に入れていると思った。

話し合いからの数ヶ月、顔を合わせても彼から話を振られることはなく、ただもやもやした気持ちを抱えたまま過ごしていたという。

「もう疲れちゃった」そう言って、彼女は彼との最後の話し合い(あれは実質別れ話だったと思うけど)を決めた。

話し合いができないというモヤモヤは結構心を消耗する。平和主義、喧嘩を好まない性格なんて言い訳はいらない。話し合いは争いでも喧嘩でもない。対話に応じないのは逃げだ。

彼がはっきりしないから、彼女はついに、別れるか結婚を前提に同棲をするか選んで欲しいとまで言った。(もうほとんど別れる覚悟で、ただ最後に残った愛情をかけて彼女は腹を括ったようだった)そこまで言われて初めて彼は深刻さに気づいた。たぶん。遅すぎるけど、気づけたようだった。

彼女が離れてしまうかもしれないとその時初めて実感した彼にはさぞかし衝撃だっただろうが、私から言わせれば「おっっっっっそ!!!」という感じである。

「考える時間が欲しい」と言ったようだけど、今更時間が必要か?!!とも思う。

真剣に考えて欲しいとずっと彼女は訴えてきたよ。女にとって結婚して相手の地元に住む覚悟をするくらいは人生の想定の範囲内だけど、大きな決断ではあるから、あなたの一言が欲しかったのに、ずっとのらりくらりとかわして、「君の好きにしたらいい」なんて耳障りのいい言葉を何も考えずに口にしたんだろう。「好きなのに」って拗ねたら、彼女が忖度して自分の思う通りに動いてくれると思った? 本気で彼女の人生と自分の人生は別で、一緒に歩む気はないというならそれを伝えるのも優しさだし、彼女との結婚や同棲なんて未来は考えられないならそう伝えるべきなんだよ。

20代半ば以降で結婚願望があると伝えている女の時間を無駄にさせないであげて欲しい。あなたが真面目で優しい男だと自分で思っているのなら、覚悟ができないならできないと伝えてあげて欲しい。心配しなくても彼女は別の人と幸せになれるから。


これは今まで恋人の言葉を軽んじていた君が招いた結果だから、私は少しも同情はしないけれど、君は君で幸せに生きる権利があるのだから、次はどうか大切な人の言葉に耳を傾けて、真剣に向き合って、大切な人と幸せになって欲しい。大切な人を大切にして、幸せになってください。


おまけだけど、全世界の恋人の態度がはっきりしなくてもだもだしてる人へ。

時間は有限だぞ!!!!


以上です。

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