『Phoebe Bridgers・Punisher』アルバムレビュー【音楽】
Phoebe bridgers
Punisher
はいと言うことで本日はPhoebe Bridgersでpunisherをレビューさせていただければと思うのですが、
全世界のチャートを総ナメにした、デビューアルバム Stranger in the Alpsから3年の月日を経て今作なのですが、
もう個人的に興奮が止まらない程に美しいです。
個人的にはfiona appleのfetch the bolt cutterと並んで今年最高峰のアルバムだと感じます。
聴くたびに美しくなるメロディーラインと歌詞、
Punisherと言うタイトルに相関する痛みや感情が
自分の中にある躁鬱とした感情と相まって音楽と共鳴した時に、
根底にある自分の中にある愛が呼び覚まされます。
どこかkid Aのように陰鬱としているのにも関わらず、
映画Lost in a translationのような寂しさと
春の香りのように美しさに溢れ、
一言で表すと遠い昔の記憶を呼び覚ませてくれるアルバムです。
久しぶりにアルバム通して全く飽きずに聴くことができました。
DVD Menu
1曲目はサントラになっているのですが、
今作の最後の曲I know the end の最後に続くような形を取られています。
最後の曲から最初の曲へループするという形をとっていて、
そういった意味では、最初の曲でもあり最後の曲でもあります。
また音のサンプルは前作の最後の曲「 you missed my Heart 」から取られており、
前作の続きという意味が込められています。
この前作からの続きという意味を持ちながら同時に堂々巡りを繰り返す形を
一曲目で持ってくることで迷路に迷い込んだような気分になり、
それが奇妙なサウンドと重なった時非常に怖い印象をリスナーに持たせます。
Garden Song
1曲目で怖い印象を残しつつ、
2曲目では非常に柔らかく、それでいてどこか湿っぽいサウンドに変化していきます。
この曲は自分が夢や理想に描いたことは全て現実になると歌っていて、
もし自分が良い感情や考えを持っていればそれが現実になるし、逆もまた然りです。
躁鬱で湿っぽいサウンドとは相反し
歌詞で彼女は自分の良い未来は全て良い方向に向き、
それは自分が見ていた夢のようだと信じ切っています。
このサウンドと歌詞のギャップが、どこか懐かしい過去の記憶を呼び起こす起因になっているのかもしれません。
個人的に
I don't know when you got taller
See our reflection in the water
というラインは非常に美しく、
彼女の作詞の感性に非常に魅力を感じています。
「Kyoto」
この曲は名前の通り日本の京都が曲のテーマになっていて、
少し日本のことをディスってはいるのですが、
凄く歌詞の韻が踏まれ、それでいてラインも整っていて、
聴いていてとても気持ち良いです。
Day off in Kyoto
Got bored at the temple
Looked around at the 7-Eleven
The band took the speed train
Went to the arcade
I wanted to go, but I didn't
You called me from a payphone
They still got payphones
It cost a dollar a minute
To tell me you're getting sober
And you wrote me a letter
But I don't have to read it
という最初のラインから日本人にはたまらない歌詞と
整理整頓されたライムで引き込んでいきます。
PV を初めて見たときどこか映画 lost in translation を想起されました。
調べてみると映画のサントラには alone in kyoto という曲が含まれていました。
美しく妄想的なホーンが非常に良いアクセントとなっており、
この曲でようやく高揚感を感じることができると思います。
「 Punisher」
1人でいることの喜びは音楽を制作する意欲を掻き立てます。
この曲は彼女が大ファンでもあり今は亡き音楽家
エリオットスミスが住んでいた、
スノウホワイトコテージについて述べた曲になっており、
彼女自身今エリオットが生きていれば
世界一のファンの自信があると述べるほど彼のファンで、
歌詞の
What if I told you
I feel like I know you?
But we never met
から出会ったこともない彼に対する深い愛を感じ取れることができます。
でも素敵ですよね。出会ったこともない人間に本気の愛を注ぐことが出来るなんて。
Halloween
この曲の雰囲気は2曲目に似ているのですが、
2曲目より湿っぽさがなくもう少し乾いた奇妙ななんとも言えないサウンドが鳴り響きます。
とても暗く奇妙なのにも関わらず、耳心地が良く
Iron and wine やグレゴリーアランイサコフを想起させました。
単調なメロディーにも関わらず全く飽きがこないのが特徴でもあり
不思議な点でもあります。
ハロウィーンの夜に病院で過ごす彼女が頭の中で、
Oh, come on, man
We can be anything
というのですが、凄く切なく
同時に美しいです。
「 savior complex」
この曲は先日テイラースウィフトの動画でも紹介させていただきましたが、
軽いオーケストレーションに童話のようなドラムビートとバイオリンがディズニーの白雪姫の世界に転生させてくれます。
「ICU」
この題名はICUつまり集中治療室としても読むこともできますが、
同時に I See You とも読めます。
曲はフィービーが長年付き合っていたドラマーと別れ、
別れた後のタフな気持ちを歌っています。
生きているのに死んでいるように暗い気分なのが、
曲の歌詞と対照的に裏側から伝わってきます。
最後の曲
「 I know the end」
この曲は前半と後半で全く曲が変わります。
前半は落ち着いた夏の夜を想起させるようなサウンドではあるんですが
曲が終盤に近づくとアルバムでこれまで明かされなかった彼女の感情が全て曝け出され爆発します。 ホーンやエレキギター、シンバル、そして最後の彼女の叫びが意味するものとは、
「終わりが近づいている」
これはアルバムの終わりと同時に自分に対する卑下、自分をパニッシュする気持ちに対しての終わりかもしれません。
そして、今作でpunisherから次回作で何ものになるのか。
楽しみです。
全体的にみると
前作同様彼女の作詞作曲能力は天才的で
個人的に自分の感性が凄く共感しました。
今作はそれを超えて
過去の記憶や感情に問いかけられものがありました。
そして、喜びや悲しみといった単純なものではなく
もっと自分の奥深くで眠っていた記憶や感情に対し、
このアルバムは心の奥底に潜り
過去や前世の記憶を拾い上げてくれるようなアルバムです。
自分が何者かわからなくなったとき、
遠い彼方から貴方を見つけ出してくれるでしょう。
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