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『EASY LIFE・Life's a beach』アルバムレビュー【音楽】

Easy life

Life’s a beach

本日は UKレスターのオルタナR&Bグループ Easy Life (イージー・ライフ)、デビューアルバム『life’s a beach』をレビューしていければと思うのですが、

このバンドはR&Bという一つのジャンルでは語れないほど大きなパワーを秘めた音楽を制作していて、BBCの新人発掘リスト「Sound of 2020」にて2位を獲得して昨年発表したミックステープEPはEPにも関わらずUKチャートで7位を獲得しています。

このアルバムを制作するにあたりボーカルの Murray Matravers は、「アルバムは、ここ以外のどこかに存在したいと願うと同時に、イングランド中西部の退屈な存在に固執しているレコードだ」と語っています。

コロナ禍でほとんどホームレコーディングを中心に制作された今作は、本来ではライブであったりオーディエンスの前で出来るはずのアーティストの心の声やアートと社会の距離感を中心にした歌詞が曲の中散りばめられており、家の中で悶々とする中で憂鬱を晴らすような叫びと、これまで見たことのないドリーミーのような感覚を同時に味合わせてくれます。

ボーカルに関しても様々なメンバーの声が主役となり歌われていることで、本当に同じバンドのアルバムか?と疑問になる程、バラエティに溢れていて、個々のメンバーの個性が重なり合い美しさを見出しそれは白昼夢の中にいるようです。

1.a message to myselfはこのアルバムの中で一番制作に時間が掛かった曲でもあり、ケンドリックラマーのアルバムを手がけたビーコンと言うプロデューサーと制作され曲が出来上がった時にぶっ飛んだとボーカルのマレイが言うようにクラシックと近代音楽が融合したかのような不均一なメロディーが響き渡ります。そこにフリースタイルで人生は短く、母親の言うことを聞いて、今と言う時間を大切にして自分自身輝くべきだと言う歌詞が歌われます。短い曲ではあるのですが、アルバムの開幕を印象づける大きな始まりです。

2.have a great day

メランコリーで深海にいるようなバッキングサウンドに

このアルバムの主題でもある人生を歌いつつ、彼女と掛かっていく歌詞 

これまでヒップホップに影響されきた彼らが70年代のポップを意識して作った初めての曲でもあり、ロックダウンになる前にスタジオで制作された最後の曲です。

アメリカ人がよく使う『have a great day』と言うフレーズにいつも違和感を覚えていて、本当にこいつらは俺に良い1日を送ってほしいのか、それともからかっているのかとマレーはずっと思っていたそうです。すごくポジティブな言葉だとインスピレーションを受けたいう通り

Life's a beach and life's a bitch Life's a drag so take a hit Life's too short to give a shit So don't let the seagulls steal your chips 'Cause it goes by, goes by fast Like a car on the M1 track と言う歌詞からも前向きな力が伝わってきます。

この2曲を聴いた段階で良い意味での子供っぽさというか幼さを凄く感じます。

13歳の純粋な気持ちで書いたようなリリックは真っ直ぐと心に伝わってきます。

8.complimentsでもそうなのですが、所々の要所でレックスオレンジカウンティを連想さセル歌い方やメロディーラインは聴いていて気持ち良いです。

3.ocean view

この曲は僕がeasy lifeを聴くきっかけとなった曲で

I thought you said you loved the ocean When we were standing at the shore You didn’t even dip your toes in I can’t believe I just took you home (yeah)

と言うフックが一度聴いたら本当に頭から離れず、何度も頭の中でグルングルン回って 、誰かの曲のサンプルを改良したドラッグのような中毒性を持ったバッキングのサウンドと鳴り響いてきます。

バースを歌う中でもサビのメロディーがずっと後ろで響いていてなんとも心地よいシンセサイザーのメロディーがヒップホップよりはドスが小さく耳を刺激します。結構R&Bやラップはこのドスの聴いたベース音に比重が置かれているパターンが多いのですが、このアルバムはその比重が低く、それが僕が気に入った理由なのかもしれません。

心地よさにすごく重点が置かれています。

5.daydreams

この曲はロックダウンのピークの中書かれ、マレーが本当に退屈で時間が過ぎるのが遅過ぎると感じたことをデイドリーミングと言う形で表現して、

Daydreaming and I'm thinking of you Day drinking just for something to do You know, I daydream until the late afternoon

と言う歌詞がひたすら歌われるのですが、何もやることのない憂鬱な1日を完璧に表している音楽とベッドに寝そべっていきたくなります。

それは7.living strangeでも歌われていて

この曲はマレーの兄弟と一緒に書かれた曲なのですが、

それもあり曲のタイトルにもあるようにロックダウンの怒りがぶちまけられています。

Even if there's nothing wrong On Sunday's with no dopamine There's no happiness hanging beside me

と言う歌詞は家にずっといて誰にも会わない生活を

ここまで的確に表すかと言うほど的確に表していて、その他の歌詞も共感できることが多い早いラップは爽快感があり好きです。

10.nightmares

全ての曲の歌詞が重くサビとなりえるほど、

シリアルさとシニカルさを同時に兼ね備え、

ジャズとファンクを取り入れたバッキングの心地よさの中に

Who gives a fuck about my nightmares?

I wrestle with myself and with my vices But no one gives a fuck about my nightmares

But it's nothing you should worry yourself about

[Chorus 1] It’s all a bit of fun until somebody gets hurt I'll take it with a pinch of salt, another lesson learned But I don't need to know what's real or not no more I don't need to know what's real or not no more

と言う歌詞は

今の社会を上手に表していると思います。

全体的に見ると

ポジティブと憂鬱の間で

歌われる少年のような気持ちは純粋でありながらどこかシニカルで

なんとも言葉では表せない耳の気持ちよさがこのアルバムで感じれると同時に現在のイギリスの若者を代弁した歌詞は今のこの世界に大きな希望は与えてくれませんが、

自分の生活圏の中の小さな希望や夢を与えてくれるアルバムでした。

イギリスのワーキングクラスのポジティブな代弁者の今後に注目していきたいです。


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