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『マニックストリートプリーチャーズ・The Ultra Vivid Lament』アルバムレビュー【音楽】

Manic street preachers

The Ultra Vivid Lament

はいということで本日はmanic street preachersで3年ぶり14作目をレビューしていければと思います。

ベース兼ソングライティングを担当しているニッキーワイヤーの両親が前作発表直後に亡くなり、タイトルで鮮やかな追悼と評するように両親の死が大きな影響を与えたアルバムになっており、そこにロックダウンが重なり、ニッキー自身悲しみと向き合い、不安や逃避が反映された今作の歌詞とサウンドは心地よくまどろみある暖かいサウンドにも関わらずどこか焦燥感のあるものになっております。

1. Still Snowing In Sapporo

95年にギターのリッチーが疾走する前の93年の札幌、日本でのツアーのことを回想する曲です。

あの幸せに満ちていた日々はもう来ないという歌詞や四人はなぜあんなに強くなれたのだろうかとリッチーのことを思い返すシーンは慈悲深く、

雪の降る札幌を表現するシンセに最後の It’s still snowing, snowing in Sapporo Still breaking in my heart The four of us against the world, against the worldという寂しさ残る歌詞でアルバムが開幕を迎えます。

この時点でマニック好きには最高のアルバムの幕開けを予感させてくれます。

2. Orwellian

曲のタイトル、オーウェリアンとは非人間的組織社会という意味で1984のジョージオーウェルから名刺が取られ真実がコントロールされた社会のことを指すのですが、

Every way you look, every way you turn The future fights the past, the books begin to burn I'll walk you through the apocalypse Where me and you could co-exist

という歌詞の対比が展開され、言論がメディアによって曲解される現代社会を美しいピアノとメロディックなサウンドと共に批判しています。

3. The Secret He Had Missed

ニッキーがABBAに影響を受けたと語るように跳ね上がる馬のようなピアノに4. Quest For Ancient Colour でも感じ取れると思いますがジャーニーを連想させる80年台のエレキギターとサンフラワー・ビーンのジュリア・カミングがフィーチャリングされその声はABBAそのもの。

歌詞に大きな意味は感じ取れませんが、アルバムの中で一番ポップで壮大な曲になっております。

5. Don't Let The Night Divide Us

個人的にアルバムの中で一番お気に入りの曲で、

軽やかな乾いたアコギに、行ったり来たりするメロディーに踊らされ

このアルバムのアートワークには影と陽の両方を感じ取れると思うのですが、

この曲はその陽の部分を的確に表現した曲dさと思います。

凄く心地よいメイジャーなメロディーではあるのですが、

所々ここぞというとこで敢えてキーを外すところがまたマニックスらしくて

病みつきになる曲だと思います。

7. Complicated Illusions

歌詞一語一語がとても美しく、

歌詞だけで絵になる曲です。

Even the answers that I dream Are riddled with doubt and holes Illusions are complicated Redacted and retold And in the rhythm of your voice I find space to rejoice My complicated illusions Leave me with no choice

ベースラインがアルバムの中でも特別際立っており、

ベースによって立てられた道筋に徐々にキラキラとネオンのようなシンセが鳴り響き

素朴な始まりで始まりキラキラとした終わりを迎える様は

ニッキーが母親との思い出を回想しているかのように響きます。

事実ニッキーはこの曲は母親についての歌だと述べており、

背景を知っていると曲の重みが増し、より感動的に聞こえると思います。

全体的に見ると

前作のギターロックの雰囲気とは打って変わり、

フェードがかった音楽に慣らされるサウンドは幼い記憶を回想するかのように淡く

どこか寂しくもあるけど、その寂しさの中にある力強さに美しさを見出すことができる。アルバムです。今作も日本の要素を感じることができるし外国の音楽なのになぜか日本の風景を感じ取れると思います。

個人的には2000年代のマニックスのアルバムの中では2009年のJournal For Plague Loversに次いで2番目に好きなアルバムです。

95年以降のマニックスのアルバムにはいつも喪失感がありました。

このアルバムはその喪失感を埋め、自分自身を慰めるかのような優しいサウンドになっているのでよかったら聴いてみてください。

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