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addictive side-B

前任の教授が急病で辞めることになった。まさに急な出来事で准教授だった自分が教授となってしまった。自分でもしっくりこない部分もあり、生徒には教授とは呼ばないで・・・と宣言をしている。それくらい年齢的にもまだまだだと思ったし、人生設計として予想外の出来事だった。そして彼女に出会ったことも。

「せんせーっ!」
顔を上げると自分の授業をとっている女生徒だった。確か皆川さんだったか。何度か質問に来ることがあり、質問も中身のあるこちらとしても答えがいのある内容だった。
「はい?」
「はい!これ先生のですよね?」
差し出されたのは万年筆だった。何処で無くしたのだろうか。
「ありがとう。でもよく分かりましたね」
「以前、研究室で教えてもらった時に使ってらっしゃったので」
ニコッと笑う顔はまだ女性というにはあどけない雰囲気がした。それにしてもその1回で覚えていたとは…。
「皆川さんは洞察力が凄いんですね」
「え?!」
「どうしました?」
「先生、私の名前覚えてるんですか!」
目を真ん丸にして驚いている。そんなに驚くことだろうか。
「授業とってるじゃないですか、それにあれだけしつかりとした質問をする生徒は忘れませんよ」
「ありがとうございます?」
首を傾けて対応に困っている。もう少し自分の能力を評価してもいいのに…。
「あ!次の講義があるので失礼します!」
急に我に返ったのかまた目を真ん丸にして慌てながら去っていく。
「はい、ありがとう。助かりました」
お互いすれ違うように真逆の方向へと進んだ。

それからだろうか。視界に皆川さんが入ることが多くなった。好意があるとかではなくしっかりと認識するようになったからだろう。大学ともなれば自分の講義を受けている生徒は数百になり、接する機会などそうもなく研究室の学生か彼女のように質問したり何かしら接点が数回なければ不特定多数の1人でしかない。
彼女は1人でいることが少ない。女性特有の群れて行動する…とはまた違う親しみやすさなのだろうか、1人でいても気が付くと彼女の周りに人が集まっているような気がする。

「次の講義では各項目に分けて現地の様子を判断していきます。一ヵ月後に簡易的なレポート提出もありますので理解を深めておいてください。今日の講義は以上です」
まじかよ
レポートだりぃー
生徒達の気だるそうな声とガタガタと席を立つ音で室内は満たされていく。自分も学生だったらそう思うよ…と思いながらも今は教授という立場上課題は出していかなければならない。
講義で使用した資料をまとめ、ふと顔を上げるとほぼ退室した生徒の中に座ってノートを書いている者がいた。次はこの教室は使われないから残っていても問題は無い。真面目だな…。
「皆川さん 分からないところでも?」
自分が近づいて声をかけるまで気付いていなかったようでまた驚いている。直ぐに冷静になり教科書とノートを指して説明をしてくれた。
「 ここが少し…年代によって違う所は分かるのですがこのデータはどのように活用されて今に至るのでしょうか」
「あぁ、そこはですね――」
講義より丁寧に教科書と彼女のノート、先ほど片付けた資料を出して説明をしていく。時折自分に視線を合わせながら、ゆっくりと頷く姿をみると理解しているようだ。
ふと頷く頭を見ると衣類の繊維だろうか白い羽のような物が髪の毛に絡まっていた。
「皆川さん?髪に何かついてますよ?」
「嘘っ!え、ヤダ!!」
慌ててとろうと髪の毛を触るが、この冬という季節静電気が邪魔をして上手く取れない。慌てて動く彼女からふわっと優しい香水の香りがして微笑ましく思えた。
「フッ…とりましょうか?」
「すみません…」
そっと耳元に絡まっている白い物を取る。
――んっ
取った時に自分の指が彼女の耳に触れてしまった。その感触で彼女は声を漏らしたのだ。驚いたのは自分だけでなく彼女もだったようで、顔を俯かせているが耳が真っ赤だ。
「取れましたよ。ほら?」
と見せれば良かったのだ。それなのに―。

耳の淵をすーっと指で撫でる。触れるか触れないか分からない位に。
ピクピクっと身体を反応させるのを見てそのまま指を中に入れた。
「んぁっ…せんせっ?」
何故?という表情をしながら潤ませた瞳で私を写す。ハッと我に返り
「すみません。耳にかかっていて」
ほら、と彼女の前に差し出す。自分でも呆れた言い訳だと思いながら彼女に差し出す。
「あっ。そうですよね、これ洋服のファーの一部かな?」
まだ顔の赤い彼女は一生懸命取り繕っていた。ふと足元を見ると太ももをもぞもぞと動かしている。一度抑え込んだ気持ちがぶり返す。
「耳弱いんですか? 感じてしまった…とか?」
そっと彼女の耳元に唇を寄せて囁いた。ビクッと彼女の身体が反応する。
また顔を俯けてしまったが必死に左右に首を振っている。
「フッ…本当に? じゃぁなんで脚を動かしちゃってるんですか?」
そう言っている今ももどかしそうに脚は動いている。
「違うんですっ…そんなつもりなくて…足が勝手に…」
俯いた顔を上げて抗議している。顎を親指と人差し指で抑えて上げた状態を保たせる。驚いた表情をしているがいつものそれではなく、困ったような表情でもあった。
「無自覚…ですか。可愛いですね」
―んふっ
少し乱暴に口を合わせた。ぴくんと小さく彼女は反応するとゆっくりと口を開けて自分を迎え入れた。少し荒っぽく口内を犯し、首筋を指で撫で上げる。
「せんせっ…んぁっ…」
―くちゅっくちゅっ
静まり返った教室に淫らな音が響く。そっと唇を放しワザと舌先で糸を作り視覚でも意識させる。
「すみません。可愛い反応するので」
微塵も悪いなど思っていない。いや、寧ろ貴方が誘うから…とでも言い訳をしているようだ。
頭を優しく撫で、少し散らばった資料を手元で整えた。彼女はまだ目がトロンとして動けないでいる。
「皆川さん?」
「せんせぇ…」
甘ったるい声。甘ったるい表情。自分でもこんなにサドの気質があったのかと驚く程彼女を困らせたいと思っている。
そっと手を胸に持っていき下からそっと揉みながら、突起をいじる。冬の生地の厚い服の上から親指で押しつぶしながら円を描くように。
「だ、だめっ…」
「どうしたんですか?洋服の上からですよ?こんな厚手の」
グリグリっと強めに押す。ビクッと背中を仰け反らせる。
「耳といい感度がいいんですね皆川さんは」
「そんなことっ…あっ…んふっ…」
ここでこれ以上するのは危うい。講義が始まってるとはいえ声を出されたら響く。恐らく硬くなっているであろう突起をキュッと摘み優しく舌を絡ませるキスをする。
ビクビクっと反応する彼女。反応からしてこれは軽く達してしまったかもしれない。
「もう不明点は大丈夫そうですね…」
「…あ…はい…で、でも…あのっ」
「研究室にいらしてください。先ほどの続きが…ですよね?」
フッと笑って見せると、彼女は俯いて小さく頷いた。
「今日はもう講義ありませんのでいつでも…それじゃ」
何事もなかったようにその場を去った。自分でもどうしてこんな事をしてしまったのか分からず、焦りと困惑、そして大部分を占めている高揚感をまといながら研究室へと移動した。

彼女はきっと数分後には来る。
私が彼女に中毒性を感じたように、彼女もきっと。

水仙は群れて咲いている光景が多いかと思います。そこから人を寄せ付けるような女性をイメージしました。また水仙は毒があるという部分は外せないので中毒性を持たせる終わり方で。

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