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男とは加害者である。

男性とは、加害者である。

それはその人が何をしたというレベルの話ではなく、もっと数千年に及ぶ歴史の上に立つ、男性という存在の根源的な意味で。

例えば人間が人を殴らなくなったのは、この日本でもほんの30年のことだろう。今の50歳代以上は、日常的に暴力行為を目撃していたと思う。
些細な喧嘩で他人を殴る男、子供を好き放題殴る教師、指導と称して選手を殴る部活顧問、言葉が不自由なのか殴らないと部下に仕事を教えられない上司、とかね。
現代では少なくともまともな知性の人たちは他人を殴ったりはしない。

ほんの30年前まで日本では男性が他人の身体に危害を加えるのはありふれた光景だった。その暴力を男同士で美化してきた期間は、それまで数百年、数千年に及ぶ。
ほら、往年のプロレスラーが試合でもない場所で他人を殴る姿を「〇〇注入」などと美化している男が今でもいるだろう。本当はとんでもないことだが、予定調和の芸事として周囲が大人になってあげている。
映画やテレビドラマでは今でも正義のヒーローが人を殴る描写があり、それをカッコいいと感じているのも男性だ。
凶悪事件が起これば、すぐに死刑にしろと集団リンチにかけるのも男性。

男は様々な理由をつけて、他人に暴力を振るうことを正当化して数千年を過ごしてきたわけだ。

最近は目に見える暴力は著しく減ったが、それでもDVやセクハラ、ネット上の暴言という形でまだ残っている。
その加害者の多くはやはり男性、それも中高年男性だ。

歴史上、男性は社会制度によって常に有利な立場を享受してきた。母親に守られて育ちながら、女性を支配し自由を奪い利用してきたのだろう。それを否定出来る男はいないと思う。男として生まれただけで女よりも有利に生きていると自覚したことがないとしたら、知的な部分の問題がある人だ。俺のようにどんなに惨めな境遇で育っても、それでも女性に生まれるよりはマシだったと俺ですら思っている。

男は甘やかされてきた。

有利な環境を与えらえてきた男は、笑顔を作ることが一般的に苦手だ。笑顔を作らなくても社会制度と男同士のコミュニティのおかげで生きていけたからだろう。笑顔を作らないことが美化された歴史も、残念ながら長い。寡黙という呼び方のコミュニケーションの怠慢がまかり通ってきたのだ。
男なら笑うべきじゃない、お喋りでいるべきじゃない、と言われた経験がある人は、50歳以上に多いと思う。俺もそうだった。

そうやってコミュニケーションの怠慢を放置してきた今の50歳以上の男は、この現代で悲惨なことになっている。
SNSで無神経な発言をしては嫌われ、車の運転ひとつとっても乱暴で無神経、他人の繊細な感情に寄りそうことが出来ず部下からは無能扱いをされ、言葉を尽くして説明することが出来ないのですぐに大きな声で怒鳴る。カーリング選手を見ると「チャラチャラしている」と悪口を言い、韓国や中国へのヘイトをウェブ上に匿名(だと思い込んで)で書き込み、聞かれてもいない政治批判をいつまでも語り、それでいて性欲を丸出しにして女性アカウントにDMをする。ヤフコメ、ヤフー知恵袋、Twitter、フェイスブック、その文章を読んだだけで年齢が分かる男が山ほどいる。

そして、友達が一人もいない。当然ながら女性にモテない。

中高年男性の横柄な行動を擁護してくれる社会制度も母親も、妻子の忍耐も、もうこの時代には存在しないのだと気づいていない。
それでも知的に恵まれた男であれば少しずつ行動を改めているのだが、「バカ」過ぎると平成3年当時と何も変わらず生きている。

時代が変わりすぎて、すれ違う車を運転する中高年男性を一目見ただけで、変われない惨めな老いぼれだと気づいてしまう。その表情、その醸し出す雰囲気で、「加害者」であることを自覚しないまま老いさらばえたのだと気づくほど、時代が変わっている。

もし人生の後半戦を少しでも豊かで楽しいものにしたかったら、男は笑顔でいなければならない。他人の話に黙って耳を傾け必要な言葉をかける努力をしなければない。女性や子供に滅私奉公しなければならない。他人からの目と評価を人一倍気にしなければならない。自分の意見を言うのではなく他人をすべて承認しなければならない。

男は、自分の育ってきた環境や受け継いだ親の価値観と影響を、一度全否定しなければならない。

そして優しく、他人を優先できる人間になるべきなんだ。

でもね、分かっていたとしてもそれを言われると男は怒るんだよ。
母親だけが承認してくれた男のわがままを非難されるのが許せないから。

自分を変えられないまま、惨めで孤独な老人になってしまえば、70歳になっても他人を不愉快にさせるリプしかできない嫌われ者でいることになる。きっと今よりももっとひどい嫌われ方をする。

変わるなら今がラストチャンス。

もちろん手遅れかもしれないが、諦めるべきではない。

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