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「思いついたおもしろそうなことをやってみる」月曜夜の会の軌跡

コロナ禍が襲来すると同時に思いつきではじまった、表現教育家・岩橋由莉と詩人・向坂くじら(筆者です)がふたりでひらいていたちいさな会「月曜夜の会」が、5/25に最終回を迎えました。

↑「月曜夜の会」発足の経緯(スタッフ日誌)


思いつきではじまったにもかかわらず、みょうに人気の会となった月曜夜の会。ほぼ毎回満席になり、最終回では惜しむ声がたくさん寄せられました。

(最終回アンケートより)
・月曜夜の会は今回で最終回とのことですが、次があったらぜひ参加させていただきたいです。 昨日楽しかったので、そのおかげで一週間がんばれそうです! 本当にありがとうございます。

・月曜夜の会ラスト。 何度か参加していろいろ楽しませていただきました。 私のオンラインWSの入り口でもありました。 ゆりさん・くじらちゃん。ありがとうございました。


この記事では、3月からの全6回に渡って月曜夜の会でやってきたことを簡単に振り返りたいと思います。

夜の会は担当制で、ゆりさんとわたしが交互に「思いついたおもしろそうなこと」を持ち込む、というスタイルでした。毎回、20:00~21:30の開催時間のあいだじゅう、一つの遊びをめいっぱい遊び、ほとんどふりかえりや反省をせずさっぱり終わる、そんな会でした。

以下の記録では、お互いの企画についてひとことコメントをつけてみました。どうぞごらんください!


3/9【似顔詩を書く】担当:くじら

Zoomとリアルの場との大きな違いである「自分の顔がつねに見えている」ことを利用して、ペアになっておたがいの顔と自分の顔を見て詩を書きました。

(アンケート)

・自分の顔を見ながら詩を書く際に、心理的な嫌さが勝って詩としての誠実さを保つのが難しかった(たぶんできていない)。人の顔を見ながら詩を書くのは、別の難しさはあったが面白かった。

・知らない相手を見てイメージだけで詞を書くって初めてだったけど、口にすると不思議ちゃんと言われてしまう感覚というか感想を受け手が不振に思わない形で表現出来る手段なのかもしれないと可能性を感じました。

(ゆりコメント)

月曜夜の会、しょっぱなの遊びが、これですよ。くじらちゃん、切り込んでます!2月の終わり頃から多くの人とズームのやり取りが始まった時に、まず皆が言ったのは「話す自分の顔が見えている異和感」でした。我々はコミュニケーションで相手と話している自分の顔を見たことはないのですよね。それを逆手にとってくじらちゃんはさらに相手の顔をじっくり見てそして詩を書きなさい、としたわけですね。嫌がる人がいるかと思いましたが、みなさん書いてくださいました。最後に出来上がった詩を、書いた人が読み上げます。詩の題材であるお顔の方も画面上で拝見しながら聴かせてもらったのですが、ひとりひとりのお顔がみんな違う様に、できあがった詩も一つ一つ全く違っていてそれをじっくりと味わえるものでした。

誰がきてくれるかわからない中で、この遊びを第1回目に持ってきたくじらちゃんの勇気はすごいです。


3/30【好きな本を一冊持ってきて紹介する】担当:ゆり

週末のあいだにひとり一冊紹介したい本を決め、
ひとりずつ本を紹介しました。
テーマは「今だからこその一冊!」。

(アンケート)

・全員に聞いてみたいこと、話したいエピソードがありました。
興味ゼロの本は一冊もなかった。

・いい意味でオンラインを感じない、アットホームな雰囲気がなによりも嬉しかったです。自宅・自室というリラックスできる場所をつなぐこと。リラックスできる空気を持ち寄って、そのリラックスをシェアしあうこと。このコロナの影響拡大のなかで、実はそれがいちばん求められていることじゃないか、なんて考えました。
(紹介された本)
旅の断片 若菜晃子
モモ ミヒャエル・エンデ
ソーシャル・マジョリティ研究 コミュニケーション学の共同創造 綾屋紗月
変愛小説集 岸本佐知子
ちいさいおうち バージニア・リー・バートン
出生前診断 河合蘭
自然療法が「体」を変える 東条百合子
坂下あたると、しじょうの宇宙 町屋良平

(くじらコメント)

この頃はちょうどコロナ禍がいよいよ深刻になっていくぞ、という予感が起きてきた頃で、「今だからこその一冊!」というテーマがみなさんの中に響いていたような感覚がありました。本を紹介する口調から、「いま、この本について、だれかに話す」ということの必然性みたいなものが感じられて、みょうに一生懸命聞き入ってしまいました。ここで紹介されていた本を買った方もいたのではないでしょうか。自分の好きなものについて自由に話す、という行為はそれだけでエネルギッシュで、なんとなく元気付けられたのをよく覚えています。


4/6【あたらしい名前を名乗る】担当:くじら

Zoomの自分の名前を変更して、これまで呼ばれたことのない名前を名乗る、という遊びをしました。
お互いにその名前で呼び合い、おしゃべりをしました。

(アンケート)

・普段は名前を覚えるの苦手だけど、昨日のは忘れないかも。
みんなピッタリな名前。
本人のイメージと一緒じゃなくても何故かピッタリ。
不思議でした。
名前って生まれた時に既に決まっていて、反発して名前が嫌だと思春期の頃は言ってみても、結果違和感なく過ごしてる今が変なのかも。
大人になってから考えた名前に変えてもいいんじゃない?

・あの時、我々は確かに何かをサバイバルした、という実感があります。
何の役にも立ちそうにない、どうでもよくて、結構くだらなくて、
そんなことをたくさんたくさん話して、たくさんたくさん笑いました。
みんなで笑いながら話し続けた。

(ゆりコメント)

これは、実際にやってみると予想以上にはまりました。名前を名乗るとは、新たな呪(しゅ)を自分にかけるということで、名乗った途端に今までとは違ったものをまとい始めるのですね。名乗っただけなのに、立ち振る舞いが今までとは変化して全員昔からその名前だった様に思えてくるのがおかしくておかしくて涙が出るまで笑い転げました。提案したくじらちゃんが「ちょっと皆さん落ち着いてください!」と何度も言うくらいでした。またやりたいです。


4/27【絵しりとり】担当:ゆり

zoom越しの絵しりとりです。「最近見た印象的なかたち」を絵にしたり、最近自分に起きた気持ちを絵にしたりするところを助走に、最後には全員で絵しりとりをしました。

(アンケート)

・初めての人たちのバックグラウンドを何も知らずにその人たちと絵を描いてご一緒できたのが良かった。社会的背景を知らない人と、ひとときを過ごすという感覚が今の不安な状況からみても貴重な時間だと感じました。絵を描いて楽しむワークがとても気楽に参加できよかったです。笑いが不安を癒してくれるということを本当に感じる事のできる会でした。

・絵しりとり、笑った。「のみ」が最初分からなかったから、分かった時、超面白かった。私も最初「のらりひょん」かと思ってた。笑える。
月曜の夜はこんなゆるーい感じが、いい。こんな風に笑えるって幸せ、と思いました。

(くじらコメント)

この回はとにかく可笑しかったです。準備運動的なワークでは「かたち」や「気持ち」というわりに抽象的なものを描いていたのが、最後の絵しりとりで急に、具体的なものを描いて相手に伝えないといけない、というちょっとした緊張感が生まれ、それがなおさら場を笑い上戸にしていました。一瞬で描き終わった人が画面越しに見せてくれた紙に黒い点ひとつだけが描かれていて、やや間をあけてそれが「ごま」であると分かったときの可笑しさ。わたしも妖怪みたいな「ノミ」を描いて混乱を産んでしまいましたが、そのときもみんな笑いころげていました。


5/11 【ミュートでしゃべってみる】担当:くじら

Zoomの設定をミュートにして、声が聞こえない状態でエピソードトークをしてもらいました。
見ているほうは、聞こえないなりに話の内容を妄想してあれこれ言い、最後に話した本人から答えあわせをしました。

(アンケート)

・同じお話をきいても、どんなお話を聞いたのか人によって全然変わったり、その中でも共通する要素はあったりといったことが面白かったです。
「アジア系のラーメンを食べようとして、ナンプラーが…」とゆりさんがすごく具体的なものを受け取ってくださっていたのが、どのような動作からそのような印象を受けたのか、すごく気になりました。

・オンラインでやる遊びの可能性を感じました。からだ全体を使ってダイナミックに動くことはできませんでしたが、表情やジェスチャーで伝える工夫をすることや想像力を発揮して自由に発想することがどんどん楽しくなってきた!

(ゆりコメント)

これも実際やってみてそのおもしろさに皆がどんどんハマっていった感じです。ミュートで聞いているのでどうせ詳細がわからない、という安心感から好きな妄想をし始めるのです。一回そう思い込むと、そうとしか見えなくなってくる、という現象は、案外日常生活も同じことが起こっているな、と感じて、コミュニケーションてこんな誤解がしょっちゅう生まれてるのかもしれないなと思いました。


5/25【本を使ったご神託遊び】担当:ゆり

各自一冊家のなかから本を持ってきて、その本で「ご神託遊び」をしました。
参加者の順番を決め、次の人になにか悩みを相談する

相談された人は本の適当なページを開き、読みあげる

読み上げられた箇所を「ご神託」として聞こうとしてみる
という遊びです。

(アンケート)
・イカがとても好きなので、「世界で一番美しいイカとタコの図鑑」で◯◯さんへ御神託をしたときに、◯◯さんがイカの説明から感じ取ってくださったのがなんだかすごく嬉しかったです。

・全く初めてのことばかりで時間が進むにつれ疲れがふっとび、固くなった頭がどんどん柔らかくなった。もっとやりたい気持ちになって終わる。自分の中に空白が生まれて終わる。いつも不思議。

(くじらコメント)

そこにたまたま居合わせた他人、その他人がたまたま選んだ本のたまたま開いたページ、というなにもかも偶然のなかでぽいっと出てくる「ご神託」。ゆりさんはくりかえし「これはただのそういう遊びです!」と強調していましたが、ここまで徹底して偶然だと逆に運命的なものを感じ取りたくなってしまいます。本を開いてご神託を出したほうはキョトンとしていても、受け取ったほうがそこからやけに一生懸命意味を聞き取ろうとしていたのが印象的でした。



おわりに


(ゆり)

曜日の始まりである月曜の夜を楽しみに待つようなことをやってみたいというのは、長い間思っていたことでした。
それも大層なものではなく、ものすごくさりげないことをやりたいなと思っていたので、わざわざそのために場所を借りて、人を集めてということが大層に思えて二の足を踏んでいました。
ところが世の中がオンラインになり、逆に今だからこそできるのかもしれない! と同じように月曜に何かやってみたいと言うくじらちゃんと共に始まった企画でした。
何をやるかわからないのに月曜夜に集まって一緒に遊んでくださったみなさんには、感謝です。本当にありがとうございました。
またどこかでお会いできたらと思います!


(くじら)

夜の会がはじまってから終わるまでの3ヶ月の間に、コロナ禍の状況はどんどん変化し、緊急事態宣言が発令され、そして最終回のころには解除されました。夜の会ではいつも最初に自己紹介をしていただいていたのですが、そこで参加者の皆さんからうかがう日々の過ごし方や気持ちの状態も、なんとなくそれにあわせてゆれ動くのを感じていました。

そんななかで、目的も学習なくただただ遊ぶだけの夜の会をたくさんの方とご一緒できて、ほんとうにうれしく思っています。「こんなに笑ったのひさしぶり!」と言っていただけることも多く、一旦夜の会はおしまいになりますが、またべつの場所でお会いできるのをとても楽しみにしています!

3ヶ月間ほんとうにありがとうございました!


(向坂くじら)

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