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【特別篇】「紀の国だより」2022年夏号 前編を公開します!

プレイバック・シアター研究所では、POM(Playback Official Member)会員の方に、季刊で会報「ぽむ新聞」をお送りしています。

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研究所ニュース・お知らせだけでなく、羽地朝和「蜂蜜日記」、御手洗聖「御手洗センセイの著書紹介」などのコラム連載も充実! 四コママンガコーナーまであります。

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↑サンプル:21/01/08発行の第0号(こちらはサンプルなので2ページですが、現在ぽむ新聞は6ページでお送りしております!)

今回はその中から、岩橋由莉の連載コラム「紀の国だより」の前編を特別に公開いたします! どうぞお楽しみください。(後編はぽむ新聞2022年夏号にてお読みいただけます!)

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今日の紀の国だよりは、大阪の朗読教室での出来事について書きます。
この教室のメンバーとは10年くらいのおつきあいです。発表会を行わないと決めているため、日頃感じていることを言葉にしていただいたり、とにかくいろんなジャンルのものを少しだけかじって読む、ということを中心にやってきました。わたしが個人的に行なっている半日のワークショップのように、ひとりひとりの存在や表現を突き詰めるわけでもなく、あまりあとに残らない、軽いやり取りが主な2時間です。けれどそれを続けていると、私自身が不完全燃焼に陥ることが時々ありました。考えてみると、わたしが個人の存在や表現に言及するときには、個々が持っている違いについて焦点を当てることが多いです。そこを丁寧に見ていくことやじっくりと皆で味わうプロセスを通して、互いに気づきが生まれたり、普段思い込んでいる方向とは違った見方を発見できればいいなあと思って行なっています。自分では嫌だと思っている感覚や特徴も、他者から見ると一つの才能や、唯一無二の特質と思えることは、多々あって、それは高校の授業だろうが、大人たちの朗読教室だろうが同じ尊さとおもしろさを感じています。

けれど、この教室の方のように、カルチャーセンターから派生したもの、または高齢者が多くいる教室では、「人との違い」より、「人と似た部分、共通していること」を中心に会話がよくなされます。その中では「わかる!同じですね!」というような言葉ですぐにつなげるのではなく、「こういう部分が似ていますね」と似ている部分の詳細を言うことで「みんな同じでいいね」と一括りにならない場をつくるように心がけています。が、多勢に無勢。「そうだよね」「そうだよね」と、大きすぎる包容力に飲み込まれそうな気持ちになりながら、日々、場を進行していました。

朗読の前には、ストレッチで身体の部位をあたためたりほぐしたり、自分の身体を自分で注目してもらいます。身体を、特に腰から下の支え部分に注目してから声を出してもらうと、また違った響きになります。10年もやっていると、この教室のメンバー同士も互いの声のアプローチをああでもない、こうでもないと試行錯誤するようになっています。その活動は私も一緒になっていろんなやり方を試したりしてとても楽しい時間でした。ところが、コロナ禍になり、他者に近づくことや身体に触れることもままならなくなりました。

朗読は基本どんなことでも楽しいのですが、ともに考える身体へのアプローチがなくなることで、ここはわたしの朗読にとって必要な時だったのだなと気付かされました。

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昨年秋に「ドライブマイカー」という映画が、カンヌで賞をとったというニュースがありました。わたしも映画を見て、原作を読んでみて、この文章は朗読に面白いかもしれないと思いました。
読み物を声に出して朗読する場合、そのことに適している作品と、読むだけの方が良い作品があります。村上春樹の作品は、個人的には、大好きな作家ですが、わたしの未熟さ故、概ねあまり朗読に適していると思えません。読むとあまり感じないのですが、声に出すと、まどろっこしく感じるものがあるようです。そして長編の方が断然面白いのですが、朗読に適しているととなると短編になってしまいます。「ドライブマイカー」は文庫本で70ページくらいで少し長めです。が、年の離れた境遇も違う男女が車の中で繰り広げられるやりとりが緊張感もあり、朗読をしてみたいと思うようになりました。……(後編へ続く)

(岩橋由莉)

★この続きは、ぽむ新聞2022年夏号でお読みいただけます! このたび特別に、ご希望の方に第8号のpdf版をお送りいたします。以下のフォームよりお申し込みください。


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