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プレーリーダーって何をしている人? 1/

プレーリーダーは冒険遊び場において、子どもがより自由に遊び、育つことのできる環境(遊び場)づくりに従事する人のことを言います。
(近年、それ以外にもプレーリーダーと呼ばれる人が出てきていますが、それについては後ほど書きます)

子どもは生来自ら育つ力を備えており、そのための本能的な行動が遊びなのですが、現代では子どもの成長にとって十分な遊び環境が子どもの身近な場所にないことが多いです(あったとしても、様々な大人の理由で使わせてもらえない)。そのため、子どもには遊び場が必要だと考えた大人たちによる冒険遊び場づくりの活動が全国で広がり、合わせてプレーリーダーという人材も認知されはじめました。

しかし、担っている環境づくりの中身が非常に多岐に渡っていて、しかも外からはわかりにくいこともあるため、プレーリーダーは単純に「子どもと遊んでいる人」と思われることもしばしば。小学校高学年ぐらいの子どもから「遊んでお金もらえるなんていいね」と言われるのは、プレーリーダーあるあるだったりします(苦笑)。また「リーダー」という名称から「遊びを指導する人」と思われがちですが、そうではありません

実際は子どもの心理や発達、遊びに関する理解、危険管理の知識と実行力、子どもだけでなく大人ともコミュ二ケーションをとる力、様々な知識や能力を駆使して、子どもの成長を支える専門職なのです。この専門性はイギリスでは「プレイワーク」と呼ばれ、大学の専門課程もあります。そして、近年日本においてもプレイワークを広める動きが出てきています。この辺りのことは一般社団法人 日本プレイワーク協会のホームページをご参考ください。

日本ではこれまで冒険遊び場に関する書籍の中で、例えば「子どもたちの代弁者」や「自ら遊ぶ人」、「しゃべる立て看板」(遊びの価値と安全を考える会 編著『もっと自由な遊び場を』株式会社大月書店、1998年)といった役割を持つ人として紹介されたり、

全国の冒険遊び場づくりの活動を支援するNPO法人日本冒険遊び場づくり協会が、「冒険遊び場におけるプレーリーダーの役割」を20にまとめていたりします。

本稿では、それらとは少し違った切り口で、役割を整理するというより、私のこれまでの経験をもとに、プレーリーダーが実際に環境づくりとしてやっていることを、順不同で書き連ねていきます
多分4〜5記事ぐらいになりそうなので、気になるところから読み進めてみてください。
なお、プレーリーダー全員がこのように動いているということではないのでご注意ください。でも、ある程度は網羅できていると思います。

名称に関する補足

「プレーリーダー」は場所によって「プレイリーダー」と表記される場合がありますが、基本同じものと捉えていただいて大丈夫です。また、近年冒険遊び場の中でも「プレイワーカー(またはプレーワーカー)」と呼ぶ場所も増えてきています。「プレーリーダー」と「プレイワーカー」は厳密には異なるものですが、冒険遊び場の職員で「プレイワーカー」と呼んでいる場合は、基本同じものとして考えていただいて大丈夫です。

また、近年スポーツ庁がプレイリーダーの必要性を訴えていたり、スポーツメーカーのミズノも「ミズノプレイリーダー」という人材の育成を進めています。他にも、千代田区の公園にプレーリーダーが配置されたり、ショッピングセンターの遊戯施設でもプレーリーダーと呼ばれる方々が働いていますが、冒険遊び場のプレーリーダーとは在り方が異なります。
スポーツ庁では「運動遊びプログラムを通して、子供たちが主体的に活動できるようプレイリードする人」とされていて、こちらは明確に「リードする人」と謳われています。ミズノでもやはり「プレイリード」という言葉が使われています。冒険遊び場のプレーリーダーは「プレイリード」ではなく、「プレイワーク」の視点に立って行動をしています
どちらが良い悪いという話ではなく、異なる役割をもったものだということを知っておいていただければと思います。

さて、それでは一つ一つ書いていきますが、長くなることは確実なので、複数の記事に分けて投稿していきます。

【環境整備に関すること】

《場を開く・設える》

普通の公園とは違って、どの冒険遊び場も開催(開園)時間が決まっています。ですので、まずは場を開く、つまりは様々な道具や遊具、憩える場所などを準備して、訪れた人がその場で自由に過ごせるようにするところから始まります。
正確にはその前に、スタッフ間で前日(前回)に起こったことや申し送り事項を確認したり、当日予定されていることがあるかや、各々何かやろうとしちることはあるかなどを、簡単に共有すること=ミーティングをしてから始めます。
場を開くときは、適当に配置しているわけではなく、遊びのきっかけになりやすいように、素材や工具が使いやすいように、保護者が子どもを見守りやすいように、初めてきた人やたまたま通りがかった人にもわかりやすいようになど、人の流れや危険管理も含め様々なことを考えながら場を設えます

「設える」ことは「場をデザインする」とも言い換えられますが、とても奥が深く、日毎に、あるいは1日の中でも少しずつモノの配置を変えたりしながら、子どもも大人もよりやりたいことができたり、過ごしやすい空間になるように試行錯誤を繰り返します。
これが遊具や倉庫などを作り置きできる遊び場(常設と呼んでいます)だと、さらに可能性が広がりますが、その分しっかりと検討が必要になります。大きな遊具になるほど場に与える影響は大きなものになるからです。場合によっては、原寸の模型を作って配置場所を検討するようなこともあります。

なお、常設の遊び場では閉園時間中は安全管理の観点から、固定遊具は使用できないようにしているところが多く、「閉園中は使用できません」といった看板をかけたり、トラロープで囲ったりするのですが、それらを外して使用可能にするのも場を開く作業に入るかと思います。

《つくる》

《設える》にもつながりますが、場に必要な様々なものをつくります。
[遊具]
遊びのきっかけとして、大きなものから小さなものまで、その日のうちに取り外すものから据え置いておくものまで、素材やその場の環境を踏まえ、また活かしてつくります。
大きなものだと、ロープを使ったブランコ、ターザンロープ、モンキーブリッジ、滑車ロープ、ハンモック(毛布と合わせたりも)、竹や木材を使って滑り台、やぐら、タワー、デッキなど。
持ち運び可能なものだと、コリント(ボール転がし)、竹馬、三角馬、スケートボード(キャスター付きの板)、即興で柱材を組み合わせて平均台をつくったりもします。

[机、椅子、棚、倉庫、看板など]
特に常設の遊び場では、大きめの倉庫が備わっている場合が多く、というかそもそも倉庫自体も手作りしたり、机や椅子などの什器や、遊び場の情報を発信するための看板や掲示板など、必要なものは自らつくることもあります。

以上に挙げたようなものをつくるには、構造の知識や、電動工具を含む工具の使い方などについて、ある程度の知識が必要になってきますが、座学より、現場で先輩のプレーリーダーや専門家の方に教わりながら体で覚える場合が多いように思います。

《調達する》

木材や紐、紙、布、テープ、釘、のり、はさみ、鉛筆、のこぎり、かなづち、くぎぬき、包丁、鍋、様々な素材や道具・工具・器具があればあるほど、遊びの幅は広がります。実店舗やネットショップなどで購入することはもちろん、チラシや口コミで寄付を募ったりもします。
木工や基地づくり用の木材は購入するとなると結構お金がかかってしまうので、近くで建設現場を見つけたら、交渉して廃材をもらったりすることもあります。

《危険を管理する》

子どもの遊びには危険がつきものです。それは、遊びにはこれまでできなかったことに挑戦をするという側面があるからです。特に冒険遊び場では、子どもの「やってみたい」という思いをより刺激するように、先に書いたように遊具を手作りしたり、様々な素材や道具や工具を準備しています。また、場所によっては火を使うことや、地面に穴を掘ったり、木に登ったりすることも可能です。通常の公園と違って、固定された硬いものばかりではなく、そこに来る人の手で常に変化し続けるのが冒険遊び場の特徴なのですが、その分、危険の要素も多様であり、日々移り変わります

危険が多いということは、それだけ怪我をする可能性も高いと言えます。だからと言ってすべての危険を取り除いてしまうと、子どもの「やってみたい」という気持ちは湧き上がってこないでしょうし、様々なことに挑戦する機会も損なわれます。結果、怪我はしないかもしれませんが、それが本当に子どもたちにとって良い環境でしょうか。「面白い・楽しい」と「危ない」は隣り合わせだったりするのです。

「子どもは積極的に怪我をすべき」とまでは言いませんが、子どもの遊びには危険がつきもので、その結果怪我もつきものという前提に立った上で、障害が残るような大きな怪我が起きないように、危険を管理すること(リスク・マネジメント)もプレーリーダーの大きな役割の一つです。

危険管理だけで一つの講座になるぐらい書けることは一杯あるのでここでは細かくは書きませんが、基本的には子ども自身が意識できない危険は事前に取り払い、子どもの「面白い・楽しい」、「挑戦したい」に繋がる危険は状況に応じて残すようにします。前者の危険をハザード、後者をリスクと呼びます。

具体的な動きとしては、例えば定期的に遊具の素材(木材やロープ)が劣化していないか点検して必要に応じて修理をしたり、地面にガラスなどの鋭利なものが落ちていないか(特に遊具の周辺)常に目を光らせて取り払ったり、幼児が遊んでいる周りで小学生たちが激しい遊びを始めたらどちらかに声をかけて移動するよう促したりなどします(この辺は「環境整備」からは外れるので、別のところでもう少し書こうと思います)。

なお、危険管理についてもっと知りたいという方は、日本冒険遊び場づくり協会が発行しているブックレットが参考になりますので、チェックしてみてください。

《場を閉める》

《場を開く》で書きましたが、冒険遊び場は開催(開園)時間が決まっています。ですので、毎回閉めるという作業があります。しかし、時間になったら「はい、終わり〜」と言うのではなく、子どもができるだけその日を遊びきったと感じられるように、遊びをなるべく止めずに、使われていないものから徐々に片付けていくようにします


常設ではなく週数回未満の開催の場合、現状復帰が基本なので、設置したロープ遊具などを外し、穴を掘っていたら埋めて、出した道具や工具なども所定のボックスなどに収納していきます。その場に倉庫がある場合は倉庫に収めていきますが、運営者が各々の自宅に分担して保管しているという場所も多いので、その場合は車などに積み込みます。ゴミを拾って、現状復帰完了です。

常設の場合は、原則として閉園している際に什器、道具や素材などが、誰かに使われないように収納したり、収納できない遊具などには看板で使用不可を明示するなどの処置をします。
通常の公園の遊具は、国の指針に則った安全基準を満たしており、また想定している以外の方法での使用を禁止することで怪我や事故の発生を減らすようにしています。しかし冒険遊び場ではその特性上、通常の公園とは遊具の設置目的や利用形態が異なります。それでも設置できるのは、危険管理を行うプレーリーダーや運営者がその場に常にいるからなのです。閉園中はプレーリーダーや運営者はいないので、使えないように処置をする必要があるのです。
ロープ遊具は毎回外すものもあれば、ロープブランコなどは脚立などを使わないと届かない高さに固定する現場もあります。固定の木製遊具などは周囲をロープで囲って使用できない旨を記載した看板を掲示したりします。

判断が分かれるのが、子どもが作った基地や、掘った穴などです(時に1m以上の穴を掘ったりすることもあるのです)。子どもにとって遊びは日常であり、連続性を持つものです。「今日楽しかったから、明日も続きをやろう」という気持ちを最大限尊重したいのですが、閉園時の安全性の確保との兼ね合いになってきます。また、その場所の使用許可の条件にも関係してきます。その条件について交渉していくことも、プレーリーダーの仕事でもあります(これについては別途書きます)。それらを踏まえてとなりますが、例えば穴の場合は、厚い板で蓋をして、その上にコーンを置いたりロープで囲った上で、注意喚起の掲示をして穴を残すこともあります。

最後に冒険遊び場の範囲全体を見回って、工具やロープなどをしまい忘れていないか(そもそも出す数を管理していることが基本ですが)、ついでにゴミ拾いをして、終了という流れが一般的かと思います。

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もう少しありそうな気がしますが、他のことを書く中で出てきたら追記します。

その2はこちら

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