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数字を把握するー『児童館』

(画像引用:厚生労働省

不定期で子どもの遊びや育ちに関係する数字を調べるシリーズ。
今回は児童館の数について。

児童館は法律上、児童福祉法に定められた14種の児童福祉施設の中の児童厚生施設の一つに位置付けられています。児童福祉法が制定されたのが1947年(昭和22年)で、その時から定められているので70年以上の歴史があることになりますが、2018年(平成30年)10月1日時点で、全国に4,477の施設があります(出典:厚生労働省の社会福祉施設等調査)。

児童福祉法では「児童に健全な遊びを与えて、その健康を増進し、又は情操をゆたかにすることを目的とする施設」とされています。厚生労働省が策定している「児童館ガイドライン」(2018年(平成30年)1月改定)では、活動内容として以下の8項目が示されています。

①遊びによる子どもの育成
②子どもの居場所の提供
③子どもが意見を述べる場の提供
④配慮を必要とする子どもへの対応
⑤子育て支援の実施
⑥地域の健全育成の環境づくり
⑦ボランティア等の育成と活動支援
⑧放課後児童クラブの実施と連携

また、新たに施設特性として、以下の3点が整理されました。

① 拠点性
児童館は地域における子どものための拠点(館)である。
子どもが自らの意思で利用でき、自由に遊んだりくつろいだり、年齢の異なる子ども同士が一緒に過ごすことができる。そして、それを支える「児童の遊びを指導する者」(以下、「児童厚生員」という。)がいることによって、子どもの居場所となり、地域の拠点となる。

② 多機能性
児童館は、子どもが自由に時間を過ごし遊ぶ中で、子どものあらゆる課題に直接関わることができる。それらのことについて子どもと一緒に考え、対応するとともに、必要に応じて関係機関に橋渡しすることができる。そして、子どもが直面している福祉的な課題に対応することができる。

③ 地域性
児童館では、地域の人々に見守られた安心・安全な環境のもとで自ら成長していくことができ、館内のみならず子どもの発達に応じて地域全体へ活動を広げていくことができる。そして、児童館は、地域の住民と、子どもに関わる関係機関等と連携して、地域における子どもの健全育成の環境づくりを進めることができる。

つまり、現在の児童館は、単に子どもの遊び場や居場所として役割のみならず、子育て支援や、地域活動の育成支援を通じた地域環境づくりも行う地域の拠点施設なのです。

2016年(平成28年)までの推移をグラフにしたものが、厚生労働省の児童館に関するページで公開されているので、以下に紹介します。

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昭和40年代から60年代にかけて急激に増加していますが、ここ数年はほぼ横ばいになっています。細かく見ると、公営の児童館が徐々に減っている一方で、民営の児童館が増えてきています
ただし、民営にも公設民営と民設民営とがあり、2016年度(平成28年度)の全国児童館実態調査によると(公設公営56.3%)公設民営40.6%、民設民営3.0%という割合になっています。公設民営をさらに詳しく見ると指定管理が90.7%と9割を占めていて、他の公共施設と同じく民営化の流れが児童館でも起きていることが想像されます。なお、民設民営はそのほとんどが社会福祉法人で、一部一般財団法人などが設置・運営するものもあるようです。

ちなみに私が小学生当時は地元に児童館はありませんでした(現在はあるみたいです)。その後、大学進学で他県に住むようになって、児童館で運営している学童保育でアルバイトを始めた時に初めてお世話になりました。そう、児童館は全ての市町村にあるわけではないのです。設置については地方自治体に任されている(任意設置)ため、知っている人もいれば知らない人もいます。一般財団法人児童健全育成推進財団が2016年に行なった調査研究(児童館における子育て支援等の実践状況に関する調査研究)によると、約4割の市区町村には設置されていないとのことです。
私がアルバイトしていた学童保育のように、自治体によっては児童館で学童保育の事業を行なっているところもあるので、児童館=学童保育に通う子どもだけが使える場所と認識している人もいるかもしれません。

さて、先のグラフの注意書きにありましたが、児童館は大きく3つの種類に分かれています。
《小型児童館》
児童の日常生活圏(小学校区ぐらい?)をカバー。地域の中にあるいわゆる児童館がこのタイプです。全国に2,627(2018年(平成30年)10月1日時点)あります。

《児童センター》
小型児童館の機能に加えて、運動を主とした遊びを通じて子どもたちの体力増進を図ることを目的とした事業や設備をもつ児童館です。全国に1,717(同上)あります。
児童センターの中でも、年長児童(中学・高校生)に対する育成機能を有するものは大型児童センターとして分類されます。楽器が演奏できる音楽室(スタジオ)やダンス室などが設置されていたりします。面積も通常の児童センターより大きく設定されており、屋外に体力増進のための広場を有するように規定されています。

《大型児童館》
大型児童館はA型、B型、C型の3種類があります。大型児童館になるとファミリーで行って、1日たっぷり遊んで過ごすような規模です。

[A型]都道府県が設置するもので、小型児童館、児童センターの機能に加えて、都道府県内の小型児童館、児童センターの指導や連絡調整等の役割も果たしています。大型の屋内遊具やプラネタリウムを備えているものもあり、全国に15(同上)しかありません愛知県児童総合センター大阪府立大型児童館ビッグバン栃木県子ども総合科学館などがこれに当たります。

[B型]豊かな自然に恵まれた一定の地域内で、児童が宿泊しながら、自然をいかした遊びを通して協調性、創造性、忍耐力等を高めることを目的としている児童館で、定員100人以上の宿泊設備と、野外活動が行える機能を有しています。
A型よりもさらに少なく、全国に4(同上)しかありません。と思って調べてみたところ、岩手県立児童館 いわて子どもの森新潟県立こども自然王国茨城県立児童センター こどもの城姫路市宿泊型児童館 星の子館滋賀県立びわ湖こどもの国の5箇所が見つかりました。2019年から増えた?それかどれかがB型から変わった?(びわ湖こどもの国は、ネットで調べられなかったので直接電話してみたところB型でした)

[C型]広域を対象として、遊びのみならず芸術・体育・科学などの幅広い活動ができるように、劇場、ギャラリー、屋内プール、コンピュータプレイルーム、歴史・科学資料展示室、宿泊研修室、児童遊園等が設置されているものですが、これまで国立総合児童センター(こどもの城)1館のみでした。しかし、ご存知の通りこどもの城は閉館されてしまったので、現在は一つも存在していません

※「その他の児童館」として、公共性、永続性を有し、小型児童館に準じたものが114館ありますが、多くは「小型児童館」の要件(面積や設備面等)を満たさないために「その他」と位置付けられていることが多いようです。

さて、全国に約4,500ある児童館ですが、特に小型児童館の多くは昭和40〜60年代にかけて建設されたものが多く、建物の老朽化によって休館や廃館されるものも出てきています
先に紹介した「児童館における子育て支援等の実践状況に関する調査研究」によると、「平成 31 年度末までに、休館・廃止の予定はありますか。」という問いに対して、8.1%に当たる60の市区町村が「有る」と回答し、6.4%に当たる47の市区町村が「検討中」と回答しています。また追加で休館・廃止の理由を尋ねたところ、多い順に「老朽化 44(41.1%)」「児童の減少34(31.8%)」「他の施設・事業等との統合 27(25.2%)」という回答でした。今後少子高齢化が進むとますます児童館が減少していくことが予想されます。
児童館を設置していない自治体に「設置しない理由」を尋ねたところ、約9割が「代替機能がある」と回答していて、その代替機能として「放課後児童クラブ(75.5%)」、「地域子育て支援拠点事業(54.8%)」が挙げられています。
確かに国も児童館と放課後児童クラブ、地域子育て支援拠点事業を一体的に活用する方針が掲げられていますが、放課後児童クラブは登録した子どもだけ、地域子育て支援拠点事業は主に未就学児とその保護者を対象としています。つまり、児童館がなくなるということは、学童期から思春期の子どもの居場所がなくなるということなのです。子どもの居場所がこれ以上減らないように、選挙権のない子どもたちの代わりに誰かが声を上げる必要があります。

参考文献

●厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/jidoukan.html
児童館ガイドライン:https://www.mhlw.go.jp/content/11906000/000361016.pdf
児童館の設置運営要綱:
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000187080.pdf

●一般財団法人 児童健全育成推進財団 ホームページ
https://www.jidoukan.or.jp/

●コドモネクスト
https://www.kodomo-next.jp/
全国児童館実態調査:
https://www.kodomo-next.jp/research

●平成 27 年度子ども・子育て支援推進調査研究事業報告書「児童館における子育て支援等の実践状況に関する調査研究」/一般財団法人 児童健全育成推進財団
https://www.jidoukan.or.jp/project/research/H27jdk_research.pdf

●地域の「子ども施設」としての児童館の役割~時代とともに変化する児童館の機能と「児童館ガイドライン」(2018年版)の役割~/みずほ情報総研株式会社
https://www.mizuho-ir.co.jp/publication/report/2019/pdf/mhir17_children.pdf

●「改正児童館ガイドライン(仮称)」の理解を促すための調査研究
-「児童館ガイドライン」(平成 30 年 10 月)を理解するための確認ツールの開発-/みずほ情報総研株式会社
https://www.mizuho-ir.co.jp/case/research/pdf/h30kosodate2018_0201.pdf

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