PLATEAU+Cesiumで都市をビジュアライズする

継続開発中のアプリ「PLATEAU Window」は、Cesium for UnrealPLATEAU SDK for Unrealを組み合わせて、高度なビジュアルとPLATEAUデータの信頼性を共存する統合型景観ビューアです。このアプリでは、ある建物を中心とした建物内及び周辺の景観を閲覧、体験できます。

周辺高さ情報に基づく色分け例
建物の属性情報の表示例

ゲームエンジンを活かした強力なビジュアライズ・ウォークスルーにおけるFPS視点での操作性のほか、UnrealEngineの強みを生かしたBIM/点群等の多彩なデータインポートに対応します。

室内FPS視点の例

PLATEAUは国土交通省が保証する信頼性が高いデータであり、「属性」と呼ばれる様々な情報を含み、都市計画や防災等の重要なデータベースをはじめ、高さや建築年等多彩なデータにアクセスできます。しかし(いわゆる「LOD2」以上の)詳細な建物形状を提供する区域は一部に限られ、PLATEAUデータだけで都市ビジュアルを再現するには限界がありました。

現状のギャップを埋めるために、PLATEAU Windowでは周辺景観の描画にCesiumプラットフォームを採用しています。Cesiumは、WGS84グローブに基づいた高精度な地形データを利用し、都内から見える富士山など、遥か遠くの地形も軽快に再現できます。更に多彩な種類のデータが利用可能で、例えばOpenStreetMapが提供する建物データは形状こそ簡素ですが提供範囲が広く、工夫次第でビルらしいビジュアルを表現できます。また2023年に提供開始されたGogle Photorealistic 3D Tilesでは、Google Earth等でも使われる3D地図ビジュアルを利用でき、軽量かつ高速にリッチな都市景観を再現できます。

PLATEAU Windowでは、精度やデータが求められる中心となる建物周辺はPLATEAUデータまたは独自にモデリング/インポートした建物データを使い、遠景はビジュアライズ用途として割り切って上述のCeisumプラットフォームを活用、精度面とビジュアル面の両立をはかっています。

構造模式図

ビジュアライズに至る大雑把な流れは以下の通りです。

  1. Cesiumのベースマップの設定

  2. 広範囲のビル群等データを取得

  3. 独自制作もしくは変換した、対象建物をワールド原点に配置

  4. 建物周辺区域のデータをPLATEAU for UEで取得、配置

  5. その他、関連建物データや地物の配置

  6. CesiumデータとPLATEAUデータが重複する箇所をポリラインで除去

注意点として

PLATEAU for unrealでCityGMLから3DCGデータに変換すると、データは平面直角座標系として出力されます。Cesiumでは世界測地系に基づくWGS84形式で配信されるため(参考https://www.mlit.go.jp/plateau/learning/tpc03-4/)これらの間において最大数メートルの誤差が出て、PLATEAUデータとCesiumの境界区域で若干のずれが発生します。PLATEAU Windowの目的とは異なりますが、都市を歩いたりドライブするアプリを開発したいなどの場合にはそぐわない可能性があります。

また、Photorealistic 3D Tilesは記事執筆時点(2023年11月)ではプレビュー版であり、リクエスト数制限/帰属情報表示などの各種制約や、提供形態変更などのリスクがあります。しかし現状でも強力なデータ群のため、今後の経緯を見守りながらビジュアル面を補佐補完する優れたツールとして活用したく思っています。

今後のビジュアル面の強化目標

建物内部のビジュアル強化
PLATEAU Windowは窓という装置に立脚したアプリであり、窓の内外――建物の内部と外部は等しく価値を持ちます。屋外表現と同等以上のクオリティを目指し、内装のカスタマイズやシミュレーション機能の拡充のための各種パイプラインを構築しています。

低層~地上部分のビジュアル強化
PLATEAUデータにおいて木や植え込み、信号標識などの都市構造物の提供区域は限られ、地上に近づくにつれてビジュアル面の体験リアリティは低下する傾向にあります。これら構造物は独自に用意したアセットを配置することで補完できるものの、道路データの形状からの自動配置、直接計測したデータの取り込み、AI活用など、様々な効率化・自動化手法の模索もあわせて進めます。

まとめ

以上は、PLATEAUをバックボーンとした高度な都市ビジュアライズを巡る現時点での私たちの考え方です。3D GISデータを巡る環境は激変のさなかにあり、たった半年や一年で制作手法はがらりと変わります。

PLATEAUデータは今後も拡充が予想されるほか、都市データ制作において生成/認識AI活用・プロシージャル制作手法の洗練化や、センシング機器の発達などの条件が出揃い、今後高精細な都市データやライブラリが次々と出現する可能性は非常に高いと考えます。トップシェアを誇るGISプラットフォームであるArcGISの動きも見逃せません。

PLATEAU Windowはそれら最新のデータを活用し、「旬の素材をすぐに活かし最高の形で提供する」アプリとしてありたいと思います。
また、移り変わりが激しい状況であるからこそ、正確さと信頼性があるPLATEAUデータが中心となることには大きな意義があると考えています。

ご質問やご意見があれば、お気軽にコメントしていただけると幸いです。
情報のご提供などもぜひお待ちしています。




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