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眼窩骨折 Reviwe

Management of orbital fractures: challenges and solutions
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4655944/

眼窩骨折の 2015年の Review 論文です. 
Volume がすごいので,頑張ってまとめてみます.

・眼窩 骨折の疫学
男性>女性 20代にピーク
交通事故や喧嘩によるものが多い

・眼窩底骨折 ≒ Blowout Fracture 

・眼窩骨折の分類
①Floor
②Medial Wal
③Lateral wall
④Roof        の4つの区分に分類

・Blowout Fracture の病態生理学
ⅰ ). Bone conduction theory
最も古典的なものであるが,眼窩縁が骨折するほど大きくはない力の場合,外力が眼窩底まで伝播することで骨折が生じるという考え.
ⅱ ). Globe ‐ to - Wall Theory
外力により圧迫された眼球が,眼窩底を直接圧迫することで眼窩底に骨折が生じるという考え
ⅲ ). Hydraulic Mechanism
現時点でもっとも有力な考え.外力により眼窩内に圧排された眼球により,眼窩内圧が亢進し眼窩底に骨折を生じるという考え.

・眼球の障害を伴う眼窩骨折は 29%
・失明を伴う眼窩骨折は 0.7 ~ 10%

・眼科的評価項目はおおまかに Vision, Motility, Vision field

・眼窩骨折の所見
proptosis(眼球突出),enophthalmos(眼球陥凹),ecchymosis(斑状出血),chemosis(結膜浮腫),V2 hypesthesia,結膜下出血
上記所見を認めた場合は,眼球や眼球周囲の障害の程度を画像検査などで評価した後,眼球運動障害などの精査を行うべきである.

・全周性の眼球結膜下の出血・瞳孔の不整・前房の平坦化は眼球破裂のSign.

・眼球破裂が否定された後に重要な検査は眼圧検査になる.
 眼窩浮腫による眼窩内圧の上昇や球後出血に伴う眼圧の上昇が生じる.
 外傷性の眼圧上昇による眼神経障害は眼窩底骨折の3%.
 40mmHg以下では内服,以上では減圧術が考慮される.

※球後出血 Retrobulbar hemorrhage
Eye wiki 

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・Commontio retinae:網膜振盪 は眼窩骨折で高率(22%)に合併する
眼球の外傷で最も発生頻度が高く,網膜周辺部に起こりやすい.網膜中心部で発生すると視力障害などの症状が出ることがある.

・小児患者においては外眼筋の機能評価は特に重要となる.
 いわゆる ” white eye syndrome " という状態を生じやすいためである.

The white-eyed blowout fracture in the child: beware of distractions
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3813689/

14歳男性,サッカー中に膝が左目にあたった.視力は問題なし.頭部経過観察のため入院となった.
受傷後24時間で眼球運動機能の低下・複視の増悪を認め,Head CT 検査施行.下直筋の絞扼を伴う眼窩底骨折を認めた.
受傷60時間後に眼球運動機能精査を行い,上方向は不動,下方向は強い制限,横方向はやや制限がある状態であった.
複視に伴う嘔気の出現のため開眼せず,発見が遅れた可能性はある.
術後1ヶ月で運動機能障害は大幅に改善したが,一部症状は遷延している.

・white eye syndrome  は 18歳以下で生じやすいとされる.
若年者の骨はElasticな状態にあり,Green stick fracture : 若木骨折 が発生しやすいことによる.
一旦骨折した骨折片が元の位置に戻る際に周辺の組織を巻き込み嵌頓させてしまう状態である trapdoor - type fracture を生じる.

・眼窩周囲の外傷でCT検査を施行した場合12%に顔面骨骨折を認めた報告がある

・Blow out fracture を同定し眼科的な緊急時の精査を終えた後に重要となるのは,avoid blowing their nose:鼻をかむことを禁止することです.

全身麻酔の手術の際は呼吸機能検査としてスパイロメトリーを使用する病院もあると思われますが,努力性肺活量測定は施行しないほうがいいかもしれません.

・周術期の抗生剤に関しては,有意差があるものは術中に使用する抗生剤のみとなり,術前・術後の抗生剤は不要.しかし既往症として副鼻腔炎を有する患者に関しては眼窩内細菌感染の risk 上昇の可能性がある.

・多くの眼窩骨折において,眼球陥凹や複視,眼球運動障害を生じない事が多い.しかし経過観察後に症状が生じる可能性はある.そのため手術を施行するかどうかを決めるには,臨床所見・画像所見・手術の有無による  risk and benefit から判断することになる.

・Ocular cardiac reflex:眼球心臓反射 は外眼筋の絞扼を伴う眼窩底骨折で起こることがある.

・下直筋など周辺組織の絞扼を伴う眼窩底骨折,明らかな enophthalmos:眼球陥凹 を認める場合は早期に手術加療を行うことが推奨され,また複視を改善することができる.

・術後の複視に関しては,外眼筋の虚血性変化や線維化・神経障害に伴う機能障害により生じると示唆される.

・受傷早期は眼窩内の腫脹によりほとんどの患者で一定の眼球運動障害を認めるため,筋の絞扼があるかを診断することは難しい.
そのため,Forced duction test:牽引試験が有用である.

・多くの眼窩骨折は緊急性がないと判断された後,手術加療が必要となってもまずは経過観察となる.それは受傷に伴う腫脹を軽減することで術中良好な視野を得るためである.

・手術を考慮するポイントとしては
a) 2mm以上の enophthalmos
b) 眼球運動障害
c) 安静時・読書時の複視の遷延
d) CTで外眼筋の絞扼,眼窩底の50%以上の骨折,
e) V2感覚障害
f) FDTでの異常所見
が挙げられる.

・enophthlamos は 3~4mm 程度から目立つ(noticeable).
眼窩内の容量で 5% (1cm3) でこれに相当する.
容量だけでははく,骨折部位も重要となり,40% の medial wall fracture で enopthlamos を生じる.また medial wall と orbital floor の境界部分では enophthalmos と慢性的な複視を生じる傾向にある.

・骨欠損面積(size)と軟部組織の逸脱量(volume)の相関では,size < volume の場合術後の結果が良かったとの報告がある.

・眼窩内容物の逸脱はCTは上で下直筋の形態的変化として反映される.
下直筋の円形化( heigth to width ratio ≧ 1 ) が術後の enophthalmos と関連あることが判明した.

・手術時期の決定は,緊急性がない症例においては受傷後2週間で行うことが推奨される.浮腫が軽減されれば,術中の視野が改善されるが,受傷から時間が経つことで眼窩周囲組織の線維化により慢性的な複視のリスクになる.

・CTで眼窩内組織の絞扼を認める場合は48時間以内,ASAPの手術が望まれる.

・術式としては,睫毛下切開・眼瞼下切開・経結膜切開アプローチが挙げられる.
睫毛下切開は最も高率で Ectropion:外反の合併症のリスクが有り,約 12.9% で生じることがある.
眼瞼下切開は ectropion のリスクは少なく,適切な切開線を用いた場合,傷跡が目立つ可能性は少ない (1 ~3%) .
経結膜切開では,傷跡が見えない・合併症のリスクが少ない ( 1% 以下) ために最も用いられることの多い手技である.

・眼窩内操作で眼窩下神経を同定した場合は,神経周囲の組織は眼窩内に整復し,上顎洞粘膜組織や遊離骨片は剥離しておく.

・眼窩底骨折部は全周性が同定できるまで剥離する.インプラントは骨折部より極端に大きくしないようにする.インプラントを挿入することで眼球運動・眼球位置に影響があるため.

・術後はプレート位置の確認のため,早期にCT検査を行うことが望ましい.

・術中CT撮影はインプラントの位置決定において非常に有用となる.この場合はチタン等のX線不透過性インプラントを使用することになる.

・術後意識状態の改善後,病棟へ帰室するまえに視力の確認を行う.
頭部挙上・冷却することで術後浮腫を軽減することができる.
Nose blowing・Heavy lifting は避ける.

・小児においては前述の通り早期に手術を検討することが望ましい.治癒過程が早いために,線維化や筋の短縮が受傷後数日で生じる可能性がある.しかし,成人と同様に眼窩内容物の嵌頓や enophthalmos 等の症状がなければ手術をせずに経過観察となることが大半である.
単純な眼窩底骨折であれば遅発性に enophthalmos を生じることは少ない.
小児において顔面骨の成長を考慮すると手術加療はリスクがないとは言えない.特に固定性の高いプレートの使用は眼窩・頬部の成長を妨げ,顎部の低形成を引き起こす恐れがある.
7歳以下の場合は自家骨移植を行うか,吸収性プレートの使用が望ましい.

・diplopia:複視,enophthalmos:眼球陥凹,ectropion:眼瞼外反 は眼窩底骨折においてよく目にする周術期合併症である.もっとも恐れられる周術期の失明の合併症は 0.4% 以下.いずれの合併症もほとんどは術後の眼窩内出血との関連がある.
術後の一過性の複視が見られることは一般的であるが,数週間で改善することが多いと言われる.しかし複視が改善しないケースも 8~42% で見られる.インプラントによる眼窩内組織の絞扼が起こっている場合は,複視の改善は見込めず,術中のFDTが必要となる.
インプラントの位置に問題がない場合では,外傷性の筋損傷,線維化,神経障害が複視の原因となる.
術後の複視は高齢患者において手術待機期間との関連が報告されている.
術後の enophthalmos は 7~27% であり,脂肪組織の萎縮が原因と考えられるが,それもほとんどは不十分な眼窩の再建によるものである.幸運にもこの場合は初回手術から3ヶ月ほど後に再度インプラント留置を行うことで改善することができる.
























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