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Interlock SutureとModified Kessler-loop lock Flexor Tendon suture の生体力学的分析

A Biomechanical Analysis of the Interlock Suture and a Modified Kessler-Loop Lock Flexor Tendon Suture
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5629735/

屈筋腱縫合において様々な腱縫合が報告されているが,今回の論文はSingle knot sutureの中で以下の縫合を比較するものです.
① A:conventional modified Kessler (MK)
② B:interlock suture (IS)
③ C:modified  single-knot Kessler-loop suture (MKL)

①~③の縫合の生体力学的を比較します.

スクリーンショット 2020-04-22 15.01.02

比較のポイントは
①縫合にかかる時間
②2mmのGapを生じるまでの負荷
③縫合部の破綻を生じる時点での負荷
④破綻を生じた際のGap
で評価を行います.

伸筋腱の縫合方法はさまざまなものが報告されているますが,どのような縫合を行うかは腱の治癒・癒合や術後の運動機能を大きく左右します.

理想的な腱縫合は
 手技が簡便であること
 十分な腱の張力(30N以上の張力)を得ること
 腱の血流に対して影響が少ないこと
 確実な縫合であること(secure Knots)
 腱の接着部がSmoothであること
                          が挙げられます.

単純な腱縫合であり,かつ力学的に強固であることで,腱縫合に関する合併症を減らすことができるということです.

各縫合の特徴を確認する
① A:conventional modified Kessler (MK)
広く臨床で利用されている縫合方式
② B:interlock suture (IS)
interlockの為にGap形成を生じにくく,力学的強度が高い
interlock sutureの派生を含め手技が複雑であり,手術時間が長くなるため臨床で利用されにくい.
③ C:modified  single-knot Kessler-loop suture (MKL)
conventional と比較して力学的に強固になっている


一般的に腱縫合において縫合様式を問わず,腱断端に何本縫合糸が通るか (longitudinal componentの数) が力学的に重要である

今回の論文では core suture は 4-0 ナイロン,腱周囲の縫合は 6-0 ナイロンを使用しています.腱断端両側10‐12mmの間で腱周囲の縫合を施行しています.術者はいずれも同一者で,縫合後生食ガーゼに浸し4℃で一晩保管し,翌日力学的テストを行ってます.
腱を両側から牽引し2mmのGapを生じた際の負荷,負荷量の最大値を計測します.

そもそもなぜこの論文では2mmGapを項目として上げているのでしょうか.
2mm Gap load is an important index for evaluating resistance strength after tendon repair.
During tendon healing, the formation of a gap of 2mm or more increase the risks of tendon adhesion and impacts tendon healing.


→2mmもしくはそれ以上のGapの形成は腱の癒合・治癒遅延のRiskとなることがわかっているんですね.


結果

2mm Gap Load
MK に対して IS・MKL は 2mm Gap Load が改善した.
IS と MKL では有意な差は認めなかった.

Ultimate Failure Load
Ultimate Failure Load は腱縫合の力学的強度を測る上で 2mm Gap Load と全く別の指標となるはずだが,2mm Gap Loadと同様に MK に対して IS・MKL は良い成績であり,IS と MKL でも有意な差は認めなかった.

Failure Profile
IS ではinterlockの部分で縫合糸の切断が多く,MK, MKLと比較してISでは縫合糸の破綻が原因として多かった.MK, MKL ではKnot部での破綻やpullout が原因として挙げられた.

Time Required for the 3Suture Techniques
MK  が最も短時間で施行でき (平均11min) ,IS (15.4min) と MKL (14.2min) では大きな差は見られなかった.


今回の3つの縫合方法の様に腱縫合は,
a : grasping loops suture
b : locking loops suture    の2つに大別される.
後者は,腱断端を強く引き合わせることができるため,Gap形成に対して力学的に有利であるが,縫合糸交差部での縫合糸の切断のリスクが有る.


grasping loop-locking loop combination can maximize the advantages of both suture techniques and  dramatically improve the biomechanical properties and achieved in tendon repair

grasping loop と locking loop を組み合わせることでより強固な腱縫合が可能となるとの論文もあります.

ここで紹介されている IS はちょうど grasping loop と locking loop を組み合わせた縫合である.交差部にかかる張力や縫合時間を加味して熟練した術者は選択すべきである.





















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