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眼瞼周囲の再建に関して

Unit原理に基づいた小範囲顔面皮膚・軟部組織欠損の再建
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsswc/3/2/3_2_41/_article/-char/ja/

まずは顔面手術における基本的な考えである Unit についてです.

Unit 

Lateral orbital flap を紹介した際に,欠損部と皮膚の性質が似ている部分の皮膚を使用し再建を行いましたが,顔面には Unit という考えがあります.
顔面では欠損の被覆のみではなく,色調や質感の連続性を有する形態の再現が必要となり,esthetic mind を踏まえた unit 原理というものがあります.

前額部と尾部の unit を示します.

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※形成外科ADVANCE Ⅱ‐6 東京:克誠堂出版;2009. 27-35 より引用

この場合は同区域内の unit を使用し再建の手術を行うことが望ましいと思われます.また腫瘍などの病変が unit を超えて存在する場合は慎重に術式を選択する必要があるということになります.

今回は眼瞼周囲の unit に関して焦点を当てていきます.

眼瞼周囲は5つの unit に区分されます.

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zone1 は上眼瞼,zone 2 は下眼瞼,zone 3 は内眼角周囲,zone 4 は外眼角周囲,zone 5 は zone 1~4 には当てはまらないが,隣接している部分となります.

zone 1 ・ 2 では眼瞼幅に対して 皮膚欠損が 1/4 までであれば単純縫縮が可能となります.
それ以上の欠損となった場合では,皮弁や植皮での再建が必要となりますが,可動性の良好である上眼瞼と,可動性の少ない下眼瞼では推奨される術式が変わってきます.  

zone 1 :Y-V形成,V-Y advancement flap,伸展皮弁,眼瞼皮弁,外側眼窩皮弁,Mustardeの交差皮弁,健側上眼瞼からの全層植皮

zone 2 :Cheek rotation advancement flap,V-Y advancement flap,皮下茎頬部皮弁,外側眼窩皮弁,Nasolabial flap,患側上眼瞼からの転移皮弁,健側上眼瞼からの全層植皮

zone 3 :上眼瞼からの眼輪筋皮弁,眉間皮弁+Rintala皮弁

zone 4 :V-Y advancement flap,Cheek rotation advancement flap

zone 5 :各 zone を配慮した局所皮弁

zone 1 ・zone 2 に対する皮弁に関して紹介します.
※以下は PEPARS No6:16-25, 2005 より引用しています.

Zone 1 上眼瞼
上眼瞼は開瞼閉瞼運動を担うため,再建した眼瞼がこの機能を完全に全うする必要がある.
再建条件
a;前葉再建をする皮膚が十分薄く柔軟性を有すること
※眼瞼であるため前葉は皮膚側,後葉は眼球と接する結膜である粘膜側を意味する
b;上眼瞼挙筋腱膜を温存できないときは,眼瞼下垂手術に準じて残存挙筋腱膜を前転させ,腱板に準じる組織に固定する.
※眼瞼下垂術に関しては関心も高いと思われますので今後まとめます.
c;全層欠損(前葉+後葉)で単純縫縮できない場合は前葉と後葉を別々に再建せずに one unit として下眼瞼を使用する方法がある.
d;texture and color match の点から局所皮弁が良い.
※皮弁の分類に関してです.:局所皮弁は皮膚茎からのびまん性の血行に頼る乱走皮弁(random pattern flap)であり,その血行は軸走皮弁(axial pattern flap)より劣るが,手術手技が容易なために有用性が高い

以上から以下の方法が挙げられる

zone 1 :Y-V形成,V-Y advancement flap,伸展皮弁,眼瞼皮弁,外側眼窩皮弁,Mustardeの交差皮弁,健側上眼瞼からの全層植皮

① Y-V形成
上眼瞼においてはYの水平切開を重瞼線上に行うことで瘢痕が目立たなくなる.眼輪筋下に前葉を広く剥離することによりドッグイヤー形成を少なくすることができる.Z形成と組み合わせることで斜めの皮切をより目立たなくすることができる.

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② Advancement flap
内側の皮膚欠損の再建にそれより外側の前葉を伸展皮弁として利用する.重瞼線と前頭眼瞼溝や尾毛直下に皮切を行うと手術瘢痕は目立ちにくくなる.皮膚欠損の内側限界は前頭眼瞼溝の最内側縁までとする.

③眼瞼皮弁
この場合は,subcutaneous pedicle cheek flap のことで,眼輪筋を皮下茎とした皮下茎眼瞼皮弁を指す.皮弁採皮部の縫縮による兎眼を予防するために皮弁は外眼角を超えて外方まで延長する必要がある.皮下茎は内側にすること皮弁の内方への移動が容易である.
※皮下茎の位置は実臨床で悩むところであるので成書で確認できてよかったところです.

外側眼窩皮弁(lateral orbital flap)
上眼瞼の再建においても有用.ピボットポイントを外眼角上方でかつ外側1cm付近にとる.眼瞼皮膚は皮下脂肪組織を殆ど含まないため皮弁の皮下脂肪はできるだけつけないようにする.

⑤単純縫縮
皮膚欠損が眼瞼幅の 1/4 以下であれば縫縮術を選択できる.しかし全層欠損が眼瞼に対し直角に近い角度で存在する場合や少腫瘤の全層切除を行うとき,温存瞼縁に対して 85~90° の角度で切開を行う.90° 以上にすると縫合点がノッチ形成してしまう.これは下眼瞼においても同様である.

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Mustarde の交差皮弁法
詳細は別の記事記載します.リンクを貼っておきます.
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Zone 2 下眼瞼
欠損の大きさ,位置,形態によって方法を選択する.
欠損が横方向に長く,縦方向に比較的短いものは外側眼窩皮弁が良い適応となる.後葉再建に粘膜遊離移植を必要とする場合は前葉の指示性の点で外側眼窩皮弁より皮下茎頬部皮弁が優れている.下眼瞼溝のくぼみを忠実に再建するためには皮膚の薄い外側眼窩皮弁が適している.縦方向に 3cm 以上の欠損を認める場合は Cheek rotation advancement flap が適応となる.
後葉再建では硬口蓋粘膜を使用する.

① Cheek rotation advancement flap
外眼角から外上方に皮切を入れもみあげの前方から耳前部へと無毛部に皮切を加える.ポイントは外眼角外方の皮弁に十分の高さを含まないと皮弁移動時,再建下眼瞼に兎眼を生じる.厚さはSMASのレベルで剥離を行う.
この皮弁のメリットは兎眼のリスクが低いこと,広範囲の欠損を被覆できることである.
デメリットは広い瘢痕の形成を伴うことと,内眼角部から耳前部にかけ,緊張のある平面が形成されるためガイガン各部が前方に浮き上がってしまうことである.これらの欠点を修正するため,Z形成術と外眼角での骨膜あるいは外眼角靱帯への皮弁の固定を行うことがある.

外側眼窩皮弁(lateral orbital flap)
下眼瞼においてはピボットポイントを外眼角下方に位置させることになる.

③皮下茎頬部皮弁
外眼角の外下方で長軸が皺の方向に一致する様にデザイン(顔面のRSTLを参照)し,外側眼窩皮弁を下内方に約45°回転させた位置にデザインする.
皮下茎頬部皮弁であるため,内方に皮下茎を作成し,皮下組織をできる限り切除することで眼瞼に適合した皮弁が作成できる. texture and color match は lateral orbital flap に劣るが移動の容易さはこれに優る

④硬口蓋粘膜移植 (後葉再建)
硬口蓋正中より後葉欠損部よりやや大きめの硬口蓋粘膜を採取し,前葉再建の皮弁の裏打ちにする.
前葉の皮弁が薄く支持性が弱い場合は骨膜を含めた骨粘膜複合移植とする.硬口蓋粘膜は厚みがあるため支持性があり,通常は骨膜を含まないで使用する.瞼縁では約 1.5mm 外方にのぞくように植皮して拘縮による内反を予防する.採取部は放置しておくが,2週間程度で周囲から上皮化する.

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