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見て・聴いて・ 想う ”少しふしぎな” 実験室 -八木良太展 サイエンス/フィクション @神奈川県民ホールギャラリー


遅ればせながら、2015年 初noteです。今年もよろしくお願いします。

2015年の最初にまずご紹介したいと思ったのは

八木良太展「サイエンス / フィクション」 @神奈川県民ホールギャラリー

この展覧会に行ってみたいなと思ったのは、この↓一枚のシンプルなチラシ。

セミが…イヤホンに止まっている?

この組み合わせは一体…? よくわからないけどすごく気になる!!

そうして足を踏み入れた会場は、そんな少しふしぎな組み合わせの作品でいっぱいの、まるで”実験室”のような空間でした。

■ 耳と眼で感じ、頭のなかで作品がつくりあげられる ”知覚の実験室”。

この展覧会で行われていたひとつめの ”実験” は、

”普段あまり意識しない音を意識してみたり、
よく見えないものや本当はそこにないものを意識して見てみたら、
何が見えてくるのかな?”

ということ。

会場に入ってはじめの展示「Timer」は、台に乗った砂時計の砂が落ちる音が、増幅されてヘッドホンから聞こえてくるもの。

「チリチリ…」というとても小さな音に耳をすませていると、

あ、自分は今ここで、この砂が落ちる時間を使って「聴く」ということをしているんだ、
なんて、普段全く意識しない「聴く」という行動がすごく特別なものに思えてきます。


そして、はじめに書いたイヤホンにセミの脱け殻が止まった作品「Cicada」。

これはイヤホンの先にポータブルオーディオがつけられ、イヤホンからいろんなセミの鳴き声が流れるものでした。

抜けがらがあるだけで中身のセミはそこにいないけれど、カラを抜けてどんなセミがどこにいったのか?なんて ”その場にいないもの” に意識が向かっていきます。


■ 組み合わせから新しい発見が生まれる  ”物質の実験室”。

もうひとつの「実験」は、

”身近なものが、普通と違う使われ方をしていたら、どんな発見があるんだろう?”

ということ。

例えば、「Sound Sphare」は、カセットテープが巻き付けられた球体が転がりながら「音」が再生されたり、
同じく磁気テープを球体に巻き付けた「Video Sphare」では、本来再生されないはずの「色」が再生される作品。

もともとは、リニアに繋がったひとつの音楽だったものが、始まりも終わりもない断片的な音やに変わったり、聴覚が視覚に変わっていったりするのがとても不思議な感覚です。

(たこ焼きを音楽に変えてしまうなんていう展示も!
たこ焼きが作り出す音楽のライヴなんて、気になります…)


■ ぜひ 作品を ”体験” してほしい展覧会。

そんな「サイエンス/フィクション」展について、八木さんは

 科学には何かを信じさせる力があって、それによってフィクションすらも成立する状況が面白いと思ったからで。
科学の世界では、(中略)フィクションや嘘は絶対に許されないような状況ですけど、美術であれば大げさな嘘もOKだし、まだできることもあるような気がしています。
CINRA.net 「「音」を使う現代美術家・八木良太の音楽的ルーツを探る旅」より)

と述べています。
身近なものをつかって、フィクションのような普段見えない世界・気づかなかった世界を目の前に見せてくれる、そんなとても面白い展覧会でした。

そんな世界にすんなりと導いてくれる展示の構成も素敵でした。
(企画は2015年のヴェネツィア・ビエンナーレ日本館のキュレーターを務める中野仁詞さん。)

1月17日までと残り会期も短いですが、ぜひそんな「サイエンス/フィクション」の世界に実際にふれてみて欲しいなと思います。

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■DATA■

八木良太展 サイエンス / フィクション

会期:2014年12月21日(日)– 2015年1月17日(土) 10:00 – 18:00

会場:神奈川県民ホールギャラリー (access)

入場料: 一般700円 / 学生・65歳以上500円 / 高校生以下無料
* 障がい者手帳をお持ちの方とその付き添いの方1名は無料
* 10名以上の団体は100円引き

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▼オマケ▼

今回「音」に関する作品が多かったのですが、最近行ったなかで「音」が記憶に残ったものが2つ。

大友良英 音楽と美術のあいだ (2014.11.22-2015.2.22) @ICC

ダムタイプ 「Trace/React」 (新たな系譜学をもとめて‐ 跳躍/痕跡/身体 @東京都現代美術館 での展示作品)

どちらも、”音にふれる場所や瞬間によって全くちがう音楽となる”作品で、
音楽が「瞬間」の芸術なんだということを感じさせる作品でした。

そんな作品や、今回の八木良太さんの作品のことを考えていたら、ふと、普段は気にしたことがない駅の階段の足音に耳を傾けてみようかな、と思いました。
人によってちがったリズムとちがった高さの靴音が重なり、瞬間ごとに違った音が耳に入ってきて、”あ、いつもこんな風に移り変わっている音を、まったく気にしていなかったんだなぁ” なんて少しびっくりしました。

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1月12日(月・祝) には、トーク・セッションも開催されるそうなので、こちらも参加してみたいなと思っています。

 ​八木良太展「サイエンス / フィクション」トーク・セッション
物の理(もののことわり) 八木良太の場合

2015年1月12日(月・祝)14:00 -
出演:畠中実(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]主任学芸員)、金子智太郎(東京藝術大学/本展図録ゲスト執筆)、八木良太、中野仁詞(本展企画構成)
会場:神奈川県民ホールギャラリー
*展覧会チケットでご覧いただけます。予約不要

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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