山寺 後藤美術館コレクション展-バルビゾンへの道-~コロー、ミレー、クールベなど~
◼︎「ミュージアム案内」京都編です。
突然の京都出張。
せっかく京都まで来たのだし、どこかに仕事後でも開いている美術館はないかな?と思ったら、なんと駅ビルの中にあるんですね!
しかも 20時まで開館!
現在は『山寺後藤美術館コレクション展 「バルビゾンへの道」』を開催中。
(昨年、「Bunkamura」で開催された展覧会の巡回展のようです。)
伊勢丹の中の美術館なのでそれほど広くはないのかな?なんて思ってたんですが、広さはBunkamuraの約半分と百貨店内とは思えない広さ!
ちなみに、広さは約半分ですが入館料もBunkamuraの約半額。しかもSuica・ICOCAなどのICカードで支払えば団体料金で入館できるという良心価格にびっくりでした。
◼︎バロックからロココ、バルビゾン派まで、17世紀から19世紀のヨーロッパ絵画を展示。
今回は、山形にある「山寺 後藤美術館」のコレクション、約60展の展示です。タイトルに「バルビゾン」「ミロー、コロー、クールベ」とありますが、タイトルの「バルビゾンへの道」のとおり、そこに至るまでの絵画の変遷がメインになります。
①ルネサンス絵画の延長の16-17世紀のバロック絵画を中心とする「神話・聖書・文学」
②18-19世紀の華やかな注文肖像画を中心とした「美しさと威厳」
③19世紀に特にオランダで発展した「静物-見つめる」
そして
④クールベら、バルビゾン派の画家に焦点を当てた「風景と日々の営み」
の大きな構成からなります。
①「神話・文学・絵画」では、宗教改革でカトリックの国家となり、「宗教画」の盛上りを見せたイタリア・スペイン・フランスでの絵画を中心に。
会場に入るとすぐ、17世紀中後期スペインのバロック派の巨匠 バルトロメ・エスチバン・ムリーリョの「悲しみの聖母」が目を引きます。
19世紀のジャン・ジャック・エンネルの「荒地のマグダラのマリア」では、血の通った感じの柔らかな肌の裸婦がシンプルな背景の中に描かれていています。ほとんど宗教らしさを感じさせず、裸婦自体が絵の主役であるのに、「マグダラのマリア」とすることでOKとなってしまうのが不思議ですね。
②「美しさと威厳」では、華やかで派手なファッション・装飾が細かく描きこまれた絵がずらりと並びます。そんな中、ジャン・エヴァレット・ミレイの「クラリッサ」は背景や衣服が多くは描きこれず、同時代の絵の中で印象的でした。
③「静物-見つめる」は静物画。(こちらは後ほど「オマケ」で詳しく書きたいなと思いますが)19 世紀のオランダやベルギーで発達したそうですが、これは宗教改革によってオランダが”偶像崇拝”を禁止するプロテスタントの国になったからだそうで。もともと宗教画が担っていた「意味」(教訓など)を静物に置き換えて表現していたそうです。
特に、魚はキリスト教徒を象徴するモチーフなのだそうで。そのように見てみると、少し見え方が変わりますね。
そして、④「風景と日々の営み」。
19世紀半ばのフランスでは、産業の変化による都市の環境変化や人口増加に伴って、田園へのノスタルジーから田園・農村風景の風景画が好まれたそうです。(なんだかこれって現代でもあまり変わらないようで面白いですね。)
この時代にフランスのフォンテーヌブローの森、バルビゾン村などに移住し、理想的な風景ではなく自然に即した風景画・農村風景を目指したのが「バルビゾン派」です。今回の展覧会のポスターになっているジャン=バティスト・カミーユ・コローの晩年の作品、「サン=ニコラ=レ=ザラスの川辺」シャルル=エミール・ジャックの「月夜の羊飼い」など。
キャンバスを外に持ち出し、作品の中の光の表現もタッチも豊かになって行き、印象派に向かって行くような様子が見られます。そして最後に大きく目に入ってくるのが、ギュスターヴ・クールベの「波」。ダイナミックなタッチの波と雲、そして光の表現に、新たな絵画の時代の始まりを感じさせます。
(今回購入したポストカードです。会場で見たのと印象が大分違います…)
200年ほどの作品を一気に振り返っているので、様々なジャンル・表現が入り交じった展覧会でした。
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◼︎DATA◼︎
山寺 後藤美術館コレクション展-バルビゾンへの道-~コロー、ミレー、クールベなど~
■日時: 6月27日(金)~7月27日(日)[会期中無休]
■開館時間:午前10時-午後8時(入館締切:午後7時30分)
■入館料:一般 800円(600円)、高・大学生 600円(400円)、小・中学生 400円(200円)
(括弧内は団体価格および、交通系ICカードでの支払いの場合)
■会場:美術館「えき」KYOTO
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▼オマケ▼
今回の展示で面白いと思ったのが「静物画」のコーナーです。
当初、あまり興味がなかったのですが・・・
「静物画」は英語で「still life」=静止した生物、フランス語で「nature morte」=生命のない自然というそうで、
生物画の中に描かれる花や魚、鳥、野菜などは「生きることを停止したもの」、さっきまで生きていたけれどももう生きていないもの、なんですね。
この時代の「静物画」にはさっきまで生きていた魚や鳥がごろごろと横たわっているものが多く、今見ると少し違和感のあるモチーフなんですが、この時代には狩の獲物=食べ物として家の中にあったものなんですね。
今、そんな食材を切り身の状態で買っているのであまり強く感じないですが、そのようなモチーフが 静物=still life であり、「静物」の中に「生きる」ことが描かれているのが非常に興味深い内容でした。
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美術館の外へ出ると、大階段。夜はライトで色々な絵が描き出されていました。
京都駅の上に上ったのは初めてだったんですが、11階まで吹き抜けって、迫力ありますね…!(足がすくみました…)
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