古都・京都で世界の”今”の感覚に触れる -【京都国際現代芸術祭2015】 (2015.3.7〜5.10)

画像1 意外にも京都初の芸術祭;京都国際現代芸術( http://www.parasophia.jp/ )。イラストと写真でレポートさせていただきたいなと思います。
画像2 PARASOPHIA期間に合わせて多くの連携プログラムや、他のギャラリーでも面白そうな展示が同時に開催されています。(◀︎こちらはのちほどまとめたいなと思っています。)例えば、”琳派400年記念”のイベント・展示なども行われていたり。 GWなどを利用して、PARASOPHIA以外の好きな展示を組み合わせて回ってみるもの面白そうです。
画像3 チケットは大人は1day: 1800円、パスポートは6000円。1dayチケットで、有料会場の京都市美術館と京都府京都文化博物館別館に1回ずつ(別日でもOK!)と、フイルムシアターに何度でも入場可能だそうです。
画像4 平安神宮の手前に建つ、京都市美術館。今回の展示のメイン会場です。入り口には、ヨコハマトリエンナーレ2014にも登場した、やなぎみわさんの”移動舞台車”。
画像5 体育館のように大きな無料ゾーン。蔡國強(ツァイ・グオチャン)の「農民ダ・ヴィンチ」が並びます。中国各地の農民たちが身の回りにある素材を使用して作ったロボットや潜水艦などを収集した作品です。中央の塔「パゴダ」には、京都の子どもたちが自由に制作した作品がたくさん飾られています。
画像6 ジャクソン・ポロックを模した、絵を描くロボット。これも中国の農民の手作りで創られたものなのだそうです。ほかにも、イヴ・クライン風のロボットなんていうのも!
画像7 京都市美術館のエントランス。荘厳な雰囲気に圧倒されます。館内は、今は手に入らないと上質の大理石が柱や壁にふんだんに使った、アール・デコ様式なのだそうです。 (参考: 「京の読みもの京都市美術館学芸員 後藤結美子さん」 http://souda-kyoto.jp/knowledge/kyoto_person/vol16_02.html )
画像8 広く歴史を感じる空間を贅沢に使った展示は見応えがありました。私が一番好きだったのは、ダムタイプ・高嶺格さんの「地球の凸凹」。美術館の暗く、ひんやりとした地下空間に響き渡る美しくも徐々に不安をかき立ててくるような音と、地面の凹凸を1部だけ浮き上がらせる光。
画像9 石橋義正さんの映像作品「憧れのボディ/bodhi」は、様々な表現の美しく・ショッキングな短編映像が様々な方法で展示されていて、それをたどりながらある女性の一生を体験していく作品。片目で覗き込むような小さな映像から、映画館のような壮大な映像まで。まるで個展のような見応えある作品でした。
画像10 こちらは、"倉智敬子+高橋悟"の「装飾と犯罪—Sense/Common」。真っ白い空間に、枯山水の庭園のように、距離感を保ちながら石が配置された法廷は、横浜トリエンナーレでの展示での威圧的なイメージ(◀︎こちらは真っ赤な法廷でした。)とは大きくイメージが異なり、証言台に立ちながら、自分の気持ちとの対話を繰り返すような印象でした。
画像11 グシュタヴォ・シュペリジョンの「素晴らしき美術史」。アメリカのグラフ誌『LIFE』の1936年創刊時から20世紀後半の608ページにおよぶ膨大な記念写真集『The Great LIFE Photographers』全ページに落書きをした作品です。パッとみて笑ってしまう写真への落書きや、ウィットに富んだキャプションの追記、そして、本文の一部を書き換えてしまった落書きには皮肉が込められていて考えさせられたり…日本語版も置いてあるので、展示室で是非手に取ってみてください。
画像12 たくさんのカラフルな傘に埋め尽くされたこちらの空間は、ヘフナー/ザックスの「Museum Casino」。他の展覧会の展示に使われていた棚と、美術館のわすれものの傘が一面に展示された部屋。ところどころ開けられた窓からは、美術館の外の緑がよく見えます。なにひとつ、”新しく制作したもの”ではないものに囲まれた部屋です。カラフルな傘にはひとつずつ、忘れられた日・場所などが記されていて、本来なら誰も見返す事のない記憶を確認していく作業が面白い作品です。
画像13 こちらが、京都市美術館の地下室。1933年(昭和8年)に、東京都美術館に次いで日本で2番目の公立美術館として開館したというこちらの美術館。1946年3月29日から1952年4月30日という長い間、アメリカの駐留軍/占領軍によって接収され、兵舎として使用されていたそうです。そんな歴史と、こちらの美術館で行われた戦後の展覧会の様子が見られる資料展時も興味深いものでした。 この歴史を踏まえて製作された田中功起さんの展示が面白かったです。
画像14 会場変わってこちらは「京都府京都文化博物館 別館」。ヨコハマトリエンナーレのアーティスティックディレクターも務められていた森村泰昌さんの作品が二つ展示されています。閉館後のプラド美術館を題材にした「侍女たちは夜に甦る」は、ベラスケスの絵の中と写真の中の美術館を行ったり来たり…最後にはこの展示空間までもその入れ子の中に入ってしまうような、不思議な感覚に陥る作品です。もうひとつの第二次世界大戦時の作品を疎開させたエルミタージュ美術館をテーマにした作品も、自分の鑑賞の仕方を考えさせられるようで面白かったです。
画像15 美術館以外にも、京都の街中で無料で見られる展示がいくつかあります。堀川団地(上長者町棟)の商店街の中にある古い建物の中では、今回のポスターにもなっているピピロッティ・リストの《進化的トレーニング(堀川——不安は消滅する》。浮遊感のある動きと、美しい色にあふれた映像作品が、日本の日常生活の中に投影される…とても不思議な光景でした。
画像16 PARASOPHIAでは、有料ゾーンに入らなくても出展アーティスト全員の紹介が書かれた分厚いパンフレットを全員に配布してくれます!すごい!!展示室に作品についての解説はないので、こちらのパンフレットを頼りに作品を読み解いていきます。(特に海外の映像作品などはバックグラウンドが分からないと内容に踏み込めない作品が多いので、個人的には(…素人的には)もう少し”ヒント”があると嬉しい作品も多かったですが…)
画像17 今回のPARASOPHIAは大きなテーマはないそうなので、はっきりとしたテーマの下にストーリーが構成されていた2014年のヨコハマトリエンナーレ、札幌国際芸術祭と比べると、捉えどころがない不安な感じもありました。 こちらは”京都から現代アートを発信していく”というのが大きな狙いで、準備期間の2年間のうちに参加作家のほとんどを京都に招聘し、その経験から製作された新作が多いそうです。
画像18 ■PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015 会期:2015年3月7日(土)–5月10日(日) 休場日: 月曜日  会場: 京都市美術館、京都府京都文化博物館、京都芸術センター、堀川団地(上長者町棟)、鴨川デルタ(出町柳)、河原町塩小路周辺、大垣書店烏丸三条店 http://www.parasophia.jp/about/

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