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【英語】willは未来形ではない。
英検の指導。
未来の話でもby the time の後の節は現在形になるという頻出問題。
I will finish my job by the time he comes back.
he willcome backとはならない。時制の一致の例外である。
その理由を問われ、「そういうものだ」で済ませるのは不本意なので、改めて考えてみた。
実は、標題の「未来形ではない」は幾分不正確だ(未来形という用語の定義により如何様にもなる)。ここでは、他の印欧語、例えばフランス語に屈折(語尾変化)による未来形が存在する事実と比較し、屈折による未来形が英語に存在しないという意味とする。
尚、英語動詞の屈折は、過去形の-edという語尾変化が相当する。
古英語でも未来は現在形で表現されてきたようだ。
willは古英語のwillan(望む、欲する)に由来し、それは現代ドイツ語のwollenと祖を同じくする。
「望む」といった含意を援用して未来を表現するのは英語に限らない。日本語でも「雨が降るだろう」の「だろう」は推測であり未来を表している。
だろうの語誌
( 1 )「に‐て‐あら‐む」から変化した「で‐あら‐う」が変化した語。室町時代に、「ぢゃらう」「やらう」などの形を派生する一方で、江戸時代後期の江戸語に「だろう」が現われる。
( 2 )「であろう」からの過渡的な形として、「だあろ(う)」と表記された例もみられる。
「にて」→「で」(「に」の鼻母音の後方同化)、「む」→「う」などの音韻変化により現在の「だろう」が成立している(本来は「だらう」と書くべきとは思うが別稿で)。
では、フランス語やポルトガル語等に存在する語尾変化による未来形についてはどうだろうか。フランス語の例はこうだ。
動詞 chanter の直説法単純未来形の活用
je chanterai 私は歌うだろう
tu chanteras きみは歌うだろう
il/elle chantera 彼は歌うだろう
nous chanterons 私たちは歌うだろう
vous chanterez あなた(たち)は歌うだろう
ils/elles chanteront 彼らは歌うだろう
一部改変
語尾変化による未来形が確立されているが、実はこれも元を辿ると、英語のhaveに相当するavoirという動詞が後置されたものに由来するようだ。
上記サイトから引用する。
古典ラテン語で habere(フランス語のavoir) と不定詞の組み合わせの言い回しがあって、「するべき~を持っている」という義務の意味を表していたんだ。それが後の俗ラテン語の時代に「するべき~を持っている」→「これから~をすることになる」という意味も表すようになり、フランス語の未来形につながったみたいなんだよ。
一部抜粋
断言は避けるが、未来形というのはどの言語にも本来存在せず、現在形に推測、希望、義務などの意味を援用して表現することが多いと思われる。
つまり、「I will finish my job by the time he comes back.の後半が時制の一致がなくcomeという現在型になる」という解釈より、「本来現在形であるところ、前半にwillという未確定事象に対する意志が入っている」という解釈の方が説明が容易なのではなかろうか。「彼が帰ってくる」のが意思の介在しない確定事項であることが前提の発話であるから、comesという現在形が相応しいとも言える。
言い換えると、英語の「will + 動詞の原型」は、「未来形を作る決め事」ではなく、未来は原則現在形で表現し、willの本来の意味である「意志」の含意により結果として未来が表現されているということだ。
自己流の解釈である。英語に明るい諸兄に指導をお願いしたい。
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