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発見?:二次方程式の判別式の本質は(ほぼ)相加相乗平均

 今回の話は、

 $${x,y}$$が領域$${x^2+y^2\le 1}$$を動く時の$${(x+y,xy)}$$の領域を示せ。

 というシンプルだが慣れていないと難しいであろう問題を教えていて気付いたものです。今更新しい発見があるとは。

相加相乗平均の証明


 まず、相加相乗平均の証明は次の3行で終わり、ということを確認します。実数$${\alpha,\beta}$$について$${\sqrt{\alpha},\sqrt{\beta}}$$は正で、その差も実数なので二乗したら正。但し$${a=b}$$の時だけゼロになる。

$$
(\sqrt{\alpha}-\sqrt{\beta})^2 \ge0
$$

 展開して整理すると、 

$$
a+b-2\sqrt{\alpha \beta} \ge0\\
\dfrac{\alpha+\beta}{2} \ge\sqrt{\alpha \beta}
$$

 これは無理矢理言い換えると、交差項平方項には勝てない、ということになります。

交差項(cross term)や純粋項(pure term)又は平方項(square term)といった用語は、非常に便利であり数学の本質的な問題であるのに殆ど使われていないようです。後者二つについては確立された用語がありません。これらは別稿で。

「解と係数の関係」からの判別式

 二次方程式$${ax^2+bx+c=0}$$の判別式$${D=b^2-4ac}$$。ここでは本質的な問題ではないので$${a=1}$$として判別式を$${D=b^2-4c}$$とします。

 $${x^2+bx+c=0}$$2解を$${\alpha,\beta}$$とすると、$${(x-\alpha)(x-\beta)=0}$$と等しくなります。展開して係数比較すると

$$
\begin{align*}
x^2+bx+c=0\\
x^2-(\alpha+\beta)bx+\alpha \beta=0\\
\end{align*}
$$

 即ち、

$$
\begin{align*}
b&=-(\alpha+\beta)\\
c&=\alpha \beta
\end{align*}
$$

 これを$${D=b^2-4c}$$に代入します。実数解ありきで判別式を逆算するということです。

$$
\begin{align*}
D=&(\alpha+\beta)^2-4\alpha \beta\\
=&(\alpha-\beta)^2 \ge 0
\end{align*}
$$

 $${D}$$は、解が実数である限り、必ず$${D\ge 0}$$となります。当然と言えば当然ですね。

相加相乗平均は二次方程式の実数解条件?

 さて、上の式を次のように取り出します。

$$
(\alpha+\beta)^2-4\alpha \beta \ge 0\\
$$

 移項して両辺の平方根をとると、

$$
|\alpha+\beta| \ge 2 \sqrt{\alpha \beta}\\
$$

 これは、$${\alpha \ge0,\beta\ge0}$$の範囲であれば、正に相加相乗平均になります。
 まとめると、こういうことです。

  1. 二次方程式の一次の係数($${b}$$)は二つの実数の和$${(\alpha+ \beta)}$$のマイナス

  2. 二次方程式の零次(定数項)の係数($${c}$$)は二つの実数の積

  3. 二次方程式が実数解を持つ条件$${D=b^2-4c \ge0}$$即ち$${D=|b| \ge 2\sqrt{c} }$$は、$${|\alpha+\beta| \ge 2 \sqrt{\alpha \beta}}$$、即ち相加相乗平均と本質的に同じである

 二次方程式の解と係数の関係に2実数の和と積が存在していることにはこれまで気付いていませんでした。
 冒頭の問題を解いていて、「足して$${-b}$$、かけて$${c}$$となる数の組み合わせを見つける」、つまり、中学生が因数分解する際にパズルのように頭を捻らせる例の風習が成立するためには$${b,c}$$はテキトウな数ではダメ、という当たり前のことに気づいた冬の日でした。
 因みに、$${D=b^2-4c \ge0}$$を可視化したものを置いておきます。

αとβの和と積が共に存在する範囲


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