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「ギレンの野望 ジオン独立戦争記」支援記事

本日は病床に伏せる私を長年支えてくれた一本について紹介したい。
そのタイトルは「ギレンの野望 ジオン独立戦争記」である。
「ギレンの野望」とはニッチに思えるかもしれないが、本作は約37万本の売り上げを記録しており(参考までに同時期に発売された「アーマード・コア3」の売り上げが約22万5千本との情報を得ている)、それなりの需要があるタイトルであることが伺える。
「ギレンの野望」シリーズの中でも過小評価されている本タイトルを今日は掘り下げていきたい。
なお、執筆時点での私のプレイ歴は「ジオン独立戦争記」と「ジオンの系譜」の2タイトルである。

・「ギレンの野望」とは?

アニメ「機動戦士ガンダム」の背景世界である宇宙世紀を舞台としたウォー・シミュレーションゲームである。
いわゆる「キャラゲー」でありながらしっかり遊べるシミュレーションとして仕上がっており、一兵卒の視点を追体験するガンダムゲームが多い中で、宇宙世紀の世界を指導者の立場から体験できる点で他の作品と一線を画する。
2011年の「新ギレンの野望」以来新作が途絶えており、今でも新作を望む声は散見される。

・「ジオン独立戦争記」

シリーズ三作目にあたる本作は、「一年戦争」を深く掘り下げることをテーマとしており、前作にあったティターンズやネオジオンの登場などはカットされている。
とは言え、初代「機動戦士ガンダム」以外の世界が完全に切り捨てられているわけではなく、デラーズやガトー、ジャミトフやバスク、ブレックスやヘンケンといった「一年戦争に参加していたはずのキャラクター」はある程度網羅されている。(隠しキャラとしてカミーユやフォウなど若干名のZキャラなども登場する)
本作はゲームシステムが他のシリーズと大幅に違っており、発売当時はどうやらそれが大変不評だった様子。
しかし、私は本作を高く評価している

・何が面白いの?

本作にはストーリーモードである「連邦編」「ジオン編」のほかに、条件を様々に変更してプレイできる「オリジナル編」というモードが存在する。
このモードの最大の魅力は「敵味方の垣根を越えてオリジナルの軍団を作ることができること」ではなく(それも魅力的な要素ではある)、「自軍、及び敵軍の本拠地が変わる」ことである
ストーリーモードは敵拠点の攻略順はほぼ固定されており、実質面クリア型シミュレーションに近い内容であった。
そのため、一度攻略してしまうとそれ以上ゲームに変化は起こらない。
しかし、オリジナル編では敵味方の本拠地が変わり、また敵拠点攻略順にも「本拠地の攻略は最後」という基本ルール以外制約がない。
これにより、効果的な進軍ルートがゲームごとに変わり、またストーリー本編で存在意義の薄かった兵器を活躍させる機会も生まれる。(例えば本編ではジオンはスタート時点から宇宙の大半を制圧していたため、攻略順の問題から言っても中途半端な宇宙専用機にほぼ出番はなかった)
また、先ほど述べた通り配下も本編の所属軍に関わらず選択できるため、ゲームごとに味付けを変えられて長く楽しめる。(シャアとアムロを自軍に入れるとゲーム中で互いに「君が敵じゃなくてほっとした」と言い合うような会話が見られたり、ろくなモビルアーマーの無い連邦でモビルアーマー適性の高かったキャラをジオンで活躍させたりなどできる)
そして、おまけではあるが、登場する144名のキャラクター全員に個別のエンディングが用意されている。
これらの要素によって、ハマれば長く付き合える作品となっている。
また、シリーズの他の作品と比べても予算や進軍について、より計画的な行動が求められる作りになっており、戦略要素が強めの設計になっている。
制圧地域の際でちょこちょこと小規模部隊の小競り合いなどをする必要もないため、じっくり軍団編成や政治外交にうちこめるので内政好きにとってはシリーズでも随一の作品と言えるのではないだろうか。
私はこの方向性で正統進化した新作を遊びたい。

・ここ好き(ここダメ)ジオン独立戦争記

色んな要素をしっかりと整理された文章にまとめるのは莫大な時間とエネルギーを要するので、ジオン独立戦争記について良いところ、悪いところを適当に列挙していきたいと思う。

〇死にキャラが少ない!
「策略ポイント」や階級による配属部隊上限、提案能力などによってキャラクターの存在価値が多角的になり、「本当に存在価値のないキャラクター」がかなり少ない。これはキャラゲーとしてはかなり好ましいことである。
また、当の「本当に存在価値の少ないキャラ」ですら、部下の登用にコスト設定のある「オリジナル編」では大抵「低コストで登用できる(ある程度育てれば多少使えるキャラになる)」ため、完全な無価値ではないところがさらにポイントが高い。

×序章編がチュートリアルとしての役割を果たしていない
このゲームを始めて最初にプレイすることになる序章編だが、ここでは1年戦争の最初の10日間、「一週間戦争」のストーリーが描かれることになる。
それは良いのだが、肝心のチュートリアルが戦闘に終始して、このゲームの肝である「戦略フェイズ」に関する指南、説明が皆無と言っていいほど無い。
ゲームとしては序章編は前作同様ムービーで済まされたとしても何ら変わらない。

〇忠誠度
忠誠度は発売当初かなり不評な要素だったようだが私は評価している。
高級将校が反乱を起こすのに納得のいく理由が目に見えてわかるし、逆にそういった人材を大事に扱うことで歴史を覆して反乱を防いだりもできる。(キシリアやエルランといった人物の裏切りを防げる等)
ジオン編においては史実通りの選択をすると基本的に不利になっていくのだが、そこで史実と違う選択肢を選ぶリスクとして忠誠度を持ち出すのは良いやり方に思える。(ジオンはV作戦に手を出すと数々のキャラクターを戦死させてしまうが、調査決行や補給要請などを断ることでドズルやシャアといったキャラクター達の忠誠度が下がる)
また、自軍キャラクターが撃墜されたら忠誠が下がる。これも良い。
系譜で非常に違和感を感じたのが、前線で特定のパイロットをたびたび使いつぶして何のリスクもない点である。
本作ではキャラクターの乗機が撃墜されるとそのキャラクターの忠誠度が下がるため、扱いにはある程度注意が必要である。
忠誠度を上げ下げする手段にはもっとバリエーションと工夫があっていいだろう。
忠誠度はもっと掘り下げられてよい要素だと思う。

×昇格(降格)について
昇格の要件が厳しすぎる。
それなりに頻繁に使用しているキャラクターでもゲームクリアまでに上昇する階級は1かせいぜい2程度である。
そして、やっとまともな軍団長になるころにはもうクリア目前なのだ。
ブライトなどは軍団長に非常に適した人材であるにもかかわらず、初期階級が「中尉」であるため、ゲーム終盤まで進めてもいいところで少佐どまりであり、その本領を発揮することはない。
昇格はある程度恣意的に行えた方が良い。(資質の問題以外に「忠誠度を上げるための昇格」などもあってよいと考えている)
或いはキャラ相性の良い軍団長のもとに配属すると、もっと大幅に少ない功績値で昇格を推挙してくるなども良いだろう。(それらの功績値に見合わぬ昇格に対して相性の悪いキャラから反対意見が出るのも併せて検討していただきたい)
逆にこのゲームには降格がない。
相応しくない軍団長に対する降格処分も併せてあってよいだろう。(もちろん降格のリスクとして対象の忠誠度は下がるべきである)
いずれにせよ、昇格及び降格はある程度恣意的にできる設定でよいだろう。

〇ガンダムが弱い!
これも大きなプラスである。
見出しは代表して「ガンダム」と書いたが、つまるところ強キャラ、強ユニットが理不尽な高耐久を持たない。(ただし攻撃力は高い)
系譜で一番つまらなかった要素は「強キャラを強ユニットに乗せて適当に配置するだけで敵の進軍ルートを完封できる」ことだった。(しかもこれによって毎ターンのように少数の敵がエリアに侵入し数機のモブを排除する作業をやらされる)
本作では可能な限り「こちらが先手で攻撃を仕掛ける」ための戦術をちゃんと考える必要があり、また、そうして上手に運用することで「低コストなユニット」でも活躍の場ができたり、「強キャラ、強パイロット」も見合った戦果をきちんと挙げてくれる、戦略ゲームとして妥当なバランスになったと思う。

〇小競り合いがない(ロードが早い)
前項でも触れたが、前作系譜では占領地域の境目などで毎ターンのように小競り合いが発生し、数機のザコを狩るために長いロードを、しかも複数エリアに渡って待たされるのが大変苦痛であった。
そこにゲーム的な面白さや駆け引きがあるならまだしも本当にただの作業なのでなおのことやる気を削がれた。
本作にはそれがない。
大変快適に遊べる。

〇部下提案と反対意見
部下が自分の意見を述べてくる。
これが大変良い。
キャラクターに自我があることが表現でき、ゲーム攻略上も重要な役割を持たせることができる。
各種コマンドで部下が「これやりましょうよ!」と提案してくることがある。
これら提案は基本的に通常のコマンドよりコストパフォーマンスが高く、これら提案を効果的に使うことでよりスムーズな攻略が可能となる。
またゴップのような「戦闘能力は皆無だが政治外交に長けたキャラクター」なども存在し、キャラクターの性格や価値を多角的にしている。
そして反対意見。
同じ兵器の過剰な生産や、仲の悪い軍団長の元への配属などに対してネームドキャラクターが反対意見を述べてくることがある。(無視するとその人物の忠誠度が下がる)
この要素、特に兵器生産への反論が発売当初大変不評だったようだが私は高く評価している
初代の「生産制限以上は絶対生産できない」は物理的におかしいし、系譜の「やろうと思えば無限にガンダムばっかり作れる」のも何となく違和感を感じる。
本作の「作れるよ?作れるけど、ガンダムばっかり作ってたら反対意見も出るよ?」というのはリスクとして良い塩梅に思える。
無視して生産し続けることもでき、リスクは課されつつも選択権をプレイヤーに持たせているのも良い。(初代は選択権なし、系譜はリスクなし)
たしかに尉官ですらない者が国の生産計画に口を出してくるのは違和感を感じるのだが、まぁ、別に直談判しに来てるとかではなく、しょっちゅう現場で大声で「どんだけガンダム造る気なんだよもういらねぇだろ!」などと喚いているのであろう。
元々ゲームに完璧なリアルを求めること自体ナンセンスだ。
何とでも脳内補完するといい。
そもそも、ジーンやスレンダーレベルのキャラクターの忠誠が下がることを恐れて必要な兵器の生産を中止する必要などないのだ。無視すればよい。(高級将校ともなれば話は変わってくるが)
あえて言うなら、ザクⅡのような汎用量産機は「制限を少しでも超えたら一斉に大ブーイング」ではなく「最初は相性の悪いパイロットだけが数機ごとに反論し、無視し続けると徐々に反対者が増えてくる」などの仕組みがあっても良かったと思う。
仲の良い軍団員を引き抜こうとすると「仲良しだからやめて!」とか言ってくるのもなかなか可愛げがある。(ただし左遷する)

×「オリジナル編」のポイントが厳しすぎる
本作の目玉であるオリジナル編だが、本編の図鑑登録やクリアした難度によってポイントが得られ、そのポイントを使ってキャラクターを登用する仕組みになっている。
このポイントがあまりに少ない。(部下の上限30人も少ない)
レギュレーション設定はプレイヤーが自主的に行えばいいのであって、編成の最大許容量自体はもっとゆとりをもって設定すべきである。(各シナリオのレギュレーション設定を否定するものではない)
ただし、この問題は「攻略指令書」の「オリジナル編Ver.2」で大幅に改善されている。
初期ランクや階級も変更でき、縛りプレイでもなければVer.1に戻る理由がないくらい部下の編成の自由度が増している。
独戦を100%楽しみ尽くしたいならぜひ攻略指令書も併せて購入することをお勧めする。

×CPUが弱すぎる
今作に限らない話になるが、CPUがあり得ないくらい弱い。
CPUの戦い方はまるででたらめで、「委任」はもはや縛りプレイと言っても良い。
また、敵CPUも「侵攻作戦の際に1ルートしか使わない」「こちらの侵攻に対して防衛作戦や防衛ルート上での待ち伏せなどを一切しない」など、本作の駆け引き、楽しみを引き出せていないと言わざるを得ない。
結局本作の「難易度」は「敵の金と資源があり得ないほど増える」ことでしか調整されていない。

×一部の諜報コマンドが割に合っていない(敵軍の分断について)
敵兵器の奪取と、オリジナル編でのみ使用可能な敵士官への離反工作がある。
はっきり言って役に立たない。
敵兵器の奪取はコストに対して成功率が低すぎ、しかも仮に成功したとして、部下提案で指定兵器を狙うならまだしも通常コマンド(何を奪ってくるかランダム)でトリアーエズでも盗んでこようものなら5ポイントという巨額の予算が水泡に帰す。
そもそも、たった一機のMSを奪ったところで戦局は覆らない。
せめてコスト3ポイントくらいならまだ使い道があった。
次に敵士官離反だが、あまりに効果が薄く、敵が脱走するまで何回も何回も工作を仕掛けねばならず、結果、莫大な予算を投じる羽目になる。
そしてその結果狙いの兵士が脱走したとして、自軍に転がり込んでくるかは運なのだ。(第三勢力に入ったりそのままゲームからいなくなったりもする)
何よりおかしいのは、高級将校の離反。
即ち「反乱軍の立ち上げ」である。
これにより敵勢力を分断し......ではないのだ。
諸葛亮も月までぶっ飛ぶ、どこからともなく謎の部隊が100ほど湧いて新勢力となるのだ。(もちろん、反乱を起こされた当の勢力には一切の損耗がない)
正直、面倒が増える以外の何者でもなく、結局これらの諜報コマンドは何らかの縛りプレイでもなければ使う価値のない代物となっている。
ポイントとしてはこれらコマンドのコストパフォーマンス(効用)を改善することが必要。
そして反乱軍は敵戦力をたとえ半減でなくともある程度削って出現すべきということ。
さらに言うならば、諜報活動に自軍のネームドキャラクターを派遣してそのキャラの能力や性格で、成功率や成果(奪う兵器のタイプや、下げる忠誠度の大きさやその他副次的な効果)などに違いを設定すると面白いだろう。
機体に搭乗しない「諜報専門」の「ミハル」(彼女は軍属ではないのだが、フラウもそもそも民間人非戦闘員なのでアリだと思う)のようなキャラクターが登場するのも面白いかもしれない。
サイクロプス隊や、のちにガンダム奪取作戦を成功させるガトーの諜報能力を高く設定するなども良い。

〇内政好きにおすすめ!予算編成が楽しい!
シリーズにおいて独戦独自の要素として「予算編成」がある。
税率を設定し、さらにその税収の内訳を各部門に適切に割り振ることで軍を運営していくのだ。
先も述べた通り面倒な小競り合いが発生しないこともあって、名実ともに戦略フェイズの比重が大きくなり、政治や外交、軍団編成にじっくりと打ち込むことができるようになった。
そしてそれら全てを円滑に進めるための行動計画が「予算編成」に現れるのである。
この適切な配分と調整が本作の醍醐味の一つでありプレイヤーの個性が現れる点でもあるのだ。
これまでは「戦闘・戦術」の比重の重かったギレンの野望が、この「予算編成」の仕組みによって名実ともに「戦略シミュレーション」となったと私は考えている。

・まとめ

さて、まだまだ語りつくせないが、あまりにも冗長になってしまうため今回はこのあたりで締めくくろうと思う。
本作は初代や、系譜と違って後継作が出ていない。(初代の後継作は「新ギレンの野望」、系譜の後継作は「アクシズの脅威(V)」)
ここまで述べてきたように、「ジオン独立戦争記」は他のシリーズにはない独自の魅力をいくつも持ち、そしてそれらはまだ十分に掘り下げられていないのだ。
このシリーズ最高傑作となり得る未完の大器を、是非とも完成させていただきたい。
私のこのちっぽけな記事が、シリーズ復活の一助になれば全く幸いである。
以上、本稿を終了。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

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