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海から陸を見る いいえ海から海を見る海から空を見上げて 見える景色があるから

#一歩踏みだした先に
鎌倉の旧市内に生まれ育った。なぜ旧市街と呼ぶかと言えば、近年、大船、深沢、稲村、腰越、西鎌倉、あたりの地の人ならいいけれど、縁もゆかりもなく、あの辺に家をお買い求めになり、「うちは鎌倉海街なんですよ・・」みたいな人があまりに多いので、勝手に旧市内と名付けた次第。

それこそ、映画の世界ならば、#海街 そう海街生まれの 海町育ち といっても、別段裕福でもない。親がヨットやモーターボートを所有しているわけでもなければ、極端な話で言えば漁師でもない 海街に生まれ 海街に育ち 海は身近にあるけれど、水中は身近で波打ち際は遊び場で、釣りして、泳いで、潜って、波乗のって それは出来ても、船は無い、ボートが無い、だからこそ憧れた・・ そんな子供時代だった。
ある日、近所の悪ガキどもと船を造ろうとした。
小学生の子供のお遊びだった、設計図なんて言えるものはかけず、でも何を作りたいかを #らくがき  にして、意見を言い合った。そして、形がまとまると、廃材をあつめ、船づくりに取り掛かったんだ、お寺の境内でね。
蚊に刺される季節を外し、蚊に刺させる季節には海に浮かべることを夢見ながら。推力はオールと帆を想定した。
結局、試行錯誤の結果、時間も一月以上もかけて船は感性ぜず、最後は、このいかだもどきの処分に困ったのを覚えている。中学生になるころ、僕らは知人のご厚意で、FRP製のボートを手に入れた。舩つくりの頃とはメンバーも変わっていたけれど、僕らは海に浮かぶ小さな小さな船を手に入れたんだ。イメージで言うならば、公園に浮かべる手漕ぎボートそのものだ、日焼けした船体は、半場粉を吹いたもので、およそ、薄汚い廃艇のように見えたけれど、それでも僕らには、立派な船だった。
厳密に言うと、定員は4名というこのボート、公園のボートと和船の中間の様なつくりで、船尾(トランサム)には船外機用のマウントがある、かなり大型ではあるけれど、はた目には公園の池のあれあれだ。
今にして考えれば、よくも、こんな危険な冒険を親たちは許したものだ。内海の鎌倉のとはいえ、なめたらいけない。無知なのか、なんなのか、僕らは海に出た。冒険、無謀、遭難必至、そんなことは誰一人考えてはいなかったけれど、海のシーズンなら、こんなものを出したら、監視員がすっ飛んでくるかもしれないが、出した場所も海水浴場のエリアからは100m離れていて、夏とはいえ、海開き前であったこと、さらに、この場所には定置網もあり、漁師が居るエリアであること、からか黙殺された。まあ、時間は漁師が居るそれともずれていた、だから、危険だと一目で解る人はおらず、普通の人の目には、まさか子供たちの無謀な船出には見えなかったのだろう。

とはいえ、いよいよ僕らは文字通り漕ぎ出した。乗ったのは4人、僕、モッチと野球部のジョー君、そしてお勉強まるでダメな大根君と薬局の息子である吉田君だった。でもまあ、こういう時には、日ごろは勉強もできずパッとしない奴に限って頼りになるもの健二君は釣りと魚が何より好きな子供だった。彼が僕らを引っ張りだしたのはボートを海に入れる時だった。
「頭を波にむけてゆっくり入れる、あんまり深場に行くと乗れなくなるし、今乗っても座礁する、なので、体重の少ないモッチと吉田クンは乗っちゃって、僕とジョーで、沖だしするから。」
そう言って、ボートを抑えて、乗りやすいようにしてくれた。
僕らが乗ったのを確認して逆サイドのにいるジョーに言った。
「ジョーはそっちから押して行って、その先の波を越したところで乗っちゃって舳先に側に座って、そうしたら、俺がのって真ん中で漕ぐから」
ジョーは、腰まで水に漬かりながら、頷いた。
一気に、押されたボートは、波を超えて、水深はさらに深くなる、言われたようにジョーは舳先に身体を添わせ乗り込んだ。そして、進路をに舳先を今一度向き直させて、大根も乗り込んだ、ボートが揺れる、乗り込むとオールをすぐにつかみ、操作する。
波に舳先を立てることで、ボートは安定して波をやり過ごし、波が崩れる場所の先に出た。振り向くと、岸に向けて波が白く砕けるのが見えた。
大根は、頻繁にオールを漕いだ。力一杯漕ぎ出すと言うのではなく、左右のオールで船の進路を整えると言う感じだったけれど、船は確実の岸から遠ざかっていった。
「今、僕らの船は払い出す流れに乗って沖へ進んでるんだ、この浜には、寄せる流れの間に沖に戻る流れがあっ、それに乗せれば漕がなくても沖へ向かう。場所が違うと、漕いでも漕いでも戻されるから。でもね、帰りは逆に戻されるところに来れば帰れるわけ。」
と、軽く蘊蓄を言っていた。
「大根 おまえ凄いな 」と皆が言うと
「ここ俺の釣り場だから」
と、本人にしか解らない個体を言って、ご満悦な大根だった。
あるところまで、沖に出ると、大根が
「ここからは、東に向かうか、西に向かうかだ、どうする??」
それに対して
「稲村を回ると、なんか戻るのは厄介そうだから、湾内に留まろうよ」
そう言ったのは、らしくないジョーだった。
「それはそう、海がまるで変わるからね、じゃ東だけ、誰か漕いで・・」
大根がいう
「じゃおれが」
ジョーがオールを変わり、大根が舳先移る。
ボートはジョーのパワーで、目に見える速力で東へ向かった。
僕らが船を出したのは、坂の下辺りだから、そこか逗子方面へと、丁度由比ガ浜の沖から材木座へ横断するルートだ。
既に岸からは100mほどの距離だった。
ここは、沖だし100mとそれ以上では景色が変わる、個人的はそんな気がする。動力船や帆があれば別としても、手漕ぎの限界は100mだと思う。この頃の僕らは、皮膚感覚でこれ以上は岸から離れたらアウトだと感じていた。稲村越えを怖がったジョーではないけれど、稲村が先を超えると言う事は、由比ガ浜湾奥からは、確実に数百メートル沖出しを意味するからかもしれなかった。
いずれにしても、僕らのボートは、由比ヶ浜沖100メートル坂の下側に位置して、逗子方面へと進路をとった。
ある程度の速力を維持して漕ぎ出しのはいいけれど、かなりうねりがあり、そのうねりをどうしても横から受けることになった。避けようとすると、どうしても沖合に進路を向けたくなるわけだ。
真横に進むのはうねりと風の影響をまともに受けた。
「どうする」 誰ともなく言い始める。
「変に動くと逆にまずいな・・それにこんなに水入ってるし」
見ると、ボートの床には水たまりがあった。
これは、海にエントリーした時に、入ったものであり、何らの影響はなく、現時点で浸水があるわけでも無かった。みんなそれを知ってはいるが、岸からかなり離れた現状態では気持ちの良いものでもなかった。ジョーが、載っているあかくみでそれを掻い出している。
大根が、ちょっとまって、と言うと、穂先から何かを海に入れた。それには長いロープが付いていて、ロープはどんどん海中に入ってく。
「ジョーオールで、頭沖へ向けて」
言われたジョーがあか汲みをとめて、オールでボートを沖へ向けた。すると、ボートはゆっくりと動きだして、沖に向かって斜めのなった状況で安定した。
「これ多分、風と潮の方向が違うから、この状態が安定しているはず。」
先ほど大根はアンカーを降ろしたわけだ。
僕らは比較的安定したボートの中で話し合う。
無理に逗子方面へ、湾を真横に突っ切るのは、易しくなさそうだし、勿論、稲村方面はもっと厳しい。あまり、東に行ってしまうと、今度は帰りが厳しくなり、岸に近いと波を食らうし、沖合はうねりと海流がある。それらの事から、今日は初めて海に出たのだから、無理をせず、このあたりで、しばらくいて、後は戻ることに決めた。
「ねえ、こうしてみてごらんよ」
いきなり、薬局の息子である吉田が声をあげた。
彼は、顔の両脇を手のひらで挟み、沖を眺めている。
「やってごらんよ」
「どうするの、そうやって見るのか」周りが怪訝そうにいう。
「沖の方をみるんだよ・・・」
言われるままに、みなんなが、吉田の真似をして沖をみた。
「あ~!!」
みんなが言った
そうすると、浜の湾奥に近いこの場所から、左の視界に入る、稲村ケ崎や、右の視界に入る、逗子の景色が手で見えなくなり、目の前には、大海と水平線と空だけが見えた。それも、ほぼ水面と同じ高さから。
何処か、地球の丸さを感じるそんな景色だった。
そして、次は空を見上げる、遮蔽物の無い空が広がった。

そう、岸からたった100mの冒険で、僕らは大事なものを見つけた。

ちなみに、帰路はそんなに容易いものではなかったけれど。
波のある中、海岸にボートを安全につけるには、最後は舳先を船が出る時と同じく、沖を向け、ゆっくりと波にのせて戻る。理屈では解っているのだけれど、これは船を出す時の10倍は難しい。タイミングを逃すと、船は追い波で水船になるかねない。逆のままでも、ある程度の速度が無いと、突き上げを食らう。僕らは、この洗礼を受けて、全身ずぶぬれで、船を飛び降り、4人で何とか、水船になりかけたボートを陸へと引っ張り上げた。
それでも、海と船は本当に大好きだと感じた。

やがて、大人になり、世界の海を、クルーズで巡る機会をいただいて、デッキから見渡した、360度の何もない海原と空は、あの日、吉田君が言った、あの言葉の延長だったし。
今、自分が免許を得て、ボートで渡る、東京湾港から観音崎、三浦半島の海景色は、あの日、自分達で海に出た時に気持ちそのままだ。

海 船(汽艇等という分類ですが)
ありがとう、素晴らしい 体験を

#小型船舶操縦免許 #ボート乗り

在りし日の築地にて


子供のころの夢へ
沖を目指す


【小型船舶の世界へ】

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