Rock Bottom

 類は友を呼ぶ。
 “友”でなければ“類”でもないかもしれないが、生まれつきのひねくれ者のアンテナがビビッと反応した。

 どうして彼にたどり着いたのか、はっきりとは覚えていないけど、Only Realを毎日のように聴いていたとき、こんなふうに渋い声で歌う人はほかにいないものかとYouTubeへ旅に出ていたとき、何気なく再生した曲に心をつかまれた。

 十代でこんな曲ができるなんて、彼の人生に何があったんだと思わずにはいられなかった。「Rock Bottom=どん底」ですよ。

 今でこそ、ちゃんと働いて、お給料ももらって、一応は最低限の文化的な生活は営めるようになったけど、一ヶ月後、もはや一週間後の自分さえどうなっているかどうかさえ分からない時期が私にもあった。「こんな娘で、両親はよく我慢していられるな」と兄が言うほどの頑固者の私は、「やりたいことをやるんだ」と言い張って、大学卒業後、就職しないで絵を描いていた。そうはいっても、生活は苦しかった。アルバイトで稼げる給料なんてたかがしれている。家賃と食費と光熱費もろもろを差し引けば、自由に使えるお金なんてないに等しかった。困っていると、しんどいんですよと、助けを求めればよかったのに、それもしなかった。自分で選んだ道なんだから、自分でどうにかしろと言い聞かせた。かといって、会社員として働くことも想像できなかった(今は立派な会社員だよ)。あの日々が、私にとってのどん底だったのかもしれない。

 そんなになってまで描く意味が何なのか、私にも分からないし、誰にも分からない。その分からなさを、彼は知っているように思えた。
 「内側から湧き上がる大志を/誰にも知られずに 一生孤独でいる/あいつらにとってはどうでもいい」(『HALF MAN HALF SHARK』)

 調べてみると、いろんな名義で音楽活動していて、DJ JD Sports、Edgar the Beatmaker、Edgar the Breathtaker、Lankslacks、The Return of Pimp Shrimpなどなど、いろんなテイストの曲が聴けて楽しい。
 そんな中でもお気に入りはEdgar The Beatmaker『Feotus』って曲。

 Money used to get me stressed, so depressed, but now i have it
 It couldn't mean anything less so
 Helpless
 Helpless

 インタビューの記事などを読んでいると、彼はチャールズ・ブコウスキーが好きらしい。なるほど。やはり類は友を呼ぶのね。


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