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言葉で誤魔化す

詰まって押し出されたメモだらけになってしまっているのだけども、先ずは”書く”と言った、こちらを片付けてしまいます。

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『なんか、飛んで き た の…?』
私は泣いて言葉が詰まってしまった。

義父のお墓参りに行ったその日、いつもの買い物もいつものスーパーへ。

まだお正月三が日。普段より人も結構いた。

私は「その瞬間」に出会う事が多い。わざわざ見ている訳じゃないけど気づいてしまう。


『さっきお義兄さんいたよ、多分。振り向きざまにいた人、多分あれ、そうだと思う』

たばこの匂い、目元しか見えないその暗い表情。とにかく醸し出す空気がそのものだった。

「へー、そうなんだ」

実家と密なやり取りをしなくなって、主人の兄弟たちとも会話する事もなく、たまに出先で会えば話して情報交換。そんな中でもその義兄は、特にコンタクトが一切ない、滅多に会わない人だった。


我が家のスーパーの順路はほぼ決まっている。メモしたものをカゴへ入れ終えた後のラーメンコーナー。主人は必ず寄って流し見る。その近辺を歩いている時、大きな通路からスッと入ってきたのがお義兄さんだった。

「おう、元気?」

主人の挨拶はいつも元気がよく、声がハッキリ通る人。私は会釈をして少し離れて見てた。

お義兄さんとほんの少しの会話をしている事は分かるのだけども、主人の声しかここに届かない。本当にその空気感は、ある意味でかなりの”主張”だった。


「ま~ほんとに。幸薄そうな感じだよね(^-^; 実家には顔出すけど、お父さんの墓には全然行ってないんだって…」

義兄のプライベートの事は、以前は義母から聞かされていたけども、今はどうなったとか分からないし、興味がない。現在も”維持”されている生活かどうかさえも不明だった。


買い物を終え、沢山のオモシロ話で楽しくて、会話も盛り上がって自宅へ到着。どういう流れだったのかもう憶えていないけど、主人が車庫入れしながら言った。

「もっとしっかりしてくれよ、ダイジョブかよ、ほんとに」

この言葉を私は聞きながら、言葉を聞いていなかった。頭の中は言葉を透かして丸見えの、「主人の気持ち」をそのまま捉え、それとそっくりの”私の情報”が、脳内を一瞬霞めたのに反応した。

『それはさぁ・・・』

主人の抱えた気持ちを言葉で現わそうとした途端、湧き上がる涙をこらえきれなくて、誤魔化し切れずに私は言葉で誤魔化した。

『なんか、飛んで き た の…?』

そういうのが精一杯で。主人の気持ちが声が詰まるほどに分かり過ぎて。暫く自分が落ち着くのを待った。


『お義兄さんに、期待してるんだよね。昔はあんなに頼れた”お兄ちゃん”だったのに、なんでこんなになっちゃったんだ、って悲しくてしょうがないんだよね…』

脳内を一瞬霞めたもの、そのままそっくりを、主人に置き換えたものだった。

「うん、それはある。悲しい。長男にも弟にもアイツにも…」

兄弟の多い主人、子供の頃に頼ってきた兄たち、仲良く遊んでた弟たち。みんなそれぞれ普通に生きているけども、主人の目からは昔の懐かしさと共に、「みんなもっとしっかりしてくれよ」という理想との乖離、悲しい期待があった。


『そうなんだよね。子供の頃は自分より”上”の存在だったし、可愛がった弟たちだったから。昔と違うのは、Yさんがそれだけ精神的に成長した、という事だよ』

家族の中で当然のようにあった序列。大人になるとそれは必ずしも同じままではなくて。それを目の当たりにした時、それは優越ではなく、悲しい気持ちになる、というものだった。

『私はね、そのままお姉ちゃんと重なったみたい。普段は全くそんな事考えてないんだけどね(*^^*)』

普通の会話に戻り、家の中へ荷物を片付けた。

・・・

私も昨年、父の事で何度かやり取りした姉に、”悲しい気持ちを持った事”を思い出す。普段出て来ない、何かのきっかけでヒョッコリした事を機に「結局…」と、夕方の緑タイムで思うものがあった。

『結局さ、子供の頃に”家庭(家族)”の事で、色々があった訳じゃない?、2人とも。だから家族に対して、”家族”をどこか求めているし、自分の理想との差に、自分が悲しんでる。

だからやっぱり、今この我が家の環境で最優先されるのは”家族”としての繋がりになっている。

普段、そんな事を考える事なんてないんだけど、在り方としてそれは絶対にしてる。だから、そうでない自分の家族を見ると”悲しい”気持ちになるんだろうね』


”そんな事を知るきっかけとして、お義兄さんが現れたんだね(*^^*)”。最後はそんな軽い話に変えた。

『楽しい一日だった!沢山の経験をさせてくれた、ありがとう』

何の事か分らない主人に対し、私の気持ちを伝えてその日が終わっていった。

「うみのみかをサポートしたい」と行動させてしまう様なクリエイターです(*^^*)。私も同じように読まれた方のサポートになる事を意識しています。 自覚を保ちしっかりと進んでいきます!