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検証 ナチスは『良いこと』もしたのか?

"近年インターネット上では、『ナチスは良いこともした』と声高に主張したがる人が増えている(中略)わが国でもナチズムへの社会的関心は高まっているが、一般に出回っている情報には著しく不正確なもの、とうに否定された俗説も少なくない"2023年発刊、本書は研究者たちが70年以上の研究の成果を踏まえてナチズムを検証している良書。

個人的には、タイトルにひかれて手にとりました。

さて、そんな本書は定期的に繰り返されている【ナチスは良いこともした】という『議論』には事実、解釈、意見(トンネル視線)という三層構造が、歴史的思考力の前提としてはバイアスになっているのではないか。と専門家の立場から、まず『ナチズムとは?』『ヒトラーはいかにして権力を握ったのか?』『ドイツ人は熱狂的にナチ体制を支持していたのか?』を準備として検証した後、しばしば【ナチスは良いこともした】という議論でしばしば取り上げられるテーマ『経済政策』『労働政策』『家族政策』『環境政策』『健康政策』を順番に詳細に検討。【ナチスは良いこともした】という主張がいかに不正確で一面的であるかを明らかにしているのですが。

ページにすれば僅か100ページなれど、日々刺激的にSNSで垂れ流されている情報が如何に『恣意的で表面的、偏った見方』である事が本書から気づかされ、もっている前提の危うさに気づかされます。

また、ブラックジョーク的ですが。そんな本書を何人かの友人にすすめると、タイトルから『ナチスは良いこともした』とナチズムに肯定的な内容の本だと(説明する前に)勝手に捉える方が多かったのにも驚きました。

歴史修正主義がまかり通る中、多角的な視点で歴史や物事を考察する。その大切さを理解したい全ての方にオススメ。

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