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百頭女

"あの猿に聞いてごらんー百頭女って誰?教父のように彼は答えるだろうー百頭女をじっと見つめるだけで、わしにはあれが誰なのかわかる。"1929年発表の本書はシュルレアリスムの代表的な画家による最初のコラージュ小説、20世紀芸術の生んだ奇書のひとつ。

個人的には西洋美術史を語る機会が定期的にあるので、本書についても手に取りました。

さて、そんな本書はダダイスムを経て超現実主義(シュルレアリスム)の代表的な画家の1人となった著者が朋友アンドレ・ブルトンの後押しを受けて、当初一千部限定で出版した"既存の書物の図版を随意に切り取って貼り合わせる作業から印刷可能な絵画作品をつくりだす"『剽窃』行為の体系化、コラージュによる"小説"となっていて、合計147葉のコラージュ、全9章立ての構成で、一応は主人である『百頭女』そして怪鳥『ロプロプ』による異常な騒動や災禍の果てに"物語"としては突き放されるように【冒頭へと永劫回帰させられてしまう】わけですが。

まず、ある程度の西洋美術史の文脈理解が前提にないと意味不明な奇書としてやはり捉えられてしまうかもしれませんが。逆に【ダダからシュルレアリスムへの過程を知っている】私としては、本書に込められた意図も理解でき、誌面作品集的に楽しめました。

また、解説でも指摘されているように明らかに日本の相撲取りに違いない、【ふんどし姿の東洋風の男】が数ページ登場しているのも何だか日本人読者向けに勝手にサービスしてくれている様で、ニヤリとしてしまった。

コラージュに興味ある、または美術好きな方にオススメ。

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