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言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか

"オトマトペについて徒然に考えていたら、さまざまな問いが生まれた。オトマトペはなぜ音から意味がわかるのか、オトマトペは世界をどのように写し取っているのか、子どもはどうしてオトマトペが好きなのか"2023年発刊の本書は研究者たちが記号設置問題をキーに言葉の本質に迫った良書。

個人的にはメタバース芸大RESTの授業用テキストを探す中で本書を手にとりました。

さて、そんな本書はそれぞれ認知、言語心理学を専門とする2人の研究者が言語学という学問の中ではどちらかというと周辺的なテーマと考えられていた、ギリシア語起源のフランス語『オトマトペ』について、認知科学、特に人工知能の分野では大きな問題として知られていた"ことばの意味を本当に理解するためにはまるごとの対象について身体的な経験を持たなければならない"『記号接地問題』をキーワードにして、言葉と身体の関わり、言語の起源と進化、子どもの言語習得について考察、さらには『言語の本質とは何か』という問題に迫っていくのですが。

読み進めながら、オトマトペを含めて日常生活の中の美的経験や遊びの諸形態を『限界芸術』と呼んだ鶴見俊輔の事や、最近読んだ『ことばの歴史』(スティーヴン・ロジャー・フィッシャー)だと、言語は『人間だけのものではない』と、本書のスタート地点とは違い所から始まっていたなとか思い出したりと楽しませていただきました。

また本書では言葉の本質へと迫っていくなかで、人間の子どもが持つ知覚経験から知識を創造し、作った知識を使ってさらに知識を急速に成長していく学習力を『ブーストラッピング・サイクル』と名づけて注目、その駆動力"たとえ間違いを含む可能性があってもそれなりにうまく働くルールを新たにつくること"『アブダクション推論』へと辿りつくのですが。この思考プロセスも興味深かった。

オトマトペについて考えている方や、ロボットやAIと人間の違いについて考えている方にオススメ。

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