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デカメロン上

"わたくしどもは幸い田舎に別荘を持っております(中略)そこでゆったりと休憩し、何事につけても理性の枠を越えず、楽しく朗らかに過ごそうではございませんか。"1348年から1353年にかけて製作された本書は、ペストから逃れてフィレンツェ郊外に引きこもった男女10人が語り合う10日間の100物語。

個人的にはダンテの『神曲』こそ読んでましたが、その影響を受けて書かれ『人曲』とも言われる本書は未読だったので手にとりました。

さて、そんな本書は『第一日まえがき』で詳しく描写される1348年に大流行していたペストから逃れるためフィレンツェ郊外の別荘に引きこもった【ステイホームなセレブ達】男3人、女7人の10人が、毎日、王様役や女王役を決めて、つまり【王様ゲームをして】退屈しのぎの話をそれぞれ1日1つずつ、延べ10日間していくのですが。

ルネサンスの発芽・先駆けというべきなのか、当時主流だった【キリスト教義を絶対の真理】とするスコア哲学の時代に【よく書いたな!大丈夫か?】とこっちが心配してしまう、奇跡や、お坊さんに尼さんを【おちょくった内容】にまず驚かされました。(あとがきによれば。田辺聖子はそれを『罪深い聖職者を指弾しているのではなく、人間の本能を謳歌しているような笑い』と評したらしいですが)

また、男女によって語られる様々な物語の中には、上品さこそ保たれていますが、割と直接的、肉体的な下ネタというか【エロティックな描写】や、現代感覚では【差別的な物語】も含まれているのですが。訳者の苦心や工夫を色濃く感じられる本書、牧歌的な印象こそ受けましたが、卑猥さや不快感は全く感じませんでした。

ペスト=コロナ禍の文学として、またイタリア散文芸術の始まり、シェイクスピアなど様々な後世に影響を与えた物語としてオススメ。

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