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推し、燃ゆ

"推しを取り込むことは自分を呼び覚ますことだ。諦めて手放した何か。普段は生活のためにやりすごしている何か、押しつぶした何かを、推しが引きずり出す。"2020年発刊の本書は芥川賞受賞作にして、巧みに依存することの危うさを描いた良作。

個人的に、著者の作品を読んだことがなかったので手にとりました。

さて、そんな本書は学校でも家族ともうまくいっていない女子高生、あかりが『唯一の生きがい』アイドルグループ『まざま座』の上野真幸の推し活に身を削って全てを注ぎ込むも、ある日、真幸自体は『推しが燃えた。ファンを殴ったらしい』つまり、ファンを殴った事件でSNS上で炎上騒ぎを引き起こしてしまうのですが。

まあ、アイドル。あるいは何かしらの推し活動。追っかけやどハマりといった経験がない私にとっては、主人公のあかりに【感情を寄せるのは難しかった】のですが。インフルエンサーや何かの他者や存在に依存しているように見える知人を思い浮かべながら『こんな感じなのかなあ』と読みました。

ただ、題材こそ感情移入できませんでしたが。あかりの目線で語られる【世界の描き方、テキスト】はとても巧みな印象で、著者はまだお若い方だと思うのですが『書き慣れてる』とびっくりさせられました。(今後の作品も楽しみ)

読みやすい芥川賞受賞作品として、また何かしら推し活をしている方にオススメ。

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