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劇画ヒットラー

"私の夢 それは古代ゲルマンいらいの失地回復であり ヨーロッパ全土から東はウラルにまでおよぶ大帝国 第三帝国(千年帝国)の建設である!"1990年発刊の本書は漫画サンデー『革命家シリーズ』第2弾、巨匠による人間臭いヒットラー56年の生涯を描いた傑作漫画。

個人的には何となく社会の全体主義化、独裁者が誕生しやすくなっているような時代の空気感を感じて、本書を手にとりました。

さて、そんな本書は『ゲゲゲの鬼太郎』他、妖怪漫画の第一人者として知られる著者が、"これほどドイツ人を熱狂させ史上まれな独裁者となったアドルフ・ヒットラーとはどんな人間だったのだろうか?"と、ウィーンで芸術家を目指し【自尊心は人一倍あれど困窮する生活を過ごす若きヒットラーの様子】から始まり、従軍活動を経て新しく小さな政治団体『ドイツ労働者党』に参加し、内部抗争を経てついに独裁者まで登りつめ。と、栄光と転落した人生をおくったナチス、ヒットラーの姿を著者らしい淡々としたトーンで描いているのですが。

まず最初に、この文字数も多く、重いテーマ、政治的な色の強い本書が1971年5月から8月の三ヶ月間【少年向けの『週刊漫画サンデー』に連載されていた】ことに驚かされる。(派手な展開が連続しないと飽きられがちな現在では連載自体、難しい気がします)

一方で本書はあくまで、ナチスや歴史全体の解説というより、ヒットラー自身の人生にスポットライトをあてて展開していくので(決して支持するわけではなくも)よく知られる独裁者、第二次大戦での暴虐と敗北する後半とは別に【1人の若者として立身出世していく前半】は人に歴史ありというか。新鮮かつ興味深いものがありました。

著者ファンはもちろん、ヒットラーの人生をダイジェスト的に知りたい方にもオススメ。

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