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落穂拾い 犬の生活

"彼女は自分のことを『わたしは本の番人だと思っているの。』と云ったことがある(中略)彼女の店の商品の値段は概して安い。『わたし、あまり儲けられないの。本屋って泥棒みたいですわ。』と云っている"2013年発刊の本書は著者の最も美しく充実していた時代の珠玉の作品集。

個人的には別著者、原田ひ香の『古本食堂』で表題作の一つ『落穂拾い』が紹介されていたことが縁で本書を手にとりました。

そんな本書は太宰治に師事、その死後に作家になるも生活は苦しく、失語症にもなって53歳でこの世を去った著者の充実期の作品が、表題作の小説家と古本屋で働く女性の交流を描く『落穂拾い』メスの野良犬を溺愛する『犬の生活』含む15作品が収録されているわけですが。

人気シリーズ『ビブリア古書堂の事件手帖』の著者が寄せているように『落穂拾い』が、のちに自殺することになる妻との新しい生活を準備している最中に書かれ【ラブレターのように(妻が)受け取った】のだとすると、何とも言えない気持ちになります。

また、師の太宰治の代わりに三鷹の家をお留守番していた時に書いた、著者が太宰治を自称する『メフィスト』も、微笑ましく、また太宰治と共に同じく弟子の『オリンポスの果実』田中秀光も出てきたりと楽しかった。

表題作から古本屋好きな方に。また心あたたまる作品にホッとしたい方にもオススメ。

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