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マノン・レスコー

"彼女のやさしい眼差しや、悲しげな風情の魅力ゆえに、あるいはむしろ、私を破滅へと引きずりこもうとしていた運命の力ゆえに、私は一瞬たりとも答えをためらうことができませんでした"1731年初版の本書はファム・ファタールを描く最初期作品、ロマン主義文学の始まりとされる恋愛悲劇。

個人的に主宰する読書会の課題図書として手にとりました。

さて、そんな本書はカトリック教会の聖職者にして小説家であった著者が、。イエズス会学校で学び、幾度か聖職を離れ軍に入隊したり、逃亡して外国へ行った経験を下敷きにして執筆した7巻からなる自伝的小説集『ある貴族の回想と冒険』の第7巻、正式な題名は『騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語』とされる作品で。将来を期待された良家の子弟、デ・グリューが、街で偶然に出会った美少女マノンに心を奪われ、駆け落ち。夫婦同然の生活を始めるも、放蕩癖のある彼女との日々はひたすらに破滅と、数々の罪を共に犯す道へと歩んでしまうことへとなってしまうのですが。。

まず、本書の前に牧歌的な古代ギリシャの古典恋愛小説『ダフニスとクロエ』を読んでいたことから、冒頭のデ・グリューがマロンと出会って、即駆け落ち、そして間男のBが現れるまでの展開の早さに驚き、呆気にとられてしまいました。

一方で、本書は18世紀の出版当時はそれほど有名ではなかったらしいのですが。19世紀のロマン主義の到来によって『情熱の礼賛、恋愛の希求、個人の自由』といった【ロマン主義の特徴を備えた傑作】として再評価され(デ・グリューはさておき)ヒロインのマノン崇拝が始まったことを知り、芸術の評価とは面白いものだなとしみじみ。

ファム・ファタール、ロマン主義作品好きな方、破滅へと続く作品好きな方にもオススメ。

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