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おーづせんせい

"小津にとってこの一年はなんだったのか。その生涯において、映画監督とは違う別の仕事に就いた唯一の一年間。"2023年発刊の本書は教え子たちが文集に残した思い出をもとに描く日本映画を代表する監督、小津安二郎の1年間の教師時代。ターニングポイント。

個人的に小津監督の『東京物語』『秋刀魚の味』といったロー・ポジション"小津調"作品が好きなことから本書についても手にしました。

さて、そんな本書は若き日の小津安二郎が松竹キネマに入社する1年前、三重県飯南郡宮前村(現在の松阪市飯高町)の小学校の担任として代用教員をしていた時間を教え子たちの文集をもとに、児童に当時では珍しいローマ字を教えたり、教室で活劇の話をして喜ばせたりしていた様子が、まるで夏目漱石『坊ちゃん』よろしく描かれているのですが。

わずか1年、そして田舎の小学校が舞台。と、特別に劇的なことは作中で起きませんが。しかし、その【牧歌的な穏やかな日々】が心地よく感じられます。

また、当時は映画(カツドー)を観るのすら【公共良俗に反する、教育上よくない】と学校では取り締まり対象だったのか。と、多くの世代が毎日スマホやPCでYouTubeや動画配信サービスを楽しめる現在が素晴らしいな。とあらためて。

小津監督好きはもちろん、大正時代を追体験したい方にもオススメ。

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