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変身/掟の前で 他2編

"掟の前に門番が立っていた。この門番のところに男がやってきて掟のなかに入れてくれと頼んだ。だが門番は言った。まだ入れてやるわけにはいかんな。"2007年発刊の本書はくり返しを意識的に残して翻訳したカフカ傑作4編。

個人にカフカ好き。と言うこともあって久しぶりに手にとりました。

さて、そんな本書はドイツ文学者が"少ないボキャブラリーで書き、散文を強く歌わせるために、くり返しを多用した"カフカを意識して翻訳したもので、あまりに有名なある日、突然虫になった男の視点から"家族"を描き『百年の孤独』のガルシア・マルケスにも影響を与えた『変身』カフカ作品としては最も言及、引用されるわずか1ページ半の短い作品『掟の前で』"ぼく"がサルだったときのことを報告する『アカデミーで報告する』そしてひと晩で書きあげられた息子と父親の対話『判決』の4編が収録されているわけですが。

いやあ。若い時に手にした時は不条理な展開に挫折したものですが。年を重ねてから読み直すと、ビジネスパーソンとして『終生サラリーマン作家』とだったカフカへの親近感も生じているからか、それぞれの作品を【どのような心境で書いたのか】思いを馳せつつ、流れるような新訳を楽しませていただきました。

また、4編の中では特に『掟の前で』を別の著者が引用しているのを見て久しぶりに読んだのですが。この短い作品。何度読み返しても【暗喩的なじわじわ感があって】やっぱり好きだな。とあらためて。

読みやすいカフカの入り口的一冊として全ての人にオススメ。

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