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新選組血風録

"沖田の突きは、三段といわれた。たとえ相手がその初動の衝きを払いのけても、沖田の突きは終了せず、そのまま、さらに突き、瞬息、引く。さらに突いた"1964年発刊の本書は、映画やドラマといった様々な創作物のイメージや原作として長く影響を与え続けている新選組題材の傑作連作短編集。

個人的には、学生時に剣道部だった事もあって熱心に著者の本は手にとってきたのですが。縁あって新選組屯所後近くに引っ越した事もあって久方ぶりに手にとりました。

さて、そんな本書は『小説中央公論』で連載されていた新選組題材の15編の短編がまとめられたもので【時系列や関係性はバラバラに】土方歳三や沖田総司といった史実にも有名な隊士達と、大島渚監督の『ご法度』の原作になっているが存在が疑われる加納惣三郎を含む架空の隊士達が【それぞれ話の主人公となる群像劇】となっているのですが。

率直に言って、著者の他の幕末を舞台にした小説(例えば"竜馬がゆく"とか)で描かれる人物像やエピソードを若い時は【全て史実通りに違いない】と長く思い込んでいたので。随分と後になってそうではなく【あくまで大衆小説として意図して脚色されている】事を知った時は勝手にショックを受けたわけですが(笑)本書も虚実が入り乱れているのを感じさせない流石の説得力がある描きっぷりで、懐かしく楽しませていただきました。

また、本書に収録された作品の中で土方歳三と沖田総司は主要登場人物といって良いほど頻繁に登場してくるのに対して、近藤勇は(カバーの表紙になってるのに)あまり存在感がないのですが。それでも"虎徹"という題で描かれた、偽物の虎徹を【信念の力で本物に変えてしまう】近藤勇の姿は、百姓あがりにも関わらず【本物の武士らしく振舞った】新選組の存在自体と重なる部分があって、印象に残りました。

新選組、幕末好きな誰かへ。気楽に楽しめる短編時代小説が好きな人にもオススメ。

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