見出し画像

小説の技法

"もし小説がなお、発見されていないものを発見しつづけたいのであれば、なお小説として『進歩』したいのであれば、世界の進歩に抗してしかそれをなしえないのだ"1986年発刊の本書は名高い小説家にして、名エッセイストである著者による『実作者の考察』カフカ他に言及した近代文学論。良著。

個人的にはメタバース芸大RESTで『文学の技法』をテーマに講義を行うことから、サブテキストとして手にとりました。

さて、そんな本書は世界的なベストセラー、『存在の耐えられない軽さ』でも知られるは、チェコスロバキア出身のフランス作家である著者が1979年と1985年の間に発表した講演原稿やインタビュー、論考といった七篇のテクストを一冊にまとめたもので。前半は著者独自にして真摯なヨーロッパ小説史観。後半は特に著者の文学に強い影響をあたえたヘルマン・ブロッホ、フランツ・カフカについて繰り返し言及しているのですが。

まず、紹介されている作家の作品たちの多くが既読だったので、著者の捉え方が興味深く。特に著者が14歳の時に手にとったカフカ作品にあてた愛情溢れる解説は、私自身がカフカ大好きなので特に楽しかった。

また冒頭に『私は理論の世界とは無縁の人間だから、以下は【ひとりの実作者の考察】である』とありますが、私自身も1人のアマチュア創作者として大いに刺激を受けましたし、また七部の『エルサレム講演』は村上春樹のスピーチと比較できるのも良かった。

著者ファンの方はもちろん、西洋視点の刺激的な近代文学論としてもオススメ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?