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"私にはどうして直すところがないんだろう。足も。手も。お腹も。頭も。全部ちゃんとしてる。じゃあ、この気持ちはなんだろう。私はこれを直してほしいのに、どこがこわれているのかちゃんと言えなかった"2021年発刊の本書は少女と母のズレを描いた一冊。芥川賞候補作。
個人的にバンド、「クリープハイプ」のヴォーカル・ギターでもある著者がどんな作品を書いているのか知りたかったので手にとりました。
さて、そんな本書は音楽活動をしていく中で『理想に身体が追いつかなくなった』ストレスを作品として表現したいと書かれた作品で、小学校でも友だちをつくれず、居場所のない少女が、母親の勤めるマッサージ店(性風俗店)の片隅で息を潜めながらカーテンの向こう側で「言っていい」 「あれ、ないの?」と"知らないおじさん"達の相手をしながら日に日に苦しそうになっていく母親の姿を眺めつつ、世界の理不尽に触れていくのですが。
言葉を『そのまま受け取る』少女と『全てをわかっている』読者との距離感はうまく描かれていて、おそらくは救いはないだろう母娘の未来も含めて、もどかしいような読後感でした。
一方で、バンドマンだから。という先入観はそれほどなかったつもりですが。著名人のよくある『自身に寄せた私小説』ではなく、純文学作品としてちゃんと別個に成立しているのに、著者の小説家としての才能を感じて、良い意味で驚きました。
著者ファンの方はもちろん、何とも言えない『ズレ』を日々感じている方にオススメ。
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