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宮本常一 歴史は庶民がつくる

"『大事なことは主流にならぬことだ。傍流でよく状況を見ていくことだ。舞台で主役をつとめていると、多くのものを見落としてしまう。その見落とされたものの中に大事なものがある"2023年発刊の本書は宮本常一の思想を解き明かしていくダイジェスト的一冊。

個人的には『フィールドワークから実践へ』宮本常一については『忘れられた日本人』しか読んでいなかったので、解説書的に手をとりました。

さて、そんな本書は同じく民俗学者である著者が、常に『主流に対する傍流を重視すること』つまりオルタナティブな側に立って、学問を推し進めていった宮本常一の思想について。『忘れられた日本人』に収録された『土佐源氏』エピソード、『海をひらいた人びと』に収められた『一本づり』の歴史叙述などを紹介したりしながら、【民俗技術・民間技術の重視】共同体の外側にある価値を持ち帰る【世間・世間師】といった特徴的な部分を紹介しているわけですが。

やはり、100ページ弱でコンパクトにまとめた『一気に読める教養新書』がシリーズのコンセプトなので、本書自体は内容的には【箇条書き、駆け足感は否めない】のですが。入り口として、また解説書としては確かに読みやすかったです。

また、宮本常一が父、善十郎から託された『旅の10ヶ条』【汽車に乗ったら窓から外をよく見よ(中略)】等は知らなかったので、要約でも興味深かったり、かっての家父長制、男性による女性支配的な在り方は【東日本の実態で、西日本は違う】といった考えも同じく新鮮でした。

宮本常一を知る入り口、気軽に読める解説書としてオススメ。

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