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"『あんたの二つの議論の例の一方、一文も支払わない方を教えてくれ。お礼はいかほどなりとも、神々に誓って、支払いますよ。』"紀元前423年初演の本書は同時代の実在の人物、ソクラテスに仮託する形で、当時流行のソフィストを攻撃した風刺喜劇。

個人的には哲学も齧っている1人として、本書の意外な印象を与える紹介が気になって手にとりました。

さて、そんな本書は古代アテナイの喜劇詩人、風刺詩人である著者の代表作。一方で紀元前423年の大ディオニューシア祭で初演されたが、最下位に終わった喜劇作品で。

借金苦の田舎紳士ストレプシアデースが苦境を切り抜けるために【目に見えない論理の力で無理やりに相手を打ち負かす詭弁の方法を教えている】悪評高いソフィスト、ソクラテスの道場に詭弁を習いに息子ともども入門するのですが、今度は詭弁を身につけた息子に散々悩まされる羽目に….といった内容なのですが。

弟子にあたるプラトンが描く『ソクラテスの弁明』や『国家』での釈迦、キリスト、孔子と並び四聖人としてのソクラテスのイメージがある私としては『同時代に生きた著者』が描く本書でのソクラテスはギャップがあって、そういった評判も実際にあったのかも。と、やはり新鮮に感じました。

また、ソクラテスの登場に話題を全部持っていかれそうな本書ですが。詭弁を学ぼう、そして学んだストレプシアデース、そして息子の姿はSNS時代に毎日の様に相手の言葉尻を捕らえようとスマホで指先運動している人も多い現代社会と重なる普遍さがあって面白かった。

著者の代表作、当時のソクラテスを考える補助線として。また普遍的な喜劇としてもオススメ。

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