見出し画像

方丈記

"ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとまりたるためしなし"1212年成立の本書は古典文学三大随筆の一つ、生の儚さを描いた普遍的名著。

個人的には京都郊外での隠遁生活に興味を感じて、久方ぶりに手にとりました。

さて、そんな本書は琵琶の名手、歌人として活躍したことで知られる著者が、現在の下鴨神社の神事を統率する禰宜の子として生まれるも後任者争いに敗れ、次第に出世の道も閉ざされて50才を過ぎて出家。晩年に京都郊外の日野につくった草庵で執筆したもので。

前半は著者自身の若い時に経験した災厄、安元の大火等について【仏教的無常観で描かれ】後半は自身の生まれ育った環境や来歴が簡潔に、そして人に縛られない【方丈の庵での生活、その充足が描かれている】のですが。

まあ、人生も午後世代。定年後は京都郊外で静かに隠居暮らしをしようと物件を探している身としては、著者の悟り切っているようで、しかし。どこか人間くさい姿に今の自分を重ねて共感しかなかった。

また、本書には現代訳、原典、エッセイがそれぞれ収録されているのですが。現代訳はとても読みやすく、原点は心地よく、エッセイは様々な視点を補記してくれていて。と、とても充実した構成になっているのも良かったです。

中世の京都人の暮らしに触れたい誰か。人生の午後世代の方にオススメ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?